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□無限念製

□霊和20年(YE2820年)6月

□ヴェーダ連邦共和国


「さて、ここらにするか。従魔召喚!」

 (あれ)()さんがこの地で受け持っているのは、数百キロメートルに渡って木々に覆われた山や丘が延々と広がる、大高原地帯の一地域。こんな、どこから手を付けて良いのか分からない場所で、荒木さんが従魔を召喚する。

 俺は上空の鳩の視覚を通して見下ろしていたが、それは信じられない光景。

 数百、いや、数千の人の姿、右腕は剣、左腕は小盾と一体化した赤い従魔が、横並びに現れる。


「これ、1体、1体が、念士レベルの戦闘力を持つんですか?」

「そうだぜ。念士レベルだけどな!」

 なんなんだ、これ? こんなのを無限に念製できるのか。念幅X、(はん)()()いにもほどがあるだろ!


「おら、行けー!」

 従魔念士達が森に向かって進み出す。その速度は武士ほどでは無いが、一般人よりはずっと速い。こんなのが使()(えき)できたら、二千年前に大帝国を作り上げたのは当然、反則もいいところだ……


【次々と見つかっているのです】

【秋、行ってくるわね】

 鳩が旋回している場所に向かう京と菊。

 この地に来ても、俺は最大念信が使えないままだった。飛ばせる鳩も10羽がせいぜい。俺の能力の根幹は誰とでも念信を結べるところにあり、それは失ってはいなかったが、念幅はCレベル、上級武士(サムライ)程度にしか取り戻せていなかった。


【俺も行ってきます!】

【おう、気を付けてな!】

 口頭では無く念信で挨拶して、俺も森に入っていく。念深もD-とギリギリ武士レベルなので、無茶は禁物。荒木さんの従魔念士が進軍した後で無ければ、この地の狩りなど危険すぎて、とてもできない状態だ。


【あなたさま、ちょうど良さそうな念食獣が降伏したのです】

 京からこう呼ばれる日常も、本当に懐かしい。体感的には20年ぶり。ゲーム体験は除いてだが。俺は、京が確保してくれたEレベルの念食獣を、(ぼく)(さつ)する。


【俺のために手間をかけさせているな……】

 これくらいの念食獣なら、大和国でも充分いる。足を引っ張っているのが申し訳なくて、つい謝ってしまう。

【妻の当然の務めなのです。あなたさまの念能力もいつかきっと戻るのです。そして私も強い念食獣を狩っているので、気にする必要は無いのです】

 俺を(はげ)ましてくれる京。やっぱり京は、男より女の方が良い。


 それにしても不思議なのは、京も、先日相談してみた荒木さんも、俺の念能力が回復すると確信しているところ。これが口頭ならただの慰めではと疑う余地もあろうが、念信は本当にそう思っていると確認できる。どういう根拠に基づいているのかまでは分からないが、ここまで信じてもらえると心強いのも確か。素直にありがたい。


 こうして俺たち3人は――俺は不調なままだけど――、驚異的なペースで、(さい)(せい)()の念能力を取り戻していった。


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