「現実編」を書きました
【現実編】
編の命名には迷いました。下手に付けると目次でネタバレしてしまいます。どういう括りの編なのか分からないようにするために、「??編」と表記しようかとすら考えました。
ですが物語序盤で大外の世界も現実では無いとちらつかせているので、素直に「現実編」としました。
【第83話「理由」~第86話「無限念製」】
ラストバトルに向けて準備を進めるエピソードです。
第83話「理由」と第84話「不調」は、後半のシリアスな展開を引き立てるために、意識的にコメディに寄せています。滑っているかもしれませんが。
4代目3人の容姿がオリジナルと似ているのは、18年前から再誕が計画されており、かつ伝説的武士のオリジナル身体の遺伝子は保存されていてそれが掛け合わされているからです。
さてここで会話文について触れておきます。本作で会話シーンは多々あれど、会話文だけが延々と連続している場面はありません。この第83話などは典型的ですが、京の発言に1つ1つ秋がツッコミを入れています。
これは一読者として、会話文が連続すると、どれが誰の発言か分からなくなって読むのが辛くなりがちだからです。どこまで読んでいたのかも分からなくなり始め、いわゆる目が滑る状態になります。どうも私は連続会話文への耐性が、人様よりも低いようです。
主義主張では無くそうした事情もあって、書き手としても会話文の連続を避けるというか、書こうとしても簡単には書けないです。
第85話「無愛想な男」で佐脇が傷だらけなのは、作品内であまり活用できませんでしたが、エロいことを考えているのが顔に出やすい秋の特徴とのギャップを付けるためです。設定上は、菊と京を失った不甲斐ない自分を許せなくて残した傷です。
第86話「無限念製」は、投稿直前まで「荒木・群・三太夫」というタイトルにしていました。しかしこれも編の命名と同様、目次を眺める未読の読者に対して現実世界にも伝説的武士が存在することをほのめかしてしまうと思い、変更しました。
【第87話「洞窟」~第91話「安らかなれ」】
ラストバトルです。
戦いが進むにつれ、格好いい決め台詞が連発するようにしました。何回推敲したか分かりません。
小説の書き方の類いを読んでいると「ストーリー作りのほうに力を入れろ。文章の上手さは書き続けていれば向上する」としているものが多いです。ですがこういうくだりを書いていると、詩的な文体を書ける文章力が切実に欲しくなります。
【第92話「VRRPG『Re-birth 2』」】
結末は作品の印象を大きく左右します。一読者としては夢落ちであっても未完であっても楽しんだ過程に影響しない性格なのですが、そうでは無い読者が大勢いることも分かっています。本作は「マイナス状態をゼロに近づける」物語なのでどうやっても爽快な終わり方にはならないのですが、主に3つのパターンを考えました。
1)ゲーム『Re-birth 2』の展望を示して終わる
これが選択したパターンですが、後述の通り、最後まで試行錯誤が続きました。
2)天野の回想で終わる
天野が、自文明が滅亡し地球にたどり着いて作品時点に至るまでの状況を振り返るパターンです。これは設定を披露しているだけで、読者もいくつかの謎が解消されてスッキリはするだろうけれど、本編の物語が矮小化してしまうと判断し採用しませんでした。ただ天野の回想のいくつかは形を変えて、最終話に詰め込まれることになります。
3)佐脇の回想で終わる
本当の3代目滝沢秋が、菊や京と死別し、30年という時を雌伏して4代目に会うまでを語るパターンです。最後の一文は「佐脇だ。俺がお前たちをアイツに案内する」になるでしょう。なんだか名作っぽい終わり方になりそうです。しかしこのような話は結末というより外伝向きでしょう。書く予定はありませんが。
結果1)にしたのですが投稿直前までは、「京が『2』の話をして、秋がヤレヤレとぼやきながらも、2人と供に念食獣と戦い続けるぞと気合いを入れる」という内容でした。天野も菊もゲームに参加しようとしません。執筆当初の5月からこういう結末にしていて、何か別のアイデアが浮かんだら書き直そうと放置し、投稿前日を迎えました。仕事帰りの電車の中で、焦ることになります。
焦ったのはこの結末が引っかかっていたからで、物足りないというのもあるのですが、京がゲームに執着する理由を整理できなかったのが大きな要因です。菊に勝ちたいという理由はあるにしても、私は自分で書いておきながら、京がゲームに執着することが自然に思える理由が分からないでいました。
考えに考えてようやく。「京は若くして死んだ哀しみから、まだ立ち直れていない」ことに気づきました。元々こうだったのですが、菊に勝ちたいという理由を表向きの動機に見せてゲームを作るようにさせたのをすっかり忘れていました。
こうして自分で納得のいく整理は出来たのですが、かと言って秋に「ゲームには付き合うけど、いつか立ち直らなきゃダメだぞ」などと独白させるのも違うでしょう。ここからまた、結末に悩むことになります。
そうして今度は、京と同じ境遇の人物がいることに思い至ります。菊もそうなのですが、それは天野です。
天野たち鳥人は、地球にたどり着いたものの、鳥類は知的進化が望めず、猿人が幅を利かせていることに絶望します。ある者は念記録の消去を望み、ある者は別星系に逃れた仲間からの吉報を待って念結晶に閉じこもりました。天野はそんな中、肉体を操れなくなる犠牲を払ってまで、人類を将来の滅亡から救うために奮闘しているのです。天野の話が長いのは、私的な話し相手がいないから。彼をこのままにして完結はできません。
ここでワープロに向かい、結末を天野と菊を巻き込む展開へと一気に書き直しました。約2000文字だった第92話は4000文字になります。
秋や菊や京や天野の哀しみはこれからゆっくりと癒やされ、やがてVRRPG『Re-birth』は実行されなくなるのでしょう。
……以上で各回の話はおしまいです。このような振り返りを通して、遅まきながらも私も、次のことに気づけました。
1回目の人生は夭逝し、2回目の人生は自刃することになった3人。
第1話の残念なゲーム演出は京の哀しみの裏返し。京はAIの姿を借りて、秋に甘えているのですね。
次話で最終話になります。
ですが次話は一旦「連載中」として投稿し、時間をおいて「完結済」に変更します。そうしないと本作は一度「完結済」にしているので、「更新された連載小説」リストに掲載されないかもしれないので。
小手先を使いますが、ご了承ください。