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コーチライン  作者: 山井いろは
1/6

フリーター、コーチになる。

中学最後の試合はあっけなく終わった。


漫画やドラマのような熱い展開も、美しいゲームメイクも何もできなくて、ただ4クォーターが過ぎ行くのを蒸し暑くなった体育館の選手用ベンチで見つめるだけだった。


第4クォーター残り1分、93対114。圧倒的ではないけれど覆すことも難しい、そんな微妙な点差だった。


(...多分負けるなこれ)


そんなことを考えていたら椅子2つ挟んで隣に座るこの鬼顧問は怒るだろうか。

むしろ、この出来の悪い私たちの代が身を引くことで、やっと思い通りのレベルの高い練習ができるな、なんて思うかな。


夏の大会、中学校最後、引退試合。


儚い響きのそれは、残酷な現実。もっと練習をやっていたら、何も貢献できないただただ祈るだけの引退をせずに済んだのだろうか。


(あー、もっと頑張ってれば…)


でも目の前で必死に勝とうと粘る後輩達を見て、何度も感じた無実感がまた私を襲った。



相手チームの応援が、試合終了のカウントダウンを始める。



10



9



8


7


6


5


4

3

2

1



ワアアアアアアア!!!!!


試合終了のブザーが、私の3年間の終わりを同時に報せた。


そのあと後輩達は、何故かわんわんと泣きながら、勝てなくてごめんなさいと私達に何度も訴えた。


ああ、この子達もこの子達で背負ってるものがあって、いくら気が強くても年上差し置いて試合に出て、1秒もコートに立たなかった先輩を引退させてしまった。そのことを悔やんでいるのか。


今はそんなふうに思うけど、当時はどあも捻くれてて、どうせそんなこと思いもしてなかったくせに、なんて思った。


部活動は青春だとよく言ったもので、そんな誰にも誇れないような記憶も、人生20年以上生きていればいつのまにか思い出になっている。


そんな、私の青春の、2回目が来た、そんな感じの話。






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