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♠♠スタッフロール

♠♠平聖25年(YE2775年)7月

♠♠本拠地


「長い間、ご苦労さま。自覚していると思うけど、君たちの力もかなり衰えたね。僕としてはこれ以上、念食獣と戦ってもらう意向はない……」


 今度は堅い床の感触。五感を取り戻すと、大和国武士団本拠地に立っていた。

『武士物語』の世界。

 天野さんがいつものように長い話を続けている。


 第1次、第2次、第3次。念食獣の侵攻はまだまだ続いているが、俺たちの力もピークは過ぎ、第一線では戦えなくなっている。すでに俺たちの後に――その念は俺たちより大先輩なのだけど――伝説的武士レジェンダリィ・サムライ、4組12人が再誕して、世界各地で戦っている。


「だから今回が君たちの今誕の――2回目の人生だったよね――、最後の念転写になる。つまりここからの人生は、今後生まれ変わっても思い出すことはできない」

 本拠地への出入りは、多量のエネルギーを消費するのだそう。今誕の念転写は、これで3回目。以後は戦闘面での成長が望めないので、エネルギーを費やして上書き更新するのはもったいないからやらない、という、実に身も(ふた)もない話だ。

 なら普通に出入りすれば良いのにと思ったが、ここは大和海溝、深度1万メートルなのだそう。普通の民間貨物船が星間航行できて深海潜行できるテクノロジーを持っていた天野さんの出身文明でも、武士熱の死亡率が100パーセント――つまり武士になれない種族だったばかりに念食獣に対抗できず、惑星規模の星間通信設備が対念食獣結界の効果を発揮することを発見したのがせいぜい、活動星系を追われて離散したのだとか。いかにもゲームっぽい裏エピソードだ。


「天野団長。秋の再誕で、これを使ってほしいのです」

 天野さんの話が一段落すると。京が左手首にはめているリング状の特殊装備を操作しながら、妙な話を切り出す。

「何かな、これは?」

 姿の無い天野さんは、京が送った何物かを受け取ったらしい。

「プログラム、――ロールプレイングゲームのプログラムなのです」

 はあ?

 何を言い出してんの、京?


「ほー、最近アルバ合衆国でコンピューター化が盛んになり始めているゲームだね。さすがは『算』、いやー、君の能力を持ってすれば当然かあ」

 天野さんは普通に感心しているけど、平聖中期は、ようやく電卓が普及し出した頃だぞ。旅の途上、京が何かにつけてリングを操作している様子は見ていたけれど、そんなものを作っていたのか。

 念質『算』、万能が過ぎるだろ……


「このプログラムは念記録内の記憶データと、素体への念転写実行時の時代情報を元に、ゲーム形式で記憶を構築するのです」


 ふーん……

 面白そうだね。

 ()()()()()


「今誕、私は男にされて、(いや)(おう)なく、夫の秋を菊に奪われたのです。ただでさえ私は不利なのに、これでは幾度再誕を繰り返しても苦戦は(まぬが)れないのです」

 あのー。

「奪われた」とかのたまうけど、今誕は京が男なので気まずくて、菊とは何の関係も持っていないんですけどー。


「そうは言うけど、記憶は再誕上の重要な情報だ。人格を形成する、いや人格そのものだよ。それをゲーム形式で再構築するというのは、こんないい加減な僕では説得力に乏しいけど、それはどうかと思うよ」

 おおお。天野さんがまともな話をしゃべっている!


「それは分かっているのです。しかし伝説的武士レジェンダリィ・サムライは、対念食獣用の兵器なのです。戦闘能力を継承して、戦闘を円滑にする人間関係の記憶や、意欲を持って戦うことにつながる動機の記憶に手を付けなければ、問題は無いはずなのです」

 なんか凄い発言だな……

 あー、でも、能力向上という目的で男にされた京は、そう主張する権利はあるよな……


「そのプログラムは、既存の記憶は可能な限り維持して、人間関係のみ、親しくなる方向にだけ変更され得るよう、注意深くゲームデザインされているのです」

 ふむふむ。それならいつか、みんなが仲良しになれるね。

 いい話じゃないか。

 ――他人事なら、だがな。


「だ、そうだけど。どうするかな、滝沢くん?」

「却下!」


 即答。

 そんなの、ろくでもないゲームに決まっている。俺と菊の思い出を改変されては、かなわない。


()()いのです。この浮気者っ、なのです。そんなに側室が良いのです!?」

 その菊の呼び方も、随分と懐かしいな。

 京は両手をブンブンと振り回しているが、俺は頭を抑えて近づけさせない。30過ぎの男が取る行動じゃ無いぞ……


「ふっ、2人ともとても大切な女性だよ。もう俺と付き合ってくれる女性なんて、君たち2人しかいないのだから…… ふっ」

 と、菊を見つめながら言ってみる。つい「ふっ」を、2回繰り替えしてしまったが。


「……ねえ、京。そのゲームはなんていう名前なのかしら?」

 俺のキザ台詞(せりふ)をばっさりスルーして、京に話しかける菊。そんなこと、質問してどうするの?


「よくぞ、聞いたのです! 側室の気配り力は、認めてあげるのです」

 意外や、ふんぞり返る京。

 そこ、語りたいポイントなのね。創り手(クリエイター)の心理、俺には理解できん……


「ゲームの名前は、『()()()()()()()()』、なのです!!」


 !


 ああ……

 ああ、そういうことか……


「まあ。素敵な名前ね……」

 そうやって菊は京をあやしつけて、話をうやむやに。

 俺たち3人は、順に念転写装置に体を預ける。

 2回目の人生の記憶は、ここまで。



 VRRPG『Re-birth』のエンディングが流れ始める……



『企画 老良京』

『脚本 老良京 + 滝沢秋の記憶』

『プログラム 老良京』

『音楽 老良京』

『制作 「Re-birth」制作委員会』

『スペシャルサンクス (あめ)()()(なか)(大和国武士団団長)』

『ディレクター 老良京』

『プロデューサー 老良京』

 ……

 ……


 京よ、こんなスタッフロール、不要だろ……


『CopyRight YE2775-()()()() 老良京』



 ……ん?


「フリーシナリオ編」は、これにて完結です。

 次話より新たな編に入ります。

 引き続きお楽しみいただけると幸いです。

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