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【コミカライズ開始】ひねくれた私と残念な俺様  作者: 合澤知里
本編

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76.四人での生活は楽しいです

 翌朝、昨日の分まで熟睡した私は、同じ部屋でまだ寝ている凛さんを起こさないように、そっと身支度を整えた。


 昨夜、敬吾さんが来てから話し合った結果、敬吾さんは大河さんの書斎で、凛さんは私と同じ部屋で寝泊まりする事になったのだ。お二人共寝袋まで持参するという用意周到さに恐れ入る。急に決まった出来事に、私は驚きながらも歓迎していたのだが、散々文句を言っているのにも関わらず、お二人に華麗に聞き流されてしまっていた、家主の筈の大河さんには、少しだけ同情してしまった。


 「冴香ちゃん、おはよう。」

 「おはようございます、敬吾さん。」

 「おはよう。わあ、良い匂いね。」


 四人分の朝食を作っていると、敬吾さん、凛さん、大河さんが起きてきた。打ち合わせた訳でもないのに、割と同じタイミングで皆さんが席に着く。何だかちょっと微笑ましい。幼馴染って良いな。


 「はぁー。このお味噌汁、美味しい~。」

 わかめのお味噌汁を一口飲んで、凛さんが顔を綻ばせた。幸せそうに次々と食べてもらえて、私も嬉しくなる。


 「朝から冴香ちゃんの料理が食べられるなんて、贅沢だな。」

 「ありがとうございます。そんな風に言って頂けて、嬉しいです。」

 鰈の煮付けを食べながら、敬吾さんまで褒めてくださるものだから、何だか照れてしまった。


 「冴香ちゃんって料理上手よね。私下手だから、尊敬しちゃう。」


 凛さんの言葉に、私は目を丸くした。

 そうなの? 凛さん、何でも出来そうなのに。


 「凛さんは、料理が苦手なんですか?」

 「そうなの。自分で作って、美味しい物が出来た試しがないわ。敬吾の方が上手なのよ。外食に飽きたら、敬吾の所に転がり込んで、手料理を食べさせてもらっているのよね。」

 「そ、そうなんですか。」

 苦笑する凛さん。意外な事実だ。


 「俺も冴香ちゃん程上手くはないけどね。料理すると言っても、休日だけだし。けどまあ、何でも目分量で作る凛よりは、美味い物が出来る自信はあるな。」

 敬吾さんがニヤリと笑って凛さんを見遣ると、凛さんは決まりが悪そうに口を尖らせた。


 「だって一々量るの面倒なんだもの。それが悪いんだって分かってはいるけど、ついつい適当になっちゃうのよね……。それに敬吾が作ってくれた方が、ずっと美味しいし。これからも宜しくねっ、敬吾。」

 「はいはい。」


 甘えた声を出す凛さんに、呆れたように苦笑しながら答える敬吾さん。だがお二人が幸せそうに見えるので、これはこれで良いのかも知れない。いや、寧ろちょっと羨ましいぞ。


 「凛、お前も少しは作れるようになった方が良いんじゃないのか。」

 昨夜からの不機嫌がまだ直らないのか、今朝はずっと仏頂面の大河さんが凛さんに突っ込んだ。


 「あら、大河君には言われたくないわね。私は料理だけだけど、大河君は家事全般じゃない。人の事は言えないんじゃないの?」


 凛さんに冷ややかな視線を返され、大河さんは言葉に詰まっている。

 まあ、実際凛さんの言う通りだし。


 「でも、大河さんは稀に家事を手伝ってくださいますよ。配膳の準備とか、洗濯とか。数えられる程度ですけど。」

 一応私がフォローすると、お二人が目を剥いた。


 「大河が手伝う!? うわ、有り得ねえ! その日の翌日、雨だったろ?」

 「絶対何か下心があったんじゃないの? 怪しいわね。」

 「お前らなあ! 俺が偶に手伝ったら悪いのかよ!」


 お二人相手にムキになる大河さん。朝から食卓が賑やかで良いな。やっぱり、食事は大勢で食べる方が私は好きだ。


 朝食を終えて、大河さんと敬吾さんを送り出す。後片付けを手伝ってくださる凛さんに、私は気になっていた事を訊いてみた。


 「凛さんは、普段は何をされているんですか?」

 「うーん……。色々、かな?」

 「色々?」

 予想外の答えが返ってきて、私は首を傾げる。


 「そう。天宮家専属の何でも屋、と言った所かしら。何かの行事があればその手配とか、依頼があれば素行調査とか、人探しとか、ボディーガードとか。」

 「そうなんですか。何だか大変そうですね。」

 「そうね。何処の誰とは言わないけれど、人使いが荒い人もいるしね。他の用があるって言っているのに、俺の方が急ぎだから優先しろ、とか。」


 何を思い浮かべたのかは知らないが、凛さんが眉間に皺を寄せて台拭きを握り締めた。何だか良く分からないけれど、凛さんも大変なんだな。ひょっとしたらその人、今頃くしゃみでもしていたりして。


 家事を終え、アルバイトに行く時間になると、凛さんも一緒に出掛けると言い出した。凛さんも用事があって、その通り道になるらしい。


 「冴香ちゃん、アルバイトが終わるのは夕方の六時だっけ?」

 「はい。終わったら、買い物を済ませて帰る予定です。」

 「じゃあ、一緒に買い物しても良いかな? 私が帰って来るのもそれくらいだから、ジュエルに迎えに行くわね。」

 「分かりました。お待ちしています。」


 凛さんと一緒に家を出て、ジュエルで別れた。帰りはジュエルに寄ってくださった凛さんと一緒に、買い物をして家に帰り、夕食の支度をしながら大河さんと敬吾さんの帰りを待つ。

 四人で食卓を囲みながら、凛さんと敬吾さんが大河さんを揶揄い、ムキになった大河さんが二人に抗議する様子が可笑しくて、二人の時よりも楽しい時間を過ごした。

 そんな日が、二日続いた。

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