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コーチライン  作者: 山井いろは
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フリーター、コーチになる。

私の母校、東京都立柳北高等学校。


地元に根付いた小さな学校で、校舎も体育館も比較的新しいが、そこそこの歴史がある高校である。


中学3年生の夏季大会の試合が終わった後、私は暇な時間を持て余したまま勉強も大してせずに進学した。

偏差値自体は別に大馬鹿ではないけれど、決して頭がいいわけではない。


私自身も目標もないままとりあえず入ったような感じ。他の同級生も皆そんなふわふわした動機の人しかいなくて、それがむしろ心地よかった。


ああ、ここでよく友達と話し込んだなあ。

この廊下で部活を辞めるって先生に伝えたんだっけ。


所々に残っている6年前の跡を一つ一つ見ながら、案内をしてくれている職員の後ろをついて歩いている。


「小説家志望ですか、そうですか。うちで取材なんて嬉しいですよ本当に。まあでも、卒業が6年も前となると、ご存じの先生方は皆退職なされたか異動して誰も残っていないと思うのですが…。」


「ええ、それは別に構いません。今回の取材は校舎の感覚とか、そういうのを知りたいだけなんで。」


愛想笑いをしながら答えると、職員は、ああ、と頷いた。


「そういえば、バスケットボールやられていたんですよね。今ちょうど部活やっているんで、見て行かれますか?」

「え?ああ、まあ、…じゃあ見ていきます。」


案内の途中話の流れでそんなことを伝えた気がするが、全く覚えてなかった。そんなことよく聞いてたな、なんて変に面食らっていると、あっという間に体育館へと案内された。


(ここも変わってないな。相変わらずハコは大きいけど一つしかないから部活がまともにできなかったんだっけ。)


ぼんやりとした記憶を辿りつつ、体育館に入った。

シューズのスキール音とボールの弾む音、部員の声、少しの制汗剤の匂い。


(うわ、全部懐かしい…)


「ここの子達はバスケ部とバレー部ですね。基本的にバスケ部ともう一つ何らかの室内スポーツの部活動が場所を使っています。練習は彼らで考えてやっているみたいですよ。」


青春が詰まったこの場所がとてもキラキラして見えて、もう戻れない美しさに感動する気持ちとここにいではいけないような気持ちで、早く立ち去りたい思いが込み上げた。


「…なんか、かっこいいですね。」


ぼそりとこぼすと職員は嬉しそうに、ええ、と答えた。




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