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第3話 或る者の旅、終焉

 スコンティに入った後。

 十字路へ差し掛かる。

 そこは十字路だったが、一時期三叉路となった。

 1つの町が壊滅した為だ。

 しかしその後。

 ラヴィ達の協力も有って、その町は復興途中。

 また十字路へと戻った。

 その因縁の場所で。

 或る人物が待っていた。




「あら。」


 ラヴィが気付く。

 十字路から西へ行った所に在る、コンセンス家の住まう首都〔ウイム〕。

 そこで馬の世話をしている少女、《シェリィ》だった。

 何故か妖精が見える、不思議な

 彼女が静かに立っていた。


「お久し振りです。」


 お辞儀をするシェリィ。

 申し訳無さそうに、馬上から挨拶するラヴィ達。

 ラヴィが声を掛ける。


「良く分かったわね。私達が通る事。」


「はい。《フサエン》が教えてくれました。」


 コンセンス家現当主の少年、フサエン。

 シェリィとは幼馴染で、弟の様な存在。

 母親から受け継いだのか、火の精霊と会話が出来る。

 精霊がラヴィ達の到来をキャッチ。

 フサエンは所用でウイムを離れられないので、代わりにシェリィが見送りに来たらしい。


「以前は大変お世話になり、ありがとうございました。」


 そう言ってシェリィは、深々と頭を下げる。

 顔を上げた時、デュレイから何かを感じたらしい。

 ジッとその顔を見る。

 予期せぬ事に思わず、照れくさそうに顔を背けるデュレイ。

 そこでアンが気付く。

 確認する様に、シェリィに尋ねるアン。


「フサエンは、火の精霊とお喋り出来るのよね?」


「は、はい。」


「あなたが見つめる方も。以前、木の精霊と旅をしていたのよ。」


「まあ!そうなんですか!」


 道理で、フサエンと良く似た雰囲気を感じる筈。

 アンの説明に、デュレイも反応する。


「もしや話題に出ているお方は、《ブリー様》の忘れ形見では……?」


「御存じなのですか?」


 問い返すシェリィ。

 それに対し、デュレイは。


「幼き頃、父上とブリー様とは交流が有ってな。何度かお会いした事があるのだ。」


 感慨深く話すデュレイ。

 ブリーとは。

 壊滅の憂き目を見た町〔ドグメロ〕で家族の為勇敢に戦って散った、フサエンの実の父。

 それを不憫に思ったブリーの両親が、フサエンと養子縁組をし跡取りにしたのだ。

 デュレイは先代との縁もあって、ブロリアの地を任されたと言う。

 厳密には、『デュレイの留守を預かる魔物が』だが。


「コンセンス家の方々に、感謝の意を是非お伝え頂きたい。」


「分かりました。」


 デュレイの願いを承るシェリィ。

『急ぐから、これで』と、ラヴィ達は馬を走らせる。

 何故妖精が見えるのか聞きたかったが、時間に余裕が無い。

 ラヴィ達の姿が見えなくなるまで、ずっと十字路で立っているシェリィだった。




 十字路を南に進み、宿場町〔マキレス〕へと入る。

 馬小屋の下を勝手に改造してしまった宿屋へ寄ると、何故か大歓迎された。

 馬車の格納庫にした後、地下倉庫へと直した。

 その時消した筈の歯車が、壁の模様として残っていたのだ。

 すっかり、珍しがる旅人達の観光スポットになっていた。

 そのお陰で、宿は大繁盛だそうだ。

 手をガッと掴まれたと思うと。

『ありがとうございます!』とブンブン勢い良く握手され、困惑気味のアン。

『あー、あれかあ、確かに珍しいもんなあ』と思い出して、感心するロッシェ。

 結局宿主に押し切られる形で、その日はそこで一泊。

 次の日、朝日が出る前に出発する一行。

『またのご利用を!』と大声で送り出され、少し苦笑いのアンだった。




 やっとの思いで、関所の町〔ブロリア〕に到着。

 その中央に在る広場に。

 自分のあずかり知らぬ所で建てられた、《デュレイ将軍像》。

 そう、デュレイは関所を預かる将軍の地位に居た。

 これも知らぬ間に。

 調子の良い影武者の魔物 《ラピ》が、本物の帰る場所を確保しようと引き受けた結果。

 自分の銅像を見上げ、デュレイは照れくさかった。

 広場から見える城に、向かうラヴィ達。

 すると城の前には、召使いが待機していた。


「ようこそ、おいでなさいませ。」


 そしてすんなりと、中へ案内される。

 奥に進むと、ラピとあれこれ話した部屋に。

 そういやここで、あいつが見破ったんだっけ。

 懐かしく思うラヴィ。

 城とは名ばかり。

 ラピが幻でそう見せているだけ。

 それもこれも、デュレイを待ち続ける為。

 そしてとうとう、成就する時が来た。


「デュレーーーイ!」


 駆け寄る、デュレイのそっくりさん。

 ポンッと音がして、ウサダヌキの姿になったそれは。

 デュレイの胸に飛び込む。


「ご苦労だったな。」


「良かった、良かった……。」


『ウワーン!』と泣き続けるラピ。

 ギュッと抱きしめるデュレイ。

 今漸く、絆が再び交わった。

 それを誇らし気に見る、ラヴィ達だった。




「残念ながら、俺はここでお別れです。」


『今までお世話になりました』と、ラヴィに深々とお辞儀をするデュレイ。

 本物が帰って来た以上、偽物の出番はもう無い。

 そして将軍と言う立場上、簡単に旅立てる状況では無くなった。

 それにデュレイはヘルメシア側の人間なので、関所を越える訳には行かない。

 彼の旅は、一旦ここで終えるのだ。


「御用の時には、何なりとお申し付け下さい。」


 そうラヴィに話すデュレイに対し、ラヴィは答える。


「そんな状況が来ない事を祈るわ。」


「確かに、そうですな。」


 将軍の帰還と同時に。

 あいつが仕掛けたトラップも1箇所に集まり、金塊へと変わった。

 きっとそれで『新しい屋敷へ移れ』って事ね。

 気が利いてるじゃないの。

 私達の到着をラピに知らせたのも、あいつのトラップね。

 デュレイの柔らかな声の返答に、あいつの気遣いを感じるラヴィだった。




 関所の兵士が立っている場所まで、デュレイが見送りに来てくれた。

 ラピは『デュレイの力になりたい』と、引き続きデュレイの元へ留まる事にした。

 将軍直々のお出ましに、驚きながらも役目を果たす兵士。

 通行手形はデュレイが発行してくれた。

 そして念の為に身体検査。

 不審な物を持っていない事を確認すると、『どうぞ、お通りを』と道を開けてくれた。

 デュレイはトクシーに声を掛ける。


「ビンセンスよ!また会おうぞ!」


「おお!お互い息災にな!」


『また』。

 ここで今生の別れ、とは成らない。

 再び、また人生の道が交わる日まで。

 お互いに頑張ろう。

 友として。

 そう誓い合う、デュレイとトクシーだった。




 こうして一行は、ヘルメシア帝国を離れグスターキュ帝国へと帰還した。

 しかしまだ、道のりは遠い。

 首都〔アウラスタ〕まで、幾つもの領地を通らねばならない。

 そして一行の中では、また別れが近付いていた。

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