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酒場にご用心

薬草採取を終えてギルドに戻り、受付に行ってセレナさん薬草渡す。


「早かったね。初仕事はどうだった?薬草採取なんて詰まらなかったでしょ?」

「いや、そんな事ないですよ。一人で受けたら詰まらなかったかもしれないですが、三人でやれたので楽しかったですよ。」

「三人って、ジルは役に立たなかったじゃない。私とリンで集めたんだし。」

「ん、役立たず。」

「そんな事言うなよ。確かに今回はあまり貢献出来なかったけど、楽しかったじゃないか。」

「ん、楽しかったのは否定しない。」

「余りって、まぁいいわ。そういう事にしておきましょ。」

「あなた達仲がいいのね。ギルド証出して待ってて、報酬を用意するから。」


セレナさんが薬草を持って奥に行き報酬の金を持って戻ってくる。


「はい、お待たせ今回は依頼内容より薬草が多かったのでその分上乗せしてあるから、銀貨三枚になるわ。」

「ありがとうございます。」「ありがとう、助かるわ。」「ん。」


セレナさんにお礼を言いギルドを出て宿で借りてる自分達の部屋に戻る。


「今回の報酬は二人で分けてよ。俺役に立たなかったし。」

「ん、ありがたく。」

「リン待ちなさい、ジル一緒に行ったんだから三人で分けましょ。一人銀貨一枚。報酬はどんなことが有っても三人で分けるのよ。」

「いいのか?なんか申し訳無いんだけど。」

「いいのよ。次の依頼では、私が足を引っ張るかもしれないし、パーティーってそんなもんでしょ。」


エルメの言葉に感動してリンを見ると吃驚してる。


「ん、エルメがそんな事言うなんて‼️」

「リン、私の事何だと思ってるの?」

「ん、金の亡者。」


リンに金の亡者と言われて頬をひきつるエルメ。


「リン、死にたいらしいわね。」


物騒なこと言うエルメを見ると槍を構えだす。


「待てエルメ、リンの冗談だから。槍をしまって。ほら、リンも謝って。」

「ん、妹はいつか姉を越えるもの」


リンは弓を構える。

部屋で弓構えても不利でしょう。何やる気になってるの?


「ちょ、二人とも宿の人に迷惑だから。落ち着こう。」


なんとか二人を宥めて落ちついてもらう。

兎に角話を変えて遅めの飯を食べることにした。宿の人に美味しい店はないかと訪ねると近くにある酒場が安くて美味しいらしいので酒場に向かうことにした。


「教えてもらった場所はここだな。ここは俺が出すから沢山食べてよ。」

「なんか悪いわね。でも沢山って言うと、リンは際限なく食べるわよ。」

「そ、そうだな。程々に頼むよ。」

「ん、大丈夫。エルメの分も食べるから。」

「なんで私の分まで食べるのよ?」

「ん、ダイエ…………」


またエルメを挑発するような事を言うリンの口を塞ぐ。


「今、なんか言った?」


低い声で聞くエルメに俺は首を横に振る。頼むから仲良くしてほしい。

リンになぜ怒らせる事を言うのか聞くと、エルメを揶揄うのが生き甲斐らしい。

もっとマシな生き甲斐を見つけてほしいものだ。

店の前で騒いでないで中に入ることにした。


「昼を過ぎた位だから、余り客はいないな。」

「静かでいいじゃない。遅く来ると酔っ払いが増えるし早く頼みましょう。」


取り敢えず注文を頼むのに店の人を呼ぶと俺達と同い年位の女の子が聞きに来てくれた。ここの店の娘さんかな?髪色は茶髪でポニーテールにしている。瞳の色も茶色って言うかブラウンかな?背はエルメと一緒位かな?


「すいません、注文いいですか?」


と聞くとその子は此方を見てぼーっとしている。


「ねぇ、注文したいんだけどいいかしら?」


ハッとしてその子が慌てている。


「私ベルって言います。名前教えてもらってもいいですか?」

「俺?俺はジルって言うんだ。注文いいかな?」

「ジルさんですね覚えました。私の事はベルって呼んでください。えっと、うちはメニューがなくてその日のオススメしかないのでそれでいいですか?」

「エルメ、リンどうする?俺はそれで良いと思うんだけど。」

「いいわよ、それで。」「ん、二人前。」


リン二人前食えるのか?いや、リンなら食えるな。


「じゃあ、オススメを四人前で頼むよ。」

「はい、分かりました。」


直ぐに料理が運ばれてきた。


「ねぇ、ジルのだけ量が多くない?リンの二人前より多いように見えるんだけど。」

「ん、明らかに多い。」

「なんで俺のだけ多いのかな?」

「はい、ジルさんには私ベルからのサービスですから気にしないでください。」

「あ、ありがとう。でもこんなにも食べれないかも?リン食べれなかったら俺の分食べる?」

「ん、喜んで。」

「だめです。食べれなかったら、そのまま残してください。私の方で処理しますから。」

「えっ、嫌でも残したら悪いし、リンも喜んでるから。」

「いいから食べれなかったら、残してください。」

「は、はい。」



飯を食べながら、エルメとリンに聞いてみる。


「なぁ、残すより、リンに食べてもらった方がいいよな?」

「そりゃ、食べた方が言いと思うけど、ベルは残せって言ってるんだから残せばいいんじゃない?」

「なんか残すの怖いんだけど。」

「ん、バレないように私が食べる。」

「ダメよ、カウンターからベルがこっちを見てるわよ。」

「マジで怖いんだけど。」

「諦めなさい。」


なんとかリンの二人前より多い飯を食べる。リンを見るとまだ余裕のようだ。


おかしいだろ?リンの飯は俺よりは少ない、でも二人前食べても平然としてるなんて、俺なんて苦しくてしょうがないのに。


苦しい想いをして店を出る。

会計の時に見たベルは残念そうにしていた。その残念そうな顔を見たら背筋が震えた。暫くはあの店には近づかないようにしよう。


「もうちょっとゆっくり歩いてくれない?かなり辛い。」

「辛い想いをして全部食べなくても良かったじゃない?」

「いやいや、俺が全部食べた時のベルの顔見たか?あの顔見たら全部食べた自分を誉めたい気分だよ。暫くあの店には行かないようにしよう。」

「ん、反対。あの店は安くて旨かった。」

「確かに四人前で大銅貨二枚は安かったけど、頼むからあの店に近づくのはやめようぜ。」

「リンはあの店は気に入ったのね。なら、じゃんけんで決めればいいんじゃない?」

「ん、望むところ。」「よし、受けて立つ。」


ここは難としても勝たなくては。じゃんけんでここまで真剣になるとは。


「じゃんけんぽん」


俺チョキ、リンは……グー


負けた。膝から崩れ落ちる俺、反対にガッツポーズを決めるリン。


「ん、明日の昼もあの店で決まり。」



明日もあの店ですか?リンはいい笑顔で宿まで歩いてその後ろをエルメが付いていく。


頼むから俺の気持ちを考えてほしい。

明日も依頼を受けて昼には街に帰れないようにしようと決めた瞬間だった。











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