異世界における他殺死ガイド36
ゴオオオオオッ!!!
凄まじい力に体が引っ張られる。水を掻いて踏ん張っても引き戻される。
周りを見れば内部に引き込まれた魔物達が抵抗できずにグルグルと回っている。
ゾバア!
「シャアアアク!」「シャアアア!」
周りから魔物が飛び出す。鮫の魔物だ。鮫達はこの状況にあてられたか、興奮し、凶暴になっている。
「シャアアアアク!」「ギョオオオ!」
鮫達は同じようにグルグル流されている生物に攻撃を始めた。
「ゴアアッ!?」
シャ、鮫竜巻だと!?
俺は現実に見るとは思わなかった光景に狼狽した。
俺は今、竜巻の作り出した渦の中に居る。おそらく海上では竜巻によって空へと舞い上げられた鮫達が飛び回っていることだろう。
一体何故こんな状況に陥ることになったのか、順を追って思い出してみる。
俺はザラメから逃げた先で水棲亜人達の町を発見。そこでキューと再開した。町は魔物に囲まれていて、なんだかまずそうな雰囲気だったので、キューに味方して魔物達を攻撃した。ほんの少しキューから目を離したら、キューが蛸女に絡まれていた。そして突然の腔虐。そういうのもあるのか。と、近づいて黙って見てたらキューに怒られた。しかし、眼福であった。※クズ
蛸女から解放されたキューはキュウキュウ言いながら俺の鼻を叩いてきた。これもまた良かった。※クズ
そしてキューのノリに付き合って魔物たちを一掃し、キュー達と勝利の喜びを分かち合った。
その後、キューが俺を水棲亜人達の町に入れようとしたが、他の水棲亜人達がそれを止めた。キューは回りの水棲亜人達の態度から察するに、結構位の高い存在のようだった。
俺の巨体が町に入ったりしたら、球体状の建物が壊れてしまうだろう。俺はその場から去ろうとしたが、キューが鳴いて止めるので、町から離れた場所にある洞窟に一時的に住むことにした。
キューは度々俺の居る洞窟に仲間を連れて来た。食料も持ってきてくれるのでありがたかった。お礼に町の周りの危なそうな魔物を追い払ったりした。
俺はこのままここで生活することを、悪く無いと考え始めていた(ザラメのことは思い出さないようにした)。
●●●
洞窟前に水棲亜人達が集まっている。
「キュキューン!」(武零怒!アレをやるぞ!) ※()内は翻訳です。
「ゴアアッ!」
「「キュッキュッ」」(アウロラ様ー!)
キューのしぐさを真似る遊びは大受けだ。そしてたまにキューを口に咥え、ハムハムしたりするとさらに受けた。下心は無かった。嘘だ。俺は既に紳士では無い。
「キュウキュウ」(アウロラ様、本当に兇亀を手懐けておられる。)
「キュウキュウ」(でもあれ、食べられてない?)
「キュウーキュウー」(食べられてるよね?あの兇亀、お嬢食べる気満々だよね?)
「キュウウウ」(目がね、食べようとしてるよね?)
「キュルルル!」(コラッ、武零怒、皆が見てるだろ!)
キュー達がキュウキュウ言ってうるさかった。何を言っているのかまったく分からない。同じものを指差して話す時も「キュウ」だったり、「キュル」だったり、何が違うのか分からず、取っ掛かりすらない。俺がキュー達と意思疎通できるようになる日は遠そうだった。
それから数日して、キューが連れてこなくても人が来るようになった。水棲亜人の子供が来た時には洞窟から出て遊んでやった。言葉は通じないが、まあ何とかなるものだ。
子供達はその内、洞窟の近くにあった沈没船の近くで遊び始めた。俺が来る前は魔物が巣食っていたようなので、新鮮な遊び場が増えたのだろう。楽しそうだった。
そんなある日、キューが一人で洞窟に来た。
「ゴウ?」
俺がキューの方へ向くと、キューは俺の鼻に体をくっつけてきた。
そして、俺の口をこじあけ、口の中に入って来た。
俺の舌に包まれたまま、キューが鳴いた。
「キュルルル…。」(武零怒、熱いよ…。) ※シン・ガメラ
キューはどうやら興奮している。舌でキューを押して見るが、また入ってくる。これはいかん、良くない遊びを覚えさせてしまったようだ。
水棲亜人の美女が自分の舌の上で息を荒くする。なんだこれは。倒錯の極みか。
…ゴ…ゴゴゴ…ゴゴゴゴ
何の音だ?俺の舌にしがみつくキューをそのままに、俺は洞窟の外に出て周りの様子を探った。そして俺は見た。大きな渦がこちらへ近づいてくるのを。
海上で竜巻が発生したのだろう。海上で発生した竜巻は海水を巻き上げながら移動する。
自然現象。命の危険がある場合、それは俺の能力の天敵である。
そして、あの方向には沈没船がある。
「ゴウアッ!」
「キュッ?…キュウッ!?」(武零怒?…あれは!?)
俺はキューを舌で押し出し、沈没船へと向かった。
「キュウーキュウー」
水棲亜人の子供達が数人、沈没船の方から泳いできた。俺に気づくと近づいてきて、沈没船を指差して鳴く。
渦を指して鳴いているのではない、沈没船にまだ子供がいるのだ。俺は子供達を非難するように顎で誘導すると、沈没船へと急いだ。
「ゴウッ!ゴアアっ!」
真っ二つに割れた船が沈んでいる。中を覗き込む。
「キュウウ…」
船の中に、水棲亜人の子供が二人、抱き合って縮こまっているのが見えた。
ゴゴゴゴゴ
渦の音が近づいてくる。子供達は恐怖で動けないのだろう。
口に含んで連れて行くにしても、船の奥に入ってしまっていて難しい。船ごと運ぶのは今の俺でも流石に無理だ。
このままでは子供達が渦に巻き込まれてしまう。ならばどうする。
巨大な自然現象である竜巻に対して俺に何ができるだろうか。幸い今の俺の体はでかい。俺が渦へと突っ込めば、何かしらの影響を与えることができるかもしれない。海上の竜巻を消さねば意味は無い気がするが、何もしないではいられない。
「ゴウアッ!」
俺は沈没船から離れ、渦に向かっていった。
●●●
そうして俺は渦に突っ込んだが、渦が治まる気配は無かった。
「シャアアアク!」
鮫が渦の中を暴れ周り、他の生物を襲っている。ここは鮫竜巻の内部である、どこから鮫に襲われるか分からない。
「シャアアッ!」
ガシュッ!
しまった。突然下から俺の首に鮫の魔物が噛み付いた。
ギリ!ブシャ!
鮫が俺の首から肉を齧り取る。血が噴き出す。
「ゴアアッ!」「シャアアア!」
ゴガ!
鮫を叩き落とし、俺はそれ以上攻撃されないように首を甲羅に引っ込めた。
どうする。突っ込んでも止められなかった。だがここで俺が諦めたら、子供達が渦に巻き込まれてしまう。
「ゴアアアアッ!」
ガガガガガシュン!
俺の甲羅から刃が飛び出す。
ギギ…ギギ…
外側の刃の角度を変え、回転すればスクリューのように水の流れを作り出せるようにした。
俺の体で大きな水の流れを作ってぶつけることで、この渦の進行をずらすのだ。
※アサイラム時空が発生しました。こまけぇこたぁいいんです。




