「チュートリアル 海外編」を書きました
【第25話「海外遠征」~第33話「辞令」】
この9話で剣聖キョウコとウジイエが登場します。キョウコには伝説的武士の存在をほのめかす役を、末裔であるウジイエにはそのアシスト役を果たしてもらっています。
実はキョウコをキャラ設定するまで京の読みを「きょう」としていたのですが、音がかぶることに気づいて「けい」に変更しました。由来にしていたスパコン名から読みを変えていたのですが、元に戻りました。
第25話のウジイエは、模擬戦に繋がるよう荒ぶってもらいながらも憎めないキャラにしたく、結果、小物っぽくなりました。後にフチテー帝国武士団団長になる人物なのですがね。まあウジイエだから良いかと。
第27話「ミスル共和国」、第28話「源・嵐・京子」はサクッと書けました。テンプレ展開ですが書いていて楽しい。肩書き付きの強キャラは動かすのがとても楽で、書き手にとって麻薬のような存在だと思います。
なお書くまでも無いのかもしれませんが、キョウコの設定は「義経=ジンギスカン説」を元に発想しています。
第29話「最前線」と第30話「苦戦」は、海外の念食獣の手強さを示し、主人公3人が更に一段成長する過程を描いています。先の話とは反対にこの回は筆が鈍りました。いわゆる「苦戦」を描写するにはどうしても字数がかかります。そうした状況に陥るまでの経緯も、うっかり者でも居なければ単純なはずが無い。扱いに手間がかかるのです。
念食獣は「声」を出さないという設定にしたことも、書くことを難しくしました。「声」を出させると何らかの意思表明に繋がり――逃げたり、服従したりはするのですが――、生態不明の不気味さが薄まると判断したからです。しかしこの設定が戦闘シーンの表現の幅を狭めることにもなってしまいました。不気味さを表す別の描写を用意すべきだったのでしょう。
第31話「本性」では、菊が運転狂であることが明らかになります。本人は安全運転しているつもりで、実際に安全、念深の違いによりそう見えるのですが。この設定は使い勝手が良くて、何度も利用することになります。作者孝行な設定でした。
第32話「フチテー帝国歌劇団」はかなり早期に思いついて書き上げたエピソードです。書いた当初は想定していませんでしたが、公に公開されるフィルムに菊と京の姿が残ることで後のエピソードへと繋げることができ、第62話『海の宝石』の写真撮影エピソードの発想にも繋がりました。
第33話「辞令」で、秋に称号「万」が言い渡されます。ほかに「零」「無」「透」などを考え、どれにするか迷いました。ワイルドカードを表す記号「*」が漢字であれば、この文字にしていたでしょう。
最終的には昭和の匂いも感じさせる「万」を採用しました。
【第34話「青い空に似合う鳥」】
後に「最大念信」が編み出されるきっかけとなるエピソードです。このためにフチテー帝国には駆逐艦を手配してもらいました。武士の移動なので各国も寄港を許可しているのでしょう。3人に民間の航路を利用させると真面目に最短で任地に向かいそうなので、このような形にしました。
舞台となったカリステー島のモデルは、ギリシャ南東にあるサントリーニ島です。
【第35話「できない理由」】
菊はなぜ強いのか? その背景を示すエピソードです。
念体は異次元から動物に乗っ取りを仕掛け、その対象として人間も例外ではありません。しかし人間――猿人は天敵といえるほど意思の力が強く、成人には近づけもしません。幼児には勝ち目があるように見えてアプローチするのですが、良くて相打ち、負けると乗っ取り返されてしまいます。この乗っ取り返した幼児が、武士になれる素質を備えます。菊は幼少期にAクラス2体から同時に乗っ取りを仕掛けられ、1体に勝ち、もう1体を服従させています。
あと秋との関わりをつくるために、冬子にはいじめられっ子役になってもらいました。菊は秋よりほぼ1年早く生まれており、女の子なので成長も早く、当時は、いや当時から秋よりずっと強いです。
【第36話「ダンマルク国の3兄弟」、第37話「▃▅▇▇▇」】
この2つは「チュートリアル 海外編」の下準備のエピソードです。
▃▅▇▇▇は「イフタオワ」と命名してあったのですが、秋と京や菊との印象の落差を表すために、伏せ字の名前に変更しました。どの伏せ字の名前もそうなのですが、元の名のイントネーションに合わせて、四角文字の高さを変化させています。
また3兄弟達が謎の外国語を口にしていますが、メモを残しておらず、今では元の日本語が分からなくなっています。作中、他の場面でもいろいろな外国語が登場します。これらは一旦英語に機械翻訳してそれらしい英文に変換されることを確認してから、各言語に機械翻訳しています。
【第38話「南アルバ大陸」~第46話「運命の火」】
前半の山場ですが、一連の鳥蛇との戦いは「運命の火」の囮エピソードです。
ここまでの話で、秋が何度か「年配の人たちは、若者に負い目を感じている」と印象を語っています。これは「運命の火」で幹部武士6人が自分たちが犠牲になるのを厭わず、主人公達3人を救助することに説得力を持たせるためです。また幹部武士たちについて細かなワンポイントプロフィールが言及されていますが、これは秋が命の恩人だと思って記憶にしっかりと留めているからです。
第44話「風雨強き夜に」の夜については、元々は3人で川の字になって寝るだけにしていました。そこで秋が「生殺しだ」と嘆いて、ソロバンAIが「これ以上はDLC『ノクターン』が必要なのです」とメタな発言をする展開でした。
ですが後の話の執筆を進めるに連れ、10代半ばで肉体を失う展開が不憫に感じてきて、結ばせることにしました。3代目の菊が佐脇へのAレベル武具譲渡を成功させる話にも、説得力を持たせられると考えました。
【第47話「選択」~第50話「チュートリアル完」】
この4話の舞台は、大和国武士団の本拠地です。10万年前に地球にたどり着いて深海に停泊している、異星人文明の改造貨物船がその正体となります。本作の中核をなす話で、説明する事項も多く、筆はどんどん進みました。
そんな中で迷ったのが「素体」の設定です。超科学なのでいかようにも出来るのですが、1)どのように人工培養しているのか――特に筋肉をどう付けているのか、2)育った素体に意識は有るのか無いのか、を決めあぐねました。よく見かける設定は、液体に満たされた円筒の中で成長し、意識は持っていて身体はひょろひょろ、といったものでしょう。
ブラック側に寄せると、幼いときから素体達は身体強化に必要な知識だけ教育されて運動を続けており、ある日念転写により意識を上書きされて精神的な死を迎える、という設定も考えられます。2代目の京が本拠地に9日間宿泊できた、つまり無人のように見える本拠地に9日分の食料があった状況も説明が付きます。
……結局このあたりは未設定のままです。話の流れ上、主人公達が念転写される前の素体を目にする必要性は無く、設定しなくても支障ありませんでした。ただ少なくとも京は、素体の実情を把握しています。




