表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Black Rose  作者: 過去旧
5/5

Part-04 訓練と授業(剣術)

「まず、剣術は主に剣士と剣を使う戦士が多用します。」


マスターの授業が始まった。

剣士というのは、主に剣を使った戦い方を主とする者で、戦士は剣や槍、斧等を幅広く使う者の事を言う。

剣術に決まった流派は無く、個人の裁量でどうにでもなるらしい。

人によっては一撃を重視した戦い方もするし、またある人によっては一撃をわざと軽くして連続的に攻撃するという戦い方をしたりもする。

戦い方は人それぞれ、という事だ。


「なので、まずは剣に慣れてもらいます。」


というと、マスターは目を閉じ、手を前に突き出した。

途端、凄まじい突風が吹き荒れると同時に寒気を感じた。


(うっ・・・これも魔力の影響なのか・・・?)


「・・・―――・・・―――・・・―――」


マスターは、何かを聞こえるか聞こえないかくらいのギリギリの音量でブツブツと呟いている。

魔法だろうから、多分詠唱か何かだろう。

魔力の本を読んだ時に書いてあったが、魔法は詠唱してもしなくても発動自体はするらしい。

だがするとしないとでは、威力や持続時間、魔力効率等に大きく差が出る。

緊急事態だと無詠唱もやむを得ないが、大抵は詠唱はするものらしい。


「・・・私を護る剣となれ! マテリアルウェポン(魔力石の武器)!」


マスターが詠唱を終了させた瞬間、光と共に6つの光り輝く武器が宙に浮いていた。

剣、大剣、双剣、槍、斧、刀の6種類だ。

その武器達が宙に浮いたまま、マスターの周りをくるくると回っている。


「・・・では、訓練開始です。この武器達を凌ぎなさい。」


「えっ!?ちょ―


マスターの言葉が終わった瞬間に、6つの武器達は凄まじい速さで切先を向けて迫ってくる。

一種の召喚術なのか・・・?いや、余計な事を考えるとまずい!というか普通に殺す気満々だろマスター!


最初に向かって来たのは双剣だった。

左右から同じスピードで挟撃を仕掛けるつもりだろう。

俺はそれを剣で薙ぎ払って遠くへ飛ばす。剣自体は軽いので打撃力は少ない。


次に来たのは斧だ。

小細工は無用とばかり、正面から振りかぶるような形で刃を向けてくる。


「心臓に悪いっての!」


ギリギリで一撃を回避し、銅剣で斧の側面を叩くように斬りつける。

すると斧は衝撃に耐え切れず、その場で分解される。

その後も刀や大剣などが交代で攻めてきたが、多少危ない程度で対処できた。

最後に速いスピードで突っ込んできた槍を中央から剣でへし折って、武器達は完全に沈黙した。

意外とあっけなく倒したが、心臓に悪すぎる。


「マ・・・マスター・・・いきなり実戦まがいな事は死ぬよ?」


「死ななかったじゃない?それに、剣を握るのは初めてなのに、随分と戦慣れしてるように見えたけれど?」


そう言われてみれば、確かにそうだ。

剣なんて握った事ないし、前世の世界でも剣道とか柔道なんて殆どやった事がない。

ただ武器達の軌道がはんとなく見えて、それに合わせて防御したり反撃したりできたのだ。


「貴方には、私ほどではないけど身体に宿る魔力がとんでもない量なのよ?だから、身体も自然と魔力で強化されてる形になるわ。」


「魔力・・・?」


「ええ。魔力はどの生物にも宿ってるのよ。勿論その量が多いと出来る事も増えるわ。」


マスター曰く、魔力は人間だけじゃなくて様々な生物に宿ってるそうだ。

魔物や動物が他の生物を食べるのも、栄養補給もあるが魔力補給もあるのだそうで。

身体に宿ってる魔力が多い程、動物は身体能力が自然と強化されるらしい。


「ええ、だからそれこそ無茶をしなければ貴方は大丈夫ですよ。では、次の訓練です。」


そういうとマスターは、今度は詠唱無しに鎧の騎士を召喚した。

鉄製の鎧に普通の剣を持ち、いかにも騎士といえるような姿だ。

頭はないが。


(あー、これってデュラハンか・・・。)


「まあ首なし騎士ですね。召喚魔法で出した使役獣みたいなものです。これを倒せたら、今日の剣術訓練は終わりです。」


デュラハンは剣を構えてゆっくりと近づいてくる。

首が無い為どこを見てるのかが全く分からないし、とにかく凄く不気味だ。

マスターはこんなのが趣味なんだろうか。


「!」


デュラハンが先制を取った。

鈍重そうなその身体からは想像もできないような速度で近づき、攻撃を容赦なく放つ。


(速い!だが・・・)


速くて対処が面倒そうだが、よく見ればただ防御が薄そうな箇所に打ち込んでいるだけだ。

しかも、魔力の影響か動きもやや緩く見える。


(・・・ここだ!)


剣を何回か回避し、大きく振りかぶった隙を見て腹部の鎧の隙間を狙う。

デュラハンの動作自体は中々に早いのだが、俺が見れば十分対処可能な早さだ。

隙間に剣を突き刺されたデュラハンは少しよろめいたかのように見えたが、構わず剣を振り下ろす。


(うおっ!無傷か!?)


大きく後に跳躍して回避し、再度刺さったままの剣で隙間をなぞるように斬る。

しかし、多少動揺したように見えるだけで全く倒れる気配がない。

どこかに弱点でもあるのだろうか。それらしい箇所は見当たらない。


(デュラハンって、確か召喚によって出された使役獣みたいなものって言ってたよな・・・)


さっき剣を突き刺したり隙間に沿って斬ったりしたが、感触的に中身に肉体があるとは思えない。

となると魔力によって構成されてるかも知れないが、そんなものをどうやって倒すのかが分からない。


(ん・・・?だが・・・)


剣を避けながら、ツヴァイはとある事に気付く。

デュラハンの行動スピードが若干遅くなっているのだ。

剣を振るうスピードも速いし、移動も機敏なのだが、どこか最初のような勢いはない。

もしかしたら?


(なら!)


自分は、あえてデュラハンの正面で剣を構える。

相手は馬鹿正直に正面から斬りかかってくるが、それを回避しつつ適度に胴体に剣を打ち込む。

やはりよろめくだけですぐ反撃をしてくるが、どんどんと行動にキレがなくなっていく。


(やはりな。あいつ、攻撃受ける度に構成された魔力が消えるんだろう。)


動きが遅くなったデュラハンに、剣で鎧に着実とダメージを与えていく。

最初ですら思ったより苦戦しなかったのだ、目に見えて弱っていく相手に勝てない筈がなかった。

まもなく膝をついて動かなくなったデュラハンは、魔力が消えたのか鎧が粉々に砕け散って消えていった。


「・・・へえ。初戦で撃破するとは。中々優秀な人ですね。」


マスターも少し驚いていたようだ。

いつのまにかじっくりと観戦していて、ピクシーにお茶まで出してもらってのんびりしていた。

何気にムカつくがしょうがない。


「強いっちゃ強かったけど対処できない相手じゃなかったな。もう1体増えた所で対処できそうな気がする。」


「本来なら、詠唱込みで20体は呼び出すのですが、それやりますか?」


「すいません許してください」


そういえば、マスターは無詠唱で召喚してたな。手加減されまくってたのか・・・。


マスターから今日の剣術の訓練は終了と言われてほっとしたが、いまいち剣術の訓練の具体的な内容は分からなかった。

だってやったのは、6種類の浮いてる武器と叩き落として、首無し騎士をボコっただけだし。

決まった戦い方はないって言ってたし、実戦で慣れろって事なのかな。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ