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夕焼二篇
一、秋分
秋分の日、鰯雲を眺めていた
蜻蛉が電線に降り立ち、羽を休めている
蝉時雨は遠くを駆ける列車の音に変わり
乾いた落葉がアスファルトを滑っていく
『夕焼け小焼け』のメロディが流れ出す
時計の針はまだ五時を指している
二、秋夕焼
燃えるような夕焼け
もっと近くで見たい
団地の公園を抜けて
川沿いの道に着いた
ふと空を見上げると
もう陽は沈んでいた
ほんの数分の出来事
こんな事ならいっそ
あの場所にとどまり
赤と青に割れた宙を
この目に焼き付けて
胸の中に蔵っておけばよかった