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異世界における他殺死ガイド29

 

 鬼哭鮫の群れを見て、コロニーの住人が逃げ惑う。


「きゃあああ!」「な、なんだこの数は……」


「大丈夫だ、我らには守備隊が、エルネスト様がおられる」


「いくらエルネスト様でも、この数を相手には……」





 イゴルを背に乗せた鬼背負いが大きな鋏を振りかぶり、地面を叩く。


 ドゴァッ!


「ぐあああ!」


 衝撃で地面が割れ、発生した水流にエルネストが巻き込まれた。


 ロドルフが叫ぶ。


「エルネスト! く、引け! 一旦コロニーで態勢を立て直す!」


「ヴハハハ、逃がさねえぞ」


 イゴルが槍を掲げると鬼哭鮫が一斉にコロニーの方向を向く。


「さあ、虐殺の時間だぜ?」


 イゴルが槍をコロニーに向けようとしたその時、鬼哭鮫達の群れに巨大な影が落ちた。


「あん?」



「あ、あれは……」「なんてことだ、兇亀だ」「あんな魔物まで……これは、勝てない……」


 守備隊が次々絶望を口にした。


 鬼哭鮫の群れの上を見れば、巨大な亀の姿があった。四本の大きな牙が突き出た口の凶悪な顔。甲羅は大きな尖った鱗を何枚も重ねたように見える。その巨体は見る者を圧倒し、畏敬の念すら抱かせる。この魔物が暴れ出せば水棲亜人達のコロニーなど一溜りもないであろう。


 圧倒的戦力差に、ロドルフがつぶやく。


「一体、奴らは何者なのだ……」


武零怒ブレイド!」


 守備隊全員の顔に絶望が浮かぶ中で一人、アウロラが目をキラキラさせながら叫んだ。


「皆大丈夫だ! あれは俺様の愛玩動物の武零怒だ!」


「……?」「お嬢、何を?」「愛玩動物?」


「だから、あいつは味方なんだって!」


 アウロラが武零怒に向けて泳ぎ出す。そこへ遠くへと流されていたエルネストが戻り、アウロラを追った。


「アウロラ様! 危険です! お戻りを!」


「シャアア!」


 数匹の鬼哭鮫がアウロラへと迫る。



「ゴウアアアアアア!!」



 兇亀の威嚇である。強者の威嚇は弱者の動きを縛る。アウロラを除き、その場にいた全員が恐怖により硬直した。


「ゴウ」


 ササササッ


 兇亀がアウロラに向かって泳ぎ出すと、鬼哭鮫達は道を開けた。


「武零怒ー!」


 ガシッ


 アウロラが兇亀の鼻に抱き着く。


「会いたかったぞ」


 アウロラは目を瞑り、兇亀の鼻に頬を着けた。


「だ、大丈夫なのか?」


「お嬢に抱き着かれて喜んでるように見えるけど、本当に、お嬢の愛玩動物?」


「まさか。あの魔物は地形すら変える化け物だぞ?」


 守備隊が疑問を口にする。それに気づいたか、アウロラが守備隊の方を向き、大声で話し出した。


「フハハ、俺様があまりに可愛いものだから、武零怒は自ら愛玩動物となったのだ!」


「そ、そんな馬鹿な」「お嬢が可愛いのは認めるけど」「俺もなりたい……」




「おいお前等! 俺を無視するんじゃねえ!」


 自分が恐怖により硬直してしまったことが悔しいのか、イゴルがイラついた調子で叫んだ。


「鬼哭鮫ども! 食い散らかせ!」


 イゴルが槍をアウロラへと向けると、鬼哭鮫達が襲い掛かる。


「シャアアアク!」


「武零怒! アレをやるぞ!」


 アウロラが右のつま先と踵を合わせてまっすぐに立ち、三戦立ちの構えをとった。


「ゴウ」


 兇亀がアウロラと同じく三戦立ちの構えをとった。


「セイ!」


 アウロラの背筋の通った正拳突きだ。同じく兇亀も正拳突きを繰り出す。


 ドボァ! 「シャアアアア!」


 正拳突きで鬼哭鮫が吹き飛んだ。


「セイヤ!」


 後ろ回し蹴りだ。


 ゴボボ! 「シャアア!」「シャアアアア!」


 鬼哭鮫たちが蹴り飛ばされていく。イゴルが驚愕して叫ぶ。


「なんだ!? なんなんだこいつはあ!?」


「武零怒ォ!!」


 アウロラが手を上げる。


 ガシュン!


 兇亀の甲羅から左右に一枚ずつ、二枚の刃が突き出た。


「薙ぎ払え!」


「ゴオオオ!」


 アウロラが手を大きく振ると、兇亀が鬼哭鮫の群れに突っ込んだ。


「シャアアアア!」


 ブシャアア!


 次々と切り裂かれていく鬼哭鮫達。


「す、すげえ!」「お嬢ぱねえ!」「可愛い!」



「フハハハハハハハ!」



 アウロラが腰に手を当て、高笑いする。



「フハハハハ、ハッ!?」



 ニュルリ



 アウロラの体に触手が巻き付く。いつの間に近づいたのか、ラチェルがアウロラの後ろに立っていた。


「どんな術を使ったんだか知らないけど、兇亀をああも操るなんて。あたしたちの仲間にならない?」


「な、なんだお前! 離せ!」


 アウロラは身を捩って触手から逃れようとした。だが触手には吸盤が付いており、引き剥がせない。さらにアウロラの全身に巻き付いていく。


 エルネストがそれに気づき、ラチェルを狙って攻撃しようとした。


「アウロラ様!」


「おっと、待ちな」


 ラチェルの触手がアウロラの肋骨に伸びる。


 ヌルル、グプッ


「あ、ぐうっ!」


 アウロラの呼吸器にラチェルの触手がほんの少し挿入された。 ※このための、エラ呼吸設定! ドン!


「ほら、このまま奥に突き入れて、この娘の呼吸器を破壊しようか?」


 グプ……プ……


「うぎ……い……」


「く……」


 アウロラの苦しそうな表情を見て、エルネストの動きが止まる。


「ゴオウ……」


 兇亀を見れば既にアウロラ立ちのすぐ傍に居り、食い入るようにアウロラとラチェルを見ていた。それを見た守備隊がつぶやく。


「なあ、あの兇亀、見惚れてないか?」「ああ、なんか見てるな」「俺達も見てていいのか?」


 ラチェルがアウロラの横顔を舐めるように見る。触手がアウロラの胸やふとももを締める。


 ギュチ!


「妙な歌も歌っていたっけねえ? 歌で兇亀を操っているのかい?」


「武、武零怒ッ!」


「口は塞いだ方が良さそうだね」


 ヌルプ


 ラチェルの触手がアウロラの口をふさいだ。


「んむぅ、んぐぐっ」


 兇亀はさらに身を乗り出し、見開かれた目を見れば血走っている。


「お、おい、まさかあの兇亀、本当にアウロラ様の可愛さに目がくらんで?」


「ま、まさかあ」


「いくらなんでもそれは」




「んんっふ! んむぐぅー!」


 兇亀は未だアウロラとラチェルの絡みを見守っている。


「ああ! 見ろ! 亀の股間から何か伸びてきたぞ!」


「何!」


「なんだと! まさか!?」



 グググ……



 ググ……



 ニョキ!



「あっ……ああー! あ、なんだ。尻尾か。」


「尻尾かぁ」


「あー、良かった。尻尾で」


 ※本当に良かった。


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