異世界における他殺死ガイド86
プレアム ―空中庭園跡―
「ガオ!」
バシュシュシュシュ!
鉄巨人の背中のポッドから無数の光弾が発射され、敵ゴーレムへと向かう。
ドドドドオオン!
相手の強さに合わせた爆発を見舞う、デグリー・ミサイルである。
爆発をくらったゴーレム達が倒れていく。
「ゴレ」「ゴレ」「ゴレ」「ゴレ」
だが次々と襲い来る金属製ゴーレム達。
「ガオ!」
鉄巨人の胸が開き、大きな魔砲がいくつも伸びる。 誘導砲弾を射出する、グエス・カノンである。
グエス・カノンが一斉に火を噴く。
ドパッ! チュドドドドン!
砲弾をくらったゴーレム達が倒れていく。
それでもゴーレム達の勢いは止まらない。
「ゴレエエ!」
ドドド
「ガオ!」
近接型ゴーレムの攻撃や、魔砲から打ち出される火炎弾をマグニフィセント・アーマーで防ぎ、ザンシアとモチャムを守る鉄巨人。
多勢に無勢。
圧倒的質量の前に、マグニフィセント・アーマーが破られるのは時間の問題と思えた。
「オーダー、RS」
ザンシアが呟くと、どこからともなく何かが二つ飛んでくる。
シュルルル パシパシ!
ザンシアが受け取ったそれは銀色に光り輝く砲身を持つ小型の二丁魔砲。ラディアンシルヴァーであった。
シュバッ! ドウドウドウ!
鉄巨人の手から飛び出し、ラディアンシルヴァーをゴーレム達に向けて放つザンシア。
その魔砲の威力は中々にありそうであったが、金属製ゴーレム達は衝撃吸収機構を備えている。小さな魔砲から放たれた弾丸の衝撃など簡単に吸収してしまうはずである。
「ゴレエエエ……」「ゴレエ……」
だがゴーレム達が次々と倒れていく。見ればゴーレム達の体には大きな風穴が空いていた。
ラディアンシルヴァーから放たれる魔弾には、ゴーレム達の衝撃吸収機構を軽々と貫く威力があった。
それ最初から使えよ。モチャムはそう思ったが、言わないでおいた。
「……」
ゴーレム達を次々と倒していくザンシアの姿を観察するのは、ニクスの秘密の部屋の跡、地面から伸びる管の束の先、金属製の女性像である。
女性像の正体は古代人が作り出した兵器管理用人工知能である。
それはディー・エクス・マキナと名付けられていた。
遥か昔に古代人が滅び、プレアムの地下深くにて眠りについていたディー・エクス・マキナであったが、何者かの手によってその眠りから覚まされた。
地上に出た彼女は自らの主となるべきものを探し始めた。やがてニクスへとたどり着いた彼女はニクスを主とし、プレアムを外敵から守ることを約束した。
彼女からもたらされたゴーレム製造技術により、プレアムは栄えた。
だが彼女は壊れていた。
これに気づいたニクスは彼女を空中庭園の奥へと閉じ込めた。すると彼女は地面へと根を張り、空中庭園を内部から改造しだした。
すぐそこで育ち続ける脅威に対抗するための手段をニクスは探した。
対抗手段として勇者召喚をそそのかしてきた妖術師がいたが、ニクスはそれを蹴り、軍備の増強を始めた。
だがいくら軍備の増強をしたところで、彼女の力にはかなわないことを古文書から知ったニクスは、単身空中庭園へと出向き、彼女を説得したうえ、一緒に眠ることで彼女を封じたのだった。
ニクスの死後、残された軍部はバギョー家にのっとられた。バギョー家はニクスの死を隠し、権力だけ利用した。これによりプレアムは荒れた。
そしてニクスの自己犠牲によるディー・エクス・マキナの封印も、バクシンスキーによって解かれてしまったのである。
キィィィィィン
ディー・エクス・マキナが吠えた。
ギュギュギュ
ディー・エクス・マキナの周りに管が集まっていく。やがて管の束は人型を形作る。
ギュギュウウウウ
何本もの管が集まり、筋繊維のように見える。
グバアアアァッ!
立ち上がる巨大な人型。
それは今、モチャムを手に乗せて守っている鉄巨人よりも大きいどころではない。
天を衝くかのような大きさの超大型巨人である。
超大型巨人の体は管の色のまま黒く、シルエットは間違いなく女性である。
モチャムがそれを見上げて言う。
「冗談きついぜ……」
ゴオオオオッ!!
ドゴオオオオオン!!!
大きな衝撃音。超大型巨人がザンシアを狙って踏みつけを行った音である。巻き込まれたゴーレム達が砕け散る。
ドドウ!
飛びのいてそれを避け、ラディアンシルヴァーから魔弾を放つザンシア。
魔弾は超大型巨人の足に命中し、穴をあけた。だが超大型巨人はそれを気にも留めず、今度は手でザンシアを掴もうとする。
超巨大にもかかわらず、その手の動きは早い。ザンシアは避けるのが精いっぱいである。
ゴオウッ!
ザンシアのすぐそばを大質量がかすめていく。
もし捕まれば、ザンシアの体など一瞬のうちにバラバラにされてしまうであろう。
避け続けるザンシア。
だがその終わりはすぐに来た。やや小さめのゴーレムが魔砲から放った火炎弾が、ザンシアのスカートを貫いた。幸い体には当たらなかったが、それに反応して一瞬避けるのが遅れたザンシアは超大型巨人が横に振った手にかすってしまった。
バシィ!
「あっ!」
ドカ!
金属の床に倒れこむザンシア。
キュイ キュイイ
ザンシアのダメージは大きく、すぐ立ち上がることができない。
超大型巨人の手が握りしめられ、拳となる。
その拳がザンシアに向けて振り下ろされる、その時である。
バヒュウウウウウ!!
飛行物体を察知した超大型巨人の動きが止まった。
ヒュバッ! バサア!
超大型巨人の目の前で停止した飛行物体はマントを翻した。
その姿を見てザンシアが叫ぶ。
「お父様!」
体の輪郭に沿い、紫と赤と黒が混じった色の禍々しいオーラが炎のように揺れている。
短髪に耳長、浅黒い肌に線が太目の美丈夫。
「待たせたな」
飛行物体の正体は魔王ジャブアであった。
キィィィィィ
ジャブアを見上げ、超大型巨人が吠えた。
ディー・エクス・マキナ VS ジャブア
封じられるべき災厄同士の戦いの火蓋が今、切られようとしていた。




