残り87日、ボランティア②
2話連続投稿です!
気が付いたら真っ白な空間にいた。
初めは狂いそうなくらい気持ち悪い場所だったけど、流石に慣れてしまった。どこまでも真っ白な場所。
ここに来たのは久々だ。そう丁度10日くらい。
クロからでた「50人に話を聞く」という指令がでてから、今日まで一回もここには来れなかった。
なんとなく懐かしくなりながら、真っ白な空間を見ていると正面に黒いもやが集まりだした。
どうやらクロが来たようだ。
「やぁ、クロ、久しぶり。50人に話を聞くことは出来なかったけど、凄くいい経験が出来た。ありがとう!」
「にしてもボランティアって良いよな!人から感謝されて、人の助けになってるっていう実感がある!最近はお陰様で晴れやかな気分だよ。」
「そうそう、面白い話だったよね!あるある!仲良くなったおっちゃんの話とか凄い面白いからさ!」
僕はクロに会えたことが嬉しかったのか口がペラペラと止まらない。
あーで、こーでと話していく内に気が付いた。
いつもだったらツッコミを入れたり茶化してくるようなクロが一言も喋らない。
ただ、そこで聞いているだけ。
「なぁ、クロ!どうしたんだよ!具合わるいの?」
「...だ...っても..える?」
「ん?なんだって?」
「だまって、もらえる?」
「どういうことなんだよ?」
「僕は君に黙れっていってんの」
僕は意味が分からなかった。クロが面白い話を持ってきてって言ったくせに、いざ話し始めたら黙れって。
僕はクロが何故怒っているのか分からなかった。
クロは僕をジット見ていたかと思うと何かをグッとこらえるように、大きなタメ息を吐いた。
「はぁー、ここまでイライラするのいつぶりだろう。地球を作ったおじさんと喧嘩した時以来かな。」
「ねぇ、本当に僕が怒っている理由が分からない?」
「僕さぁ、言ったよね。50人に話を聞いてねって。助言どころか指令まで出したよね。」
「この意味分かんない?」
「その顔を見る限り全く分かってないようだね。」
「君はさ、残り87日で死ぬんだよ。そんな残り少ない大切な時間を10日も使って、たった50人に話を聞けって言ったんだよ、僕。」
「まさか、話を聞くだけのちっぽけな指令だ、なんて思ってるんじゃない?」
「僕はね、神様なんだよ。全てに意味があるんだよ。目的があるんだよ。」
「君さ、何してたの?ここ10日、何してたの?」
「そうだね、ボランティアに参加して話を聞いた。うん、うん、そうだね。僕が言ったことをしたんだよね。」
「でもさ、それ、やっただけ、なんだよね。」
「あぁ、だめだイライラする。君さ、僕の人形なの?頭を使いなよ。」
「君、一度だっていいから僕が何故君の前に毎晩現れて話してるか、考えたことある?」
「100日後に死ぬ犬の話が好きだからって言ってたって?確かに僕はそう言ったよ。でも言っただけなんだよ。」
「僕の目的は何だと思う?本当に100日後に死ぬ犬の話の流れに乗ってみただけ、だと思うかい?」
「僕はね、神様なんだよ。」
「神様なんだよ。」
「たった1人の人間の為に、神が自ら動くと思うかい?」
「君があまりにも情けないから言うけど、僕は頼まれたの。君が後悔して死なないように助けて上げて下さいって。だからこんなことをしてるの。」
「その意味、分かる?」
「君はこのままだと、間違いなく後悔して死にます。どこかで変わらないと、後悔にまみれて死にます。」
「君は今のままで満足して死ねると思うかい?」
「無理だと思っているから、初めに困ります。なんて言ったんだろう?」
「本当に情けない。」
「現実、みてる?」
僕はクロの話を呆然と聞き続けた。一つ一つの言葉が抜き身の刃のように鋭く刺さってくる。
クロの話はどうしようもなく図星をついて、気が付きたくないことばっかり、気付かせてくる。
だけど、どうしようもないじゃないか。
変わりたいって何度も思った。
でも変われなかった。だからこんなことになってる。
変わりたいけど、変われないんだよ。
「本当に変わりたいって思ってる?」
思ってる
「嘘だね、君は変わりたくないんだ。」
ちがう
「君は怖いだけ、逃げてるだけだ。」
逃げてなんか...
「いいや、逃げてる。」
「君が選んだんだよ、君が変わらずに行くという道を選んだんだよ。この臆病者。」
うるさいッ!!
お前に何が分かる!
僕の命はあと100日だって?!
後悔して死ぬだって?!
余計なお世話だよ!!
変わりたくないだけだって!?
怖いから逃げてるだけだって!?
あー!そうだよ!その通りだよ!!
僕はこんなこと知りたくなかった!!
なんで僕なんだよ!?
なんで!なんで!
僕は僕の中で出来ることを精一杯やってきた!!
ボランティアだって、クロに言われて必死に参加した!指令を果たそうと無理をして話を聞きに行った!!
なのに、なんで、
こんなことを、言われなきゃいけないんだよ…。
「君に後悔して死んでほしくないから。」
もぅ、ぃいよ。
「ごめんね、そこまで追い詰めるつもりはなかった。」
いい、全部事実だ。
「分かった。僕が君をそこまで追い詰めてしまったかもしれないから、特別に見せてあげるよ。」
なにをいって
「君が死ななかった世界、俗にいうパラレルワールドを。」
「幸せであるといいね。」
その言葉を最後に、僕の視界は黒に塗りつぶされた。
残り86日
少しペース落とすかも