校内中央通り トマギガでなければいけない理由は、
「「え?」」
弟と声が重なった。
「だってさー、あたしの知り合いのチョー束縛する女みたいだよ、ムニ。彼氏が男と仲良く話してるのすら許せない、みたいな。別にいーじゃんそんぐらい」
「ちちち、違うもん!!」
「弟君もね、さっきのベタ褒め発言は言わずもがな。ちょっとお姉ちゃんと離れただけで全力疾走で女子寮侵入。これどう考えたって異常でしょ。もったいないよー。せっかく美少年なのに。そんなんじゃー可愛い子に好かれてもお姉ちゃんに勝てないって思って諦められちゃうよ」
「ちちち、違います!! 何言ってるんですか!?」
「……あんたら面白いし、嫌いじゃないから言っとくけどさー、」
トーカさんは声のトーンを低くして、少し真剣な表情で言った。
「このままじゃ、危ないよ」
そう言われて、胸がドキッとした。
「それはどういう意味ですか?」
トーカさんのトーンに合わせた声で弟が尋ねる。
「トマギガで魔法使いになるってのは魔物を殺すことで生きていく【モンスターキラー】になるってことでしょう。ここに来る前、師匠に言われたんだけどさー、それには登山家のような非情さが必要だって。登山家は山頂近くで動けなくなったパートナーを助けない。なぜなら登山とは社会的に無用の行為であり、自分のエゴを満たすというただそれだけのために、生存確率の低い環境にわざわざ飛び込んでいくことだから。仲間を助けたいと思うのは“下界”では素晴らしい行為。でもその利他的精神は登山家という存在と矛盾する。本当に相手のことを思うなら初めから登山などしなければいいのだから……って。言いたいこと分かる?」
「はい」
「何となく……」
「要はこーゆーこと。単に魔法の才能で食っていきたいだけなら、わざわざトマギガに来る必要はない。世の中には色んな仕事があるから。もちろん、魔物を、魔王を倒すためにモンスターキラーになるって言うんだったら、他の学校では厳しいけどね」
「それは、分かってるよ」
「でも夢似、あんたは羅野井景子に憧れたから魔法使いになるんだろう?」
「う、うん……」
「そのためには、絶対にモンスターキラーじゃないとダメなのか?」
「えっ?」
「例えば、目の前で弟が倒れている。今、回復させないと死んでしまう。でも回復させたらそのスキに魔物に殺されてしまうかもしれない。そしたらせっかく助かった弟も助からない。そんな状況が来た時、今のあんたなら間違いなく弟を助けるだろう、自分の命を捨ててでも」
「……うん」
「そんな奴に、あたしだったら命は預けられない」
「大丈夫です」
無為が口を挟んだ。少し口調が強い。
「僕が絶対に夢似を守ります。どんな強い魔物が相手でも絶対に負けない。そのために僕はここに来たんです」
「そーゆーこと言ってるんじゃなくてさ、だから」
とトーカさんが話していた時、校内にチャイムの音が鳴り響いた。