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【コミカライズ開始】ひねくれた私と残念な俺様  作者: 合澤知里
番外編

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結婚式を挙げました

 「冴香さん、本当に綺麗よねー!!」

 「ありがとうございます。麗奈さんも素敵です!」

 薄い桃色のドレスにベージュのボレロ姿の麗奈さんに褒められ、照れながら返答する。


 「本当、綺麗だよ、冴香ちゃん。」

 「そうそう。大河君には勿体無いくらい。」

 「そ、そうでしょうか……。でも、そう言って頂けると嬉しいです。」

 スーツ姿が決まっている広大さんと雄大さんにも褒められてしまい、私はすっかり赤面してしまった。


 今日は私と大河さんの結婚式だ。今私は、新婦の控室で、純白のドレスに身を包んでいる。ドレス選びの時に、何故か張り切りまくりの大河さんによって、お店に置いてあるドレスの全種類を試着させられそうになりつつも、私の低身長を理由に大幅に絞り込み、そして大河さんも私も納得して選んだのがこのドレスだ。ハイウエスト切り替えのAラインのドレスに、ヒールの高いシューズで、我ながらそれなりに上手く化けられたんじゃないか、とは思っている。

 但し、この格好、動きづらい。

 ただでさえハイヒールなんて慣れなくてこけそうなのに、先程からドレスの裾を何回か踏んでしまっているのだ。本番で転んでしまわないか、今から不安で仕方がない。


 「いよいよ冴香ちゃんがお嫁に来てくれるのね! 感慨深いわあ!」

 「そうだな。冴香さん、これからどうぞ宜しく頼むよ。」

 「はい。こちらこそ、宜しくお願い致します! ところで……。」

 恵美さんと将大さんに挨拶をした私は、控室をくるりと見回した。


 「皆さん、新郎控室の方に行かなくて良いのですか?」


 そう、新婦控室には、先程からずっと天宮家の方々がいらっしゃるのだ。会長に和子さん、将大さんに恵美さん、大樹さん、麗奈さん、広大さん、雄大さんが。貴大さんご夫婦と理奈さんご夫婦、敬吾さんや凛さん達も来てくださったのだけれども、その後新郎控室の方に向かわれた。だけど、この方々は動く気配が全く無い。

 いや、来てくださるのは嬉しいですよ? だけど普通、新郎の親族の方々なら、新郎控室の方に行くものだと思うんですけど……。


 「えー、大河君の新郎姿見た所で、面白くも何ともないじゃない。」

 「そうそう。それくらいなら、冴香ちゃんの可愛い花嫁姿を見ていたいよなー。」


 いや、雄大さんに広大さん、そういう問題じゃないような……。貴方達は大河さんの従弟ですよね? そのうち大河さんが拗ねないか心配になってくる。


 「可愛げのない大河よりも、可愛らしい冴香さんの花嫁姿を愛でていたい所だか……。仕方がない。行くぞ、お前達。」

 「ちぇー。」

 「つまんねーの。」

 「じゃあ冴香さん、また後でね!」

 会長が重い腰を上げて出て行かれ、不満げなお二人を含む皆様も出て行かれた。


 「とうとう冴香がお嫁に行ってしまうのか……。」

 途端に、今まで笑顔で皆さんに挨拶をしていたお父さんが、溜息をついて涙目になった。


 「何感傷的になっているの? 私が結婚した所で、今までと変わらないじゃない。」


 だって、もう既に大河さんと一緒に暮らしているし。紙切れ一枚提出して、式を挙げた所で、私達の生活が変わる訳じゃない。

 ……あ、一つ変わっちゃう、かな? 駄目だ、思い出しただけで、何だか暑くなってきちゃった。


 「いや、まあ、そうだけど……。もっとお前と、ゆっくり過ごす時間を作っておけば良かった……。」

 鬱々と管を巻くお父さんに閉口する。


 そんな事、今更言われても。仕事人間で家庭をちっとも顧みず、挙句の果てに借金の為に私を身売りしたのは何処の誰でしたっけ。

 まあ、これを言ってしまえば、お父さんの精神的ダメージが凄い事になりそうだから、禁句なんだけれども。


 「結婚しても、お父さんとの縁が切れる訳じゃないんだから。またジュエルに来てよ、お父さん。」

 「あ、ああ……。そうだな。」

 漸く微笑みを浮かべたお父さんに、やれやれと苦笑した。


 やがて係の人が呼びに来て、私達は式場に向かった。式場の手前でお父さんと別れ、私は打ち合わせ通り、大河さんの元へと向かう。

 大河さんには、教会式と神前式を提案されたが、私の希望で人前式にしてもらった。黒歴史の時に、何度神様に助けを求めても無駄だったので、不敬だけれども、はっきり言って私は神様なんて信じていない。そんな神様に愛を誓うよりも、私達が出会った大切な人達に証人になってもらう人前式の方が、私には合っていると思った。理由を話すと、大河さんも快く頷いてくれた。

 ……因みに、ドレスよりも重い白無垢を着なくて済むとか、人前でキスしなくても良い、という隠れた他の理由については内緒にしている。


 黒のフロックコートを完璧に着こなしている大河さんは、やっぱり凄く格好良かった。衣装合わせの時にも見ているのだけれども、何度見ても見惚れてしまう。


 「大河さん、お待たせしました。」

 声を掛けると、振り向いた大河さんは、私を見て赤くなった。


 「冴香、その……凄く綺麗だ。」

 「あ……ありがとうございます。大河さんも、とても格好良くて、素敵です。」


 やだ、ドレス選びの時にも見ているじゃないですか。そんなに真顔で言われたら、私まで赤くなってしまう。


 係の人の生温かい視線に羞恥を覚えつつ、大河さんにエスコートされ、式場に足を踏み入れる。列席者の人達が拍手で私達を迎えてくれた。新郎新婦の親族の皆さんの他、二階堂一家、本城一家、谷岡さんや新庄さん、ジュエルを臨時休業にして出席してくださったマスター達、青柳一家、西条一家に最上夫妻、大河さんの出身大学の恩師やご友人や職場関係者等、沢山の方々がお集まりくださった。

 皆さんの前で大河さんと考えた誓いの言葉を述べ、指輪の交換をする。婚姻届けに署名押印し、将大さんとお父さんにも署名押印してもらって、私達の結婚が成立した。


 「天宮君、結婚おめでとう!」

 「冴香ちゃん、おめでとう!」

 「ありがとうございます!」


 皆さんにフラワーシャワーをしてもらいながら退場する。照れ臭いけれど、やっぱり嬉しい。自然と笑顔になってしまう。

 因みに、お父さんは人目を憚らずに号泣していて、将大さんに宥められていた。ちょっと恥ずかしかった。

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