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転生令嬢、ハーレムを望む!

「素振りしなきゃ…」


ぼんやりと目覚めた部屋で、私は毎朝の日課である素振りをしようと木刀の方向へ手を伸ばしました。それは朝食の前に少し動いてから汗を流し、朝食を食べるというのが一番動きやすいという理由からでした。


しかし、どこにも木刀はありません。

日の登りきっていない部屋は暗く、目を凝らして木刀を探します。しかしどこにも見つからず、しかもなんだか部屋が無駄に広くなっていることに気づきました。


「…カーテン開けよ」


まだ覚醒しきっていない体を起こし、窓の近くへと歩きます。ここの窓、こんなに大きかったかな?そう思いながらカーテンに手を伸ばし、少しだけ引きました。


「え…」


見えたのはお隣さんの家やお向かいさんの家、沢山の住宅の奥に少し遠くに見える山…ではなく。広大な面積を持つ手入れの行き届いた庭園でした。


「…そう、庭」


混乱しながらも庭を見つめます。やがて、窓に薄く映る私の姿に意識が奪われます。そこにいたのはこげ茶の髪に藍色の瞳をしたどこにでもいそうな小さな少女でした。真っ黒い髪と目を持った、無駄に王子様っぽい女ではありません。

しかし、この姿は見慣れていたはずでした。


「ビアンカ=アウローラ」


そう、私の名前はビアンカ=アウローラ。アウローラ公爵家の長女。今年11になったばかりの少女。貴族令嬢として平凡すぎるほどの見た目と能力。それが私でした。

しかし、私は今日から平凡とは離れたものを得てしまったようです。

前世の記憶、そう呼ぶべきしかない記憶をしっかりと思い出したのです。


前世の私は、それはそれは賑やかな男兄弟に囲まれ、男勝りな母親と剛毅木訥な父親の血をちゃんと受け継いだ立派な漢と賞賛すべき女になりました。なんとびっくり、私は女に生まれ落ちてしまったのです。まだ勉学に励む身分のうちに親孝行もできず事故にあったのか否か、前世の私は死んでしまった様でございます。

男のようだと言っても女性に恋することはありませんでしたが、散々男に囲まれた身として、男のダメな部分もよく見てきておりました。目の前の殿方がいくらイケメンでもいくら優しくとも頭にちらつく兄弟の欠点。ついに私は男に恋することもございませんでした。

殿方からの告白もなかったのは、もとより生まれついた見た目のせいで、男らしく見えていたのもありましょう。

しかし、こんなもの弊害とは呼べませぬ。本当の悲劇はここから。私は、同性の友人がいませんでした。

 話しかければ怖がられ若くは恥ずかしがられ。手助けすれば照れられ黄色い悲鳴をあげられ。気がつけば私は宝塚のスターのごとく。一緒に着替えるのが恥ずかしいからと私は個別に更衣室を与えられ、男に妬まれ、女子に告白され。

 どうして周りの男どもに女友達がいて、私にはいなかったのでしょう?私の前世はなにをやらかしたのかわかりませんでした。ただ私は女の子の友人と甘いものを食べ、オシャレをして、お話ししたいだけであったのに!罪深き我が容姿と生まれを憎むこと十数年。


「ふふ、ふふふ」


生まれ直した今世では、見た目こそ美しくないものの醜くもないいわゆる普通の顔へと生まれ変わりました。今世の家族である父様母様妹の美しさに比べられる可哀想な見た目ですが、問題ありません。寧ろ、親しみやすいくらいでちょうど良いのです。

令嬢は本来女性同士で交流するもの、この国ではそういう習いがあります。つまり私は必然的に女性と交流できるのです。やっと!やっとまともに女性と過ごすことができるのです!


「いける…いけるわ…!」


女性に囲まれた状態のことを「ハーレム」と呼ぶそうですが、私が目指すのはまさにそれ。仲の良い女性の御友人方に囲まれて茶会を開く…そんな令嬢にしては普通のことが、今の私には叶うのです。あんなに昔恋い焦がれていたようなことが!


「絶対に、作ってみせますわ…!ハーレム!」



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