♠♠しようがない
【ランタンが残り1つになってしまったわ】
【灯りが無いと戦えないのです】
【追いかけてこないな。気性はおとなしいのか?】
【…………】
【…………】
縦穴を見下ろしながら、戻ってきた菊を交えて、5人で作戦会議。
ズオウンさんとバロウンさんは、なぜか無口、というか、無念信。
【フチテー帝国には、何か西洋竜にまつわる情報はありませんか?】
気になるので、どちらともなく2人に話題を振ってみる。
【帝国創始者チンクが、多数の武士とともに東洋龍を倒したという話が伝承されています】
【伝説では、蛇に近くて羽根は無かったようですが…… 700年も前の話なので当てにはできません】
700年前のキョウコさんの任務って、その東洋龍を狩ることだったんだろうな。鳥蛇や西洋竜と外見が異なるのは、食べられた人間たちがそれぞれ龍に持っているイメージが違っていたからだろうか。
【ありがとうございます。……まずは念深を測定したいな。ランタンをかみ砕くくらいは、Eレベルの念食獣でもできる】
【洞窟から追い出したいわね】
【縦穴や横穴に、爪の跡は無かったのです。ずっと洞窟にとどまっているのです】
アイツは何を食って生活しているんだろ? それとも満腹だから、じっと丸まっているのか?
【あの、小林将軍――】
【……あ、はい。何でしょう?】
改まった呼び方をされると、未だにピンとこない。俺の名前は、小林秋介だった。
【あの西洋竜と、このまま戦うおつもりなのですか?】
おかしなことを聞くバロウンさん。洞窟の中に引きこもっているとはいえ、あんな念食獣を放置しておけるわけがない。
【はい、もちろんです。……あっ、生き埋め作戦、とかですか?】
意図が見えないので、質問に質問で返してしまう。
バロウンさんはズオウンさんと目を見交わしている。なにか変な話をしてしまっただろうか……
【それも作戦の一つでしょうが、そのような話では無く…… 我々も本国に支援を要請します。ここは大規模な討伐隊を編成すべきでしょう】
……そういうことね。
俺たちは、勝てると見込んでいるけど、お膳立てに悩んでいる。バロウンさんたちは、そもそも勝ち目が無いと見ている。
あの西洋竜、俺たちも強くなっているし、多分、鳥蛇より楽に狩れそうなんだけどなあ……
【武士を増やしても、犠牲者が増えるだけなのです。条件を整えれば、私たち3人で充分なのです】
京が本音を言っちゃう。
俺も、明るい場所に引っ張り出して、菊の3刀を解禁しさえすれば、イケると思う。
【後藤軍師の見立てとはいえ、承服しかねます。あの西洋竜はエウローペー地域の防衛上、戦略的見地から対処すべき念食獣です。慎重に当たるべきです】
そう、そうなんだよな。
だから俺たちが休暇がてらに再誕されて、この地域に派遣された気もする。天野さんはどこまで情報を掴んでいて、俺たちの行動を読んで、差配したのか。あの人、熟考しているのか、何も考えていないのか、どうも分からないんだよね。
【バロウンさん、ズオウンさん、お2人のおっしゃることはもっともです。ただ1度だけで良いので、俺たち3人にやらせてもらえませんか?】
【ですから、軽々しく当たる問題ではありません。万一に備えて、周辺の防衛を厚くする必要があるのです】
気づけばフチテー帝国武士2人と、大和国武士3人が対峙して向き合っている。端から見ると、戦いが始まるように見えるかもしれない。
もっとも京と菊は、さっきから裏念信で西洋竜をいぶり出す方法しか考えていない。面倒なフチテー帝国2人の相手は、俺にお任せだ。――こういうとこ、ずるいんだよなあ。
【……周辺都市の避難計画と手配も、必要になるでしょう……】
火薬を使って、奥から順に洞窟を崩す? 乱暴だけど、それが手っ取り早いか。
【……お若いので、考えが多方面に及ばないでしょうが、私たちだけで……】
失敗したらバロウンさんたちが懸念される通り、周辺都市は大混乱だな。
【……あの、聞いておられますか?】
――おっと。
聞いてはいたけど、同意する気は無いです。すみません。
ここはもう、しようがないよね。
「えっと、この話は他言無用でお願いしますが……」
念信ではなく、口頭で。さらに一旦言葉を区切って、もったいをつける。
バロウンさんとズオウンさんは口を閉ざして、俺に傾聴。
「実は俺たち3人はもう1つ上のレベル、剣聖と大軍師と大将軍で、これまでずっと力を抑えていた、……としたらどうです?」




