表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

1:目撃

 愛してくれていると思っていた。

 しっかりと手を取って、いつでも優しい言葉をささやいてくれるから。

 唯一の人なのだと感じていた。

 いつだって、私の味方をしてくれるものだと信じていたから。

 魔法学校を卒業したら、結婚してほしいとまで言ってくれていたのに。


「──……うそ」


 美しい花々が咲き誇る中庭。

 その中央にある東屋は、簡素な造りをしている。

 日よけのための屋根とそれを支える柱を中心にテーブルが広がり、それを囲むようにベンチがある。


 その東屋のベンチに腰掛けた二人の男女。

 まさしく美男美女の組み合わせに、通りすがった──サフランは息を飲んだ。

 だって、そんな。まさか。


 男性の方は、サフランと結婚を前提に交際をしているはずのアスター。

 対する女性の方は、学校内でトップを争うほど美しいフリージアだった。

 二人は手を取り合い、あろうことか口付けまで交わしていた。


「ああ、フリージア。君は本当に美しい」


 口付けを解いて間もなく、吐息交じりにアスターが告げた言葉に

 サフランは目の前が真っ暗になった。


 サフランは、決して美しい少女ではなかった。

 目は大きくなく、少し釣り目がちで鋭い印象がある。

 フリージアの見事な金髪に敵うはずもない栗色の髪。

 豊満さに欠ける胸元も、少し低い鼻筋も、決して美しくはない。



 気が付けば、サフランはその場から逃げるように駆け出していた。

 たえられない。たえられない。耐えられない!

 だから夢だと言って。あんなの悪い夢だって。





 やさしいお姫様は、素敵な王子様と出会って結ばれる。

 醜い娘は、魔法使いの力で美しい姿を手に入れられる。

 一度愛された者は、一途にずっと愛し愛されるもの。


 そんなの、──ただのおとぎ話。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ