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異世界における他殺死ガイド32

 

 - ヌベトシュ城 兵士達の訓練場 -


 逃げ出したジュレスを部下が連れ戻してきた。


「ジュレス様、別に体型を知られて恥ずかしいことなどないでしょう。」「むしろこれからはそういうの外に出していきましょう。」


 ジュレスがスンスンと鼻をすする。


「ううっ、私はこれまで一人前の騎士となることを一番の目標にして生きてきた。だから趣味が剣の手入れだって、別にいいじゃないか。別にいいじゃないかあ。」


「「そっちですか。」」


 ジュレスの部下たちが目を見合わせる。


「全然悪いことではありませんよ。」「むしろそういう人だからこそ、我々はあなたを敬うのです。」


「…そうか?」


「「そうです。」」


「そうか。」


 ジュレスはちょっと元気になった。そしてジークを指差す。


「あと、別に私はお前に好意など抱いていない!」


「あんたにはもっと嫌われているかと思っただけだ。丁度半分なら、好いても嫌ってもいないのだろう。」


「そう、その通りだ。」


「ジュレス様、古文書の続きをお願いします。」


「ああ。」


 ジュレスは気を取り直した。そして再び古文書を手に取り、内容を説明しだした。




 ・能力向上




「被召喚者は徐々に強くする必要があると言ったが、強くなるまでに何年も鍛える必要があるというわけでは無い。被召喚者はある程度鍛えると突然全能力が飛躍的に向上する。これは一度ではなく、鍛えれば何度でも起こすことが出来、通常の人間と比較すると非常に短時間で強力な魔物をも倒せる存在となる。」


「レベルアップというやつか。」


「それは何度でも起こせると言ったが、起こす度に次に必要な鍛える時間が増えていくので、物理的に限界はある。」


「うん。」


「そして、この能力は被召喚者の仲間になった者にも効果が及ぶ。ただし、仲間を増やせば増やすほど、能力向上を起こすのに鍛えなければならない時間が増える。」


「分配式なんだな。」


「この能力の確認は時間が掛かるので今は割愛するぞ。」


「了解。」




 ・地図




「被召喚者は自動で作成された地図を見ることができる。」


「ええと?あ、これか。」


 ジークは目を何もない右下に向けている。


「地図には人間や魔物の位置が表示され、敵味方中立の区別が可能となっている。」


「ほうほう、今周りにいる人間は青色で表示されてるな。」


「また、地図上の建物等を目標にして、移動を省略できる…。移動を省略?」


「ファストトラベルか。」


「良くわからん。ではそのファストトラベルとやらで武器庫に移動してみろ。」


「了解。武器庫は…ここか。移動、と。」


 スン


 突然、ジークがどこを見ているのか分からない無表情となった。


「…おい、大丈夫か?」


 ジュレスがジークの顔を覗き込む。


 スタスタスタ


 ジークが歩き出す。


「うわっ!?いきなり歩き出すな、危ないだろ。」


 ジュレスの抗議を無視してジークは歩いていく。


「ジーク殿、ジュレス様を無視するのはいけません。」


 ジュレスの部下がジークの肩を掴もうとした。しかし、部下はジークの肩を掴めなかった。ジークの方に伸ばした手は空中で止まっている。


「…これは?」


「なにをして…うう?」


 もう一人の部下もジークを止められない。そこにはジークを止めようとする者を寄せ付けない力が働いている。


「おい。」


 ジュレスが走ってジークに追いつき、目の前に手を振ってみるが、ジークは気にも留めない。


 スタスタスタ


 そのままジークはジュレス達を伴い、武器庫まで歩いた。武器庫に着くとジークの目に光が戻る。


「…ん?おお、瞬間移動だ。」


「いやいや、お前は普通に歩いて武器庫まで来ただけだぞ?覚えていないのか?」


「あ、そうなんだ。うん?ジュレスは今俺の仲間なのに、俺と同じ状態にならなかったんだな。まあ、仲間全員が無意識移動始めたら困る場合もあるだろうし、細かい設定があるのかな?」


 ジークは何もない空中をキョロキョロ見ている。


「…まあいい、次だ。」




 ・収納




 ヌベトシュ城の武器庫には木製の剣立てがいくつもあり、剣の他に槍や盾、斧に鎌、様々な武器が所狭しと並んでいる。武器の他に、胸当てや全身鎧などの防具も置かれていた。


「被召喚者は持ち物を異空間へ自在に出し入れできる。入れることができるのは被召喚者が持ち上げられる程度の重さのもの。無限に入れられるわけではなく、有限。」


「うん。」


「武器庫に来たのはこの能力の確認のためだ。ここにある武器をいくつか収納してみてくれ。」


「了解。」


 ジークは目の前に立てかけてある盾を手に取る。


 シュウン


 ジークの持っていた盾が消えた。


「ほうほう。」


 シュウンシュウンシュウン


 ジークは次々武器を収納していく。


「その辺で良いだろう。次は収納した武器を出してみてくれ。」


「了解。」


 シュウン


 ジークの右腕がブレたかと思うと、そこには鉄の剣が握られていた。


「出すと同時に装備もできる。これは便利だ。」


 シュウウウウン


 ジークの全身がブレたかと思うと、そこには左手に盾、胸当てに脛当てなどを装備し、軽装備となったジークが居た。


「ふん、中々様になっているではないか。」


 ジュレスが顎に手をやり、ジークを見た。


「そういえば、仲間の装備もいじれるのかな?」


 スッ


 ジュレスがビクッとする。


「あ。」


 スッ


「…今、何をした?」


「いや、何も。何も変わってないだろ?」


「いいや、今、私の装備を勝手に収納したな?」


「バレたか、靴下を収納した。だがすぐに戻した。」


「んなっ!?靴下だと!ま、まさか…、鎧だけでなく、その下に着ているものまで収納対象となるのか!?」


「大丈夫だ。下着は収納不可能に設定されている。これは収納できませんだってさ。」


「貴様!実行したな!?実行したんだな!?」


 ジュレスがジークに掴み掛かる。


「ああ、でも出来なかった。残念だ。」


「何が残念なものか!ええい!今すぐに私を仲間から外せ!」


「それが、ジュレスを仲間から外す方法がわからない。」


「なん…だと…?」


「多分、この世界に仲間を外してくれる存在が居るはずだけど、探してみないと本当にいるかわからないな。」


「ふぐうぅっ、どうしてこんなことに…。」


 ジュレスは涙目になり、がっくりと項垂れた。




 ・鑑定




 ジーク達は訓練場へと戻った。ジュレスは疲れた様子で古文書の説明を続ける。


「…被召喚者は、所持したものの鑑定が行なえる…。何でもいいから手に取って鑑定と言ってみろ…。」


 ジークが足元の石を拾い、目の前に持ってくる。


「鑑定。」


「…なんと出た?」


「ヌベトシュ城兵士訓練場の石。うーん、まあまあ凄いけど、石に含まれる成分とか、細かい情報はわからないな。」


「何も情報が無いよりは何倍もマシだろう。毒キノコの鑑定や飲料水の確保に使えるらしいぞ。」


「まあ、そうだな。サバイバルすることもあるかもだしな。」




「…ん?」


 モジ…


 突然ジュレスがもじもじと所在無さげに動きだし、ジークがいつの間にか深緑色の布を手に持っている。


「鑑定。」


「…。」


「これはジュレスの靴下だな。」


「お前の私の靴下に対する執着はなんだ!」


「どうぞ。」


 ジークはジュレスの靴下をジュレスの部下に差し出した。


「これはどうも。」


「部下に渡そうとするんじゃない!お前も受け取るな!返せ!まったく!」


 ジュレスは靴下をひったくった。そしてその辺にあった椅子に座り、プンスカしながら脛当てを脱ぎ始める。それを見てジークがジュレスの部下とひそひそ話を始めた。


「なあ、あれ、見てていいのかな?」


 ジュレスは鉄の靴を脱ぐ。すると白く綺麗な形の良い脚が露わとなった。


「ジュレス様はそういうお方だ。」「素晴らしいお方だろう?」


 シュル シュ


 ジュレスは靴下を履いていく。白く眩かった脚が、深緑色に輪郭をハッキリとし、形の良さを再認識させる。


「うん。」


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