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異世界における他殺死ガイド26

 

 亜人の女性の体を見ている。


 肋骨が膨らみ、骨の間にある横長の穴が開いて水が吸い込まれていく。呼吸しているのだ。肋骨に連動して、その上の乳房が上下する。乳房の先端の部分はうまいこと頭のヒレが隠している。ヒレが憎い。


 見れば見るほど亜人の女性が美しく感じてくる。陸で暮らす人間と比べたら、完全に別の生物と言えるほど体の構造が違うのに(俺は今は亀だが)、これほど扇情されるのは何故なのか?


 時オカのルト姫大人バージョンに見惚れてしまった時のような禁忌感。


 不気味であり、生理的嫌悪を感じる場合もある。だが美しくも感じ、一線を超えてはならないと、強く理性が引き留めるのに、禁忌感こそが良いのだと、俺の中のケモナーが吠える。これはこれまでに乗り移ってきた誰かの記憶ではない。俺が、俺こそがケモナーだ。 ※魚人の場合もケモナーって言うんですかね。


 とりあえず美味しそう。


 ……。


 ちょっとだけ、ちょっとだけ甘噛みしてみようか。みや可愛い。


 脚は少量だが出血しているので避けて、腰のあたりを口で挟むだけ……。


 俺は亜人の女性が気絶しているのを良いことに腰のあたりに噛みついた。もはや紳士は名乗れない。


 ハム


 パチリ


 亜人の女性と目が合った。


「……」


 フッ


 亜人の女性は気絶した。


 俺は急いで口を離した。


 いかん。最悪のタイミングで目を覚まされてしまった。例えるなら自分の部屋で遊んでいた幼馴染の女の子が寝てしまってその隙にスカートの中を覗こうとしたら目を覚まされたみたいな。いや俺にそんな経験は無いが。


 どうしよう。次に女性が目を覚ました時、なんと弁明しようか。そもそも言葉は通じるのか?


 ……別に弁明する必要は無かったな。気絶したまま放置してたら危険だったからここに連れてきただけだし、目を覚ました時に俺が居なければ勝手に家に帰るだろう。


 ということで俺は洞窟から出て少し離れた岩場に隠れて女性を見守ることにした。





 暫く見守っていると女性が目を覚ました。キョロキョロと周りを見回し、不安そうである。やがて洞窟のへりに身を寄せ、外に何もいないか探り始めた。何もいないのを確認すると、女性は意を決した表情をし、洞窟から出てきた。


 だがその泳ぎはヘロヘロで、鮫にでも遭遇しようものなら直ぐに襲われて食べられてしまいそうだ。これは流石に放っておけない。ちゃんと泳げるようになるまで洞窟で安静にしていてもらった方が良い。


 ゴオッ


 俺は女性の前に姿を現す。


「キュウウ!」


 女性は驚いて叫んだ。


 逃げ出されたら面倒なので素早く口に含む。


 ガバッ


「キュ!」


 洞窟に戻り、女性を吐き出す。


「キュウ! キュウ!」


 女性は俺から逃げようとし、ヘロヘロと洞窟の壁に当たって止まった。怯えた様子で縮こまっている。


 ううむ、女性の声はキュウキュウとしか聞こえない。言葉は通じないようだ。仕方が無い、食料を捕ってきて与えたりすればこちらに敵意が無いことをわかってくれるだろう。


 というわけで俺は洞窟を出て食料を探しに行くことにした。女性が洞窟を出ないように見張りながらだからあまり遠くに行けないが、なんとかなるだろう。





 俺が魚を取って戻ると、女性は洞窟の壁に縮こまったままだった。俺の姿を発見すると、諦めたような顔でこちらを見つめてくる。


 女性に向かい、口に含んだ魚を吐き出した。吐き出して思ったが、水棲亜人達は魚は生で食べるのだろうか?


 海中だと料理とかできなさそうだ。火を起こせないし、焼くことが出来ない。煮るのは可能かもしれないが、難しそうだ。器に盛っても運んだら器から落ちるし。スープとかも無いよなあ。生食以外無いのかな?


 そんなことを考えていたら女性が俺の口の近くにまで来ていた。魚を食べるのかと思って見ていると、女性は俺の口をこじ開けようとしている。何か気になるものでもあるのかと口を開けてやると、何故か女性は俺の口の中に入ってきた。


 俺の舌に体を預け、さあ、食べなさいとでも言わんばかりである。トムに食われるの覚悟したジェリーか。



 まあちょっと危なかった。魚を捕るついでに自分の食事も済ませたから良かった。済ませていなかったら舌で舐るくらいはしていたかもしれない。


 舌で押して口から女性を出し、吐き出した魚を顎で指す。すると女性は少し考えこむような仕草をした後、魚を手に取り、かぶりついた。魚の生食で問題ないようだ。




 女性は魚を食べ終わると、洞窟の隅に行き、座り込んだ。そうそう、そうやって休んで体を治してくれ。そうだ、いつまでも「亜人の女性」では呼びにくい。勝手に名前を付けさせてもらおう。キュウキュウ言うからキューでいいか。



 ***



 あれから暫く、キューに食料を与える日々を過ごした。


 キューはだんだんと俺に慣れていき、魚を捕って帰ると出迎えるようになった。


「キュウ」


 キューが休んでいて暇そうな時、キューのしぐさに連動して体を動かしてやると、面白かったのか、何度もしぐさを繰り返してきたので、俺はそれにのってやり、キューと同じ動きをする遊びをした。


「キュキューン!」


 遊びの合図だ。この鳴き声が聞こえたら、俺はキューのしぐさを真似てやる。


「キュルルルル♪」


 楽しそうだ。




 そして、今現在のキューを見てみれば洞窟内を泳ぎ回っている。


「キューウ♪ キューウ♪」


 上機嫌だ。もはや完全に俺への怯えは無い。


 だがキューの体は回復した。お別れの時が来たようだ。



 泳いでいるキューに近づく。


「キュウ?」


 首を傾げてこちらを見てくる。あざと可愛い。


 グイグイ


 鼻でキューの体を押し、洞窟の外へと押し出す。


「キュウ? キュウ?」


 キューが洞窟に戻ってくる。キューは俺が何故自分を洞窟から出そうとするのかわからないようだ。洞窟に入ってこようとするキューと何度か押し合いした。


 やがて俺の意思を理解したのか、キューは洞窟を離れていく。かと思ったら戻ってきた。俺の顔を手で挟んで引っ張ってくる。ついて来いと言っているようだ。


 水棲亜人達は群れか何かで暮らしているのだろうか? わからないが、そこへ俺が現れたら大騒ぎだろう。


「キュウー」


 目を覗き込むキュー。


 わかった。送っていくだけだ。キューが無事仲間と合流出来たら本当のお別れとしよう。


「ゴウゴウ」


「キュルルル♪」


 俺が洞窟から身を乗り出すと、キューはクルクル回って喜んだ。


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