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異世界における他殺死ガイド48

 

「なんだって、橋が…?」


「はい、ゲッコーさんも戻る途中、魔物に襲われて…。」


 犯人は屋敷の人間を皆殺しにするつもりだとでもいうのか。


 最初は十人もいたのに、あっという間に減って今や五人。全員で一部屋に集まって、犯人を迎え撃つのが、今取れる最善の策だろうか?


「ところでゴーは今どこに?」


「ゴーさんとは玄関で別れて…、ああ!彼は今一人です!大変!」


 ポンコツか。



 ■■■



 ゴーの部屋。


 ガチャガチャ


「ハア、ハア…、あいつ、気づいてたんだ、俺達の狙いに…。」


 ガチャリ


 ゴーは部屋に鍵をかけた。


「いつ気づかれた?食堂で計画について話した時か?」


 ゴーはベッドの上に置いてあるリュックに飛びついた。


「盗聴か…?遠くに音を送る装置はまだ研究段階だったはずだ…。」


 ゴーはリュックを開け、正方形の箱を取り出した。


「只で殺されはしないぞ。」


 ゴーが正方形の箱の上下を持ち、引っ張る。


 シュカ!


 箱が中央から開く。箱の中にはオレンジ色をした菱形の物体が固定されていた。箱を開けるのがトリガーだったのか、菱形の物体が光りだす。


 ヴィィィィ…


「ああ、チャージが遅い。早く早く。」


 焦るゴーはその場で足踏みした。


「……。」


 足踏みするゴーを後ろ上方から見つめる視線。


 ヌルリ


 天井から透明な何かが降りてくる。



 ■■■



 ピン!


 まずい、誰かが死亡フラグを立てた。恐らくゴーだ。 ※犯人当て前に犯人がわかってしまった人は死ぬのです。


「ザンシア、ゴーを守れ。」


「わかりました。」


 ヒュウ


 ザンシアは部屋をそよ風のように出て行った。


 守護者を使わず、ザンシア本人が行くのか。やはりゴーに危機が迫った状態だったのか。というか実はそれを認識していたのかザンシア。


「シィナさん、ザンシアを追うよ。ウーラを起こしてくれ。」


「あ、は、はい!」



 ■■■



 ヌト


 透明な何かは床に降り立った。ゴーは気づいていない。


 シュワアァ…


 透明な何かに色がついていく。黒く光沢のある金属のような質感。全身に色がつくと、それが人型をしていることがわかる。その顔は仮面のようで、鼻も口もない。ただ目の位置には細い切れ込みがある。


 ヌト…ヌト…


 仮面がゴーに近づいていく。


 スラァ


 仮面の右手が人の手の形から、鋭利な刃へと姿を変える。


 ヌト


 仮面はもうゴーの真後ろだ。ゴーの背中に刃が迫る。


 バアン!


 扉が蹴破られた。


「ぎゃあ!」


 ゴーが驚いて飛び上がる。


 ギィン


 既にザンシアはゴーの後ろにおり、手に持ったナイフで仮面の刺突を防いでいた。


 キリキリキリ ギギギ…


「ザザザンシア!?な、なんだそいつは!?」


 仮面はザンシアを押しのけ、ゴーを襲おうとする。


 だがザンシアがゴーの前に立ち、守る。


 チチチチ…


 仮面の目が発光する。


 シュ!


 仮面がザンシアへと攻撃を開始した。


 キィン!


 ザンシアのナイフが仮面の刃を防ぐのを見て、ゴーは叫んだ。


「うわああああ!死にたくない!」


 ゴーは部屋から飛び出した。よろつきながらも壁に手をつき、階段へと急いだ。


 ズルッ


 ゴーは階段の一歩目を踏み外した。


「あっ!うわあああ!」


 ゴロゴロゴロ ドゴ!


「ぐえぇ…」


「ゴー!大丈夫か!?」


 一階の床に後頭部を打ち付けたゴーだが、何とか立ち上がったところで、一人で車椅子を動かしてやってきたドクに鉢合わせた。


「う、うわあ!来るなぁ!」


「ゴー!?」


 ゴーは玄関に走り、扉を開けて外に出た。いつの間にか嵐が弱まっていた。だがまだ朝は遠く、外は暗い。


「うああああ!」


 それに構わずゴーは明かりを持たずに外へと飛び出していった。



 ガタッ ドガッ ゴロゴロゴロ ドゴッ!



 仮面とザンシアが絡み合いながら階段を転り落ちて来る。


「ザンシア!」


 ドカ!


 ザンシアは上になっていた仮面の体を蹴り飛ばした。


 ヒュル ヌト


 空中で一回転し、床へと降り立つ仮面。


 キュィ


 ザンシアが手に持つナイフに目をやると、刃こぼれしていた。


 立ち上がり、仮面と向き合うザンシア。


 ザンシアは仮面から目を離さずに、ドクへと語りかけた。


「お父様、申し訳ありません。ゴーさんから離れすぎてしまいました。」


「ザンシア、ゴーはもう良い。そいつを捕まえてくれ。」


「わかりました。」


 ダッ!


 仮面がザンシアへと襲い掛かる。


「オーダー。TFⅤ。」


 ザンシアは何かをつぶやいた。


 バアン!


 一階にあるザンシアの部屋の扉が勝手に開き、中から何かが飛び出てくる。


 ドカァ!


 ザンシアへと襲い掛かろうとしていた仮面は飛び出て来た何かに殴り飛ばされた。


 ザンシアは両手を見るように、目の前に出す。


 バシュウウウウ!


「”GAUNTLETガントレット”」


 ガキィン!


 ザンシアの両手に、飛んできた手甲が装着される。


 手甲の装着された手をニギニギするザンシア。


 バシュウウウウ!


「”VAMBRACEヴァンブレイス”」


 ガキィン!


 ザンシアの両腕に、飛んできた腕甲が装着される。


 そして、ザンシアは両手を広げた。


「”BRIGANDINEブリガンダイン”」


 バショアアアア!


 次に飛んできた何かは鎧だった。前後に分かれた鎧はザンシアの胸部を覆う。



 ガギィイイン!



 鎧の一部が飛んでくるのが収まった。


 キュイ キリリリ


 そこには上半身に白い鎧をまとったザンシアが居た。


「か、恰好良い…。」


 ゴス眼鏡鎧介護用自動人形となったザンシアに、ドクが見惚れている。


「行きます。」


 フィィィィ


 鎧の力か、ザンシアの体が空中へと浮き上がる。


 ゴファ!


 ザンシアは仮面へと突っ込んだ。










「ハアッ!ハアッ!」


 ゴーが走っている。


「ハアッ、ここまで、ハア、来れば…。」


 ゴーは木にもたれ、汗を手で拭った。


「ハア、ハア…。」



 ガサリ



「誰だ!?」


 物音に反応し、ゴーは叫んだ。


 誰かが傍に立っている。ゴーは顔を上げ、その人物の顔を見た。


「あんた、生きてたの…」


 ドス


 ゴーの腹に剣が刺さった。


「ぐぶっ。」


 口から血を吐き出し、ゴーはその場に倒れた。



 ■■■



 ボッゴアア!


 ドシャア!


 謎の仮面はザンシアさんにオラオラされて吹っ飛んだ。


 グ…ググ… ガクッ


 仮面は起き上がろうと体を起こしたが、やがて体を横たえ、動かなくなった。


 ザンシアさんの猛攻は凄かった。鎧の謎の力で浮き上がって突っ込み、手甲で仮面を殴りつけた。殴りつける時、手甲からは何かが噴射されており、破壊力を増しているようだった。仮面も体の一部を鋭利な刃へと変えてザンシアさんへと攻撃したが、ザンシアさんの腕甲から衝撃波の様なものが出て、全て防がれた。衝撃波の度、仮面の体は止まってしまうので、そこを手甲で殴られていた。仮面がたまらず距離をとったところ、ザンシアさんは手甲をそちらに向けた。すると手甲が飛んでいき、仮面の腹に突き刺さった。ロケット・手刀である。同時に突っ込んできていたザンシアさんの手に手甲がはまり、マウントを取ったザンシアさんはオラオラを始めた。凄まじいオラオラにより、やがて仮面にヒビが入る。そして、ザンシアは仮面の首元を掴んで持ちあげる。大きく振りかぶった殴りつけが最後の一撃となった…。


 バシュシュシュ!


 ザンシアさんの体から鎧が外れ、飛んでいく。ザンシアさんの部屋に戻るようだ。あの部屋の中は一体どうなっているのだろうか。気になるが、レディの部屋だ。覗きはしない。ああ、俺は紳士では無かった。後で覗こう。


 ザンシアさんは元のゴス眼鏡介護用自動人形に戻った。


 しかし、これほどの戦闘力、俺は間違っていた。ザンシアさんが介護用であるわけがない。ザンシアさんは戦闘用、もしくは護衛用自動人形だったのだ。


 カラカラカラ


 俺は動かなくなった仮面に近づいた。


 全身が黒く光沢のある金属のような質感。ヒビ割れた顔の仮面だけがマットな質感である。


 こいつは一体何なんだ?キエルか?キエルにしては体が小さいし、細い。


「拘束します。」


「あ、ああ、お願いするよ。」


 ザンシアさんはまず、仮面の腕と膝を曲げ、体を小さく丸めさせた。力が中心に集中し、持ち上げしやすくなるからだ。そして、持ち上げる時、ザンシアさんは仮面の体と自分の体をできる限り近づけた。こうして双方の重心を近づけることで、移動時にヨタついたりしない。さらに、足を前後・左右に開き、重心を低くすることで、安定性を高める。ザンシアさんは持ち上げ中、決して身体をねじらない。身体をねじると重心がぐらついて、不安定になるからだ。


 この丁寧かつ、自分にも負担がかからないようにした持ち上げ方。まるで要介護人を持ち上げているかのようだ。



 …やっぱり介護用じゃないか!



 パキン カラン



 ヒビが入っていた仮面が割れ、床に落ちた。仮面の素顔が露になる。


「これは…」


 仮面の下には、機械の部品のようなものが詰まっていた。


 ウォーズマンか。


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