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Black Rose  作者: 過去旧
2/5

Part-01 マスターの騎士として。

訳が分からなかった。

屋上から飛び降りて、確かに空中に居るような浮遊感を感じた。

だけど次の瞬間、視界が開けたと思ったら身に覚えのない場所にいて、さらに身に覚えのない女の子が目の前居たんだから。


女の子は後ろを向いて、机に向かって何かをやってるように見えた。

でも、自分にとってはそこが問題ではない。

ここは何処なのか、何が起こったのか。疑問だらけで状況が整理できなかった。


「・・・え?」


思わず間抜けな声が出る。

声を出した瞬間、少女が振り向いた。

ロングヘアの黒髪、身長は140cmくらいか。年は自分と変わらないくらいな気がする。

アニメのキャラクターにこういうの居そうだな、とか思ってると、少女が話しかけてきた。


「・・・召喚成功ね。んでもって、貴方は一体誰なのかしら?」


召喚成功。

・・・召喚って事は、自分はこの女の子に呼び出されたという事になる。

無論、現代に召喚とかいう技術がある訳でもなく、つまりは別の世界という事になる。


つまり、自分は異世界に召喚されたのか?

そんな小説まがいな事が起こる訳がない。だが、目の前の状況は夢じゃないと思う。


何も答えられずに固まっていると、少女がゆっくりと歩いてきた。

そして、再び質問を投げかける。


「貴方の名前は何かしら?」


顔に手を当てて、優しい微笑みをしながらそう聞く女の子に、自分は戸惑いを隠せない。

元の世界なら、学校に居るだけで人気者になるレベルである。

もしかしたら、芸能プロダクションとかのスカウトが寄ってくるかも知れない。


「僕の名前は・・・」


自分の名前を言おうとして思いとどまった。

自分は前世で自殺したのだ。なら、前世の自分と今の自分は違う。

前の名前を名乗る事はない。

なら。


「-ツヴァイ。ツヴァイと言います。」


自分はドイツ人と日本人のハーフ。

ツヴァイ。zwei。ドイツ語で、数字の2を意味する。

第二の人生という意味の兼ねて、と思った。


「・・・ツヴァイ、ですか。分かりました。よろしくお願いします。」


少女はふっと微笑むと、背を向けて立ち去ろうとした。

あわてて呼び止める。


「え、ちょっと・・・。名乗らせといて放置はないぞ!?君にも名前あるよね?」


そういうと、女の子は動きを止めた。

背を向けたまま、また口を開く。


「・・・名前は言いません。その代わり、私を《マスター》とでも呼んでください。」


「・・・はぁ?マスターなんて、主従関係の仲じゃあるまいし・・・」


「私は、貴方を騎士として召喚したのです。なら、貴方は私に従ってもらうまでですよ。」


ちょっと何言ってるのかわからない。

つまり、自分はこの女の子に騎士として呼び出された訳か。

いきなり呼んでおいて、名前も名乗らずマスターと呼べ、そして従えか・・・。


「分かりました。僕は君の騎士として従います。」


思いつきで、ゲームのような台詞を言っちゃった、恥ずかしい。

だが、この言葉を言った後、驚いた顔で振り返るマスター。

何かおかしいこと言ったかな?


「・・・怒らないのですか?」


「え?」


「だって、どこからか勝手に召喚されて、勝手に騎士を命じられ、そして私のような者に従えと言われて。」


腹は立ってない、というのはウソになる。

だけど。


「自分、一回死んでるんですよ。」


「・・・」


「高い場所から飛び降りて、投身自殺して。そこで、マスターの召喚魔法?で呼び出されたのです。ですから、文句など言えません。」


前世ではイジメに耐え切れず自殺した。

せめて、この世界でこの少女・・・マスターの騎士役として暮らすのも悪くない、と思った。


「そう。なら納得がいくわ。」


マスターはそう言うと、そのまま歩き出した。

自分のあわててその後を追う。


「まずは、騎士らしい格好が必要ね。ずぶ濡れの見た事ない民族衣装の騎士なんて、聞いたことないもの。」


あ、そうですよね。

でも、学生服を民族衣装って・・・。

こうして、マスターの騎士、ツヴァイとしての日々がスタートするのだった。



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