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♠♠ツァガーンバートル

♠♠平聖8年(YE2758年)8月

♠♠甲斐県(にら)(さき)


「飛行機なのです。ジェットエンジン2つなのです」

「不思議よね。プロペラがないのに空を飛ぶなんて」

「20年経ったのです。科学は日進月歩なのです」


 そうか、2人はあの飛行体を見ていないのか。

 俺たちの救助に来た機体の先進性は、こんな飛行機とは比べものにならない。武士団も今後どうするのだろう。この時代でもレーダー技術は普及している。将来、世界の科学が進んだら、武士団の極秘機体を隠密に飛行させることなんて、できなくなるんじゃないだろうか?

 それ以前に本拠地も謎が多いよな。あそこに居残った京は「話すと次誕も男にされるのです」と、堅く口を閉ざしている。冗談だと思うが、天野さんもなかなかに()(れつ)だ。


 そうして、大和国武士団の専用機は、パイロットと俺たちだけを乗せて、西の空へと飛び立った。



♠♠フチテー帝国 首都ツァガーンバートル


「予定通りの到着なのです」

「お迎えが来てくれるという話だけど……」

 専用機は、20年前からずいぶんと性能は向上しているようだが、無給油で目的地の東エウローペー地域まで飛べるような航続距離は備えていなかった。こうして最初の中継地として、フチテー帝国の首都ツァガーンバートル近郊にあるチンク空港に立ち寄っている。

 宿泊先などの段取りを聞かされていない中、飛行機の扉を出ると、タラップの横には黒塗りの高級車が横付けされていた。


 車は特別ゲートだという扉を通り、空港の正面ロータリーへ。その中心には、馬にのって曲剣を振りかざす男の彫刻が飾られていた。大きい。高さ10メートルはあるんじゃないだろうか?

「あれはフチテー帝国創始者チンクの彫刻です。ご存知かと思いますが、剣聖でもあったお方です。首都の『ツァガーンバートル』という名も、フチテー語で『白い英雄』、つまり剣聖チンクにちなんだ名前なんですよ」

 と、流ちょうな大和語で誇らしげに説明する運転手さん。

 俺達3人は、()()の人となりを知っているし、チンクという名は「京子、キョウコ、強固、チンク(フチテー語)」とぞんざいに付けられたものだと天野さんから教えてもらっているので、ただ曖昧にうなずくことしかできない。


 そうして、見るからにゆとりある土地の使い方をした町並みを通って到着したのは、この首都でも最高級と思わしきホテル。高さは7階建てだけど、床面積がものすごくありそう。最上階に案内され、夜には食事会に招待される。それはいつぞか、経験したパターン。


 ――♠♠――♠♠――♠♠――


 少人数で食事するには広すぎる豪華な部屋。入り口横では、5人の楽団員が、ピアノや弦楽器を静かに演奏している。生演奏BGMとはこれまた贅沢。

 俺は3人の真ん中に(すわ)らされ、右に菊、左に京という並び。旨いものを食べられるのは良いが、この席順は替えて欲しいんだよなあ。と――


 俺たちより遅れること体感5分、見るからに偉そうな服に身を包んだ、30歳くらいの男と女が入室してくる。続く2人は護衛だろう、若手の、これまた男と女の武士が入ってくる。俺たち3人は立ち上がって、彼らを待ち受ける。


「フチテー帝国の皇帝と皇后にございます」

 俺たちをこの部屋に案内したちょびひげオヤジが、誇らしげに俺たちに告げる。

 はいはい、分かっていましたよ。

 もっとも、皇帝のご登場とは、予想を超えていたけどな……


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