皆さんと一緒で楽しいです
旅館に戻った私達は、借りていた着物を返却し、預けておいた荷物を受け取って部屋に向かった。移動の最中でも、本館内では立ち並ぶ土産物屋に気を引かれたり、渡り廊下に出ては綺麗な庭に目を奪われたり、離れに入ると廊下に飾られている花や絵画を楽しめたりと、移動距離を気にさせず、目を楽しませる工夫が随所にあって感心した。男女別に大部屋に入っても、その広さや清潔さ、充実したアメニティグッズに、四人で暫くはしゃいでいた。
「夕食までまだ時間があるから、皆で温泉に入りに行こうよ!」
麗奈さんに誘われて、四人で温泉に移動する。
「冴香ちゃん、その……皆とお風呂に入っても、大丈夫なの?」
移動中、凛さんが小声で尋ねてきてくれたけど、一瞬何の事か分からなかった。少し考えて、私の黒歴史の事を気にしてくれているんだと漸く気付いたくらいだ。
「大丈夫です。あの二人は、痕が残らない程度に手加減していましたから。今は痣なんて全部綺麗に消えていますよ。」
私が説明すると、凛さんは安心したように微笑んでくれた。
皆さんと一緒にお風呂に入る弊害は、スタイル抜群の皆さんと比べて、私がお子ちゃま体型だなーって再確認してしまった事くらいだ。特に谷岡さんの胸が大きくて羨ましい。私と足して二で割ってくれないかな、なんて事を考えてしまった。
……大河さんも、やっぱり胸は大きい方が良いんだろうか? こればっかりは、どうしようもないけどさ。
広い脱衣所から室内風呂に入ると、ガラス越しに高い塀に囲まれた庭園を楽しむ事が出来た。温度別に数ヶ所ある湯船に順番に浸かり、最後に泳げそうなくらい大きい湯船に浸かってゆったりと手足を伸ばす。外にある露天風呂も景色が良く、何時までも浸かっていられそうなくらい気持ち良くて最高だった。
「はあ、気持ち良かったですねー。」
「うん! 何だかお腹が空いてきちゃった。夕食も楽しみね! この旅館はご飯も美味しいのよ!」
麗奈さんの言葉に夕食への期待が高まり、遅めのお昼ご飯の量が多かったにもかかわらず、私も空腹を覚えてしまった。
荷物を置きに一旦部屋に戻ってから、夕食の会場に行くと、先に来ていた男性陣が待ってくれていた。私達同様浴衣に着替えている所を見ると、どうやら大河さん達も温泉に入っていたようだ。
日本料理の夕食は、お刺身や煮物等、小さな器に綺麗に盛り付けられた料理が、所狭しと並んでいて、彩りが豊かで豪華だったけれど、やはり量が多かった。だけどどれもこれも美味しくて、お酒でほろ酔いになりつつある皆さんと一緒に、楽しくお喋りしながら舌鼓を打っているうちに、気付けば全てお腹に収めてしまっていた。
この分だと、きっとまた体重が増えてしまっているだろう。……どうせなら胸に回ってくれないかな。無理だろうけど。
夕食後は男性陣の部屋に集まり、皆でUMOをする事になった。
「飲み物適当に持って来たから、好きな物を選んでね。」
敬吾さんに勧められて、私は烏龍茶を手にした。他にはジュースや炭酸水、缶ビールや焼酎、チューハイ等、色々揃っていてバラエティに富んでいた。流石は敬吾さんだ。
「私はワインにしようっと。」
「敬吾、コップ多めにある? 私梅酒をソーダで割りたい。」
「あ、じゃあ私ウーロンハイにしようかな。」
思い思いの飲み物を手に、皆で輪になってゲームを開始した。麗奈さんから時計回りに、新庄さん、大樹さん、谷岡さん、私、大河さん、敬吾さん、凛さん、広大さん、雄大さんの順番だ。一周目に青のスキップ、二周目に黄色のリバースを出したら、大河さんに睨まれてしまったけど、手札で出せる物がそれしかなかったんだから仕方がない。
「まあまあ、大河、そんなに怒るなよ。はい、俺もリバースっと。」
「だあっ!? 敬吾てめえ! 俺まだ一回も出してねーんだぞっ!」
憤慨する大河さんに、皆で大爆笑する。未成年である私以外は、全員お酒を手にしているからか、いつもよりもテンションが高い。
それにしても、こうして見ると皆さん酔い方が違って面白いな。
見た目はいつもと全然変わらないのは、大河さん、大樹さん、敬吾さん、凛さん。大河さんはお酒に強いけど、他の皆さんもそうなんだろうか。
麗奈さんと新庄さんは、顔を赤くしてずっとにこにこと微笑んでいる。広大さんと谷岡さんも、同様に顔を赤くしているけれど、さっきから笑い上戸になっている気がする。雄大さんは、少し顔が赤くなっているだけで、それ以外は全然変わらない。
ゲームは次第に白熱していき、真っ先に大樹さんが上がった。私も上位で上がる事が出来、未だに真剣勝負を繰り広げている方々の顛末を楽しむ。
先程からずっと笑っていたから、何だか喉が渇いてしまった。手元の烏龍茶をごくごくと飲む。
……ん? 烏龍茶って、こんな味だったっけ? まあ良いや。
熱気がこもってきたからだろうか。何だか暑くなってきた。手札が後一枚という所で、谷岡さんによって四枚増やされる羽目になった大河さんが怒鳴り、その様子にまた大笑いしながら喉を潤す。
あれ? 私、眠いのかな? ちょっと頭がぼーっとしてきて、何だかふわふわするような……。だけど、凄く楽しいな。
お酒は二十歳になってから。




