泉 ダダダヂダ・ガノー・トランペッド
しかし――
「バーカ、お前らは俺の非常食だ」
瀞井は手をクルンと回すと、そこから複数の黒い矢が飛び出して、五人の背中に突き刺さった。
「あっ、」
「きゃっ、」
「っ…………」
たちまち五人は人形のように目の色を失い、その場に立ち尽くす。そして彼らの体内からありえない速度で魔力が減少していくのが分かった。徐々に肉体にも衰えが現れ、頬がこけ、首に痩せて筋が露見する。
「……味わう暇はなかったが、とりあえず馳走」
瀞井のつぶやきとともに五人は、膝から崩れ落ちるようにその場に倒れた。
「センセー、その五人、保って十五分だよ」
少し余裕を取り戻した表情で、ダダダヂダ先生の方を見上げる瀞井。
先生はフムと無駄に長い睫毛を揺らしながら上目遣いで数秒思考した後、いかにも面倒くさそうに、
「……別にそんなクズファイブどうなろうが知ったこっちゃないけどネェ……でも後で阿野田中に色々とうるさく言われるのもアレだしぃーまぁいいでしょー♪」
と言って指を振った。倒れていた五人がボール状に一か所に集められ、まるで気球のようにふわふわと校舎の方角へ飛んでいく。
「サンキューセンセー」
「ユアウェルカーム♪ でもアナタ、その程度の魔力で勝とうと思っちゃあっという間に地獄行きだわよぉん♪」
「ああんっ? うるせーな。まだ言っとくけど俺本気出してないから。自分の彼女を出来るだけ痛め付けないように気を遣いながら戦ってたから」
「……フーン、ちなみにそれェまだ続けるつもりかしらァ??」
「できればそうしたかったけどね……でも無理っぽいな。マジで殺す気でいかないと」
――――コロス?
「……ククククッ」
「ダダダヂダ、なに笑ってんだよ」
苛立つ瀞井の言葉を異に返さないかのようにクルリと反転するダダダヂダ先生。
その瞬間ダダダヂダ先生の姿が今まで見たことのない姿に変化した。
「ケタケタケタケタ……」
眼窩から半ば飛び出した眼球、腐敗した頬から覗く奥歯。
露出した頭部の部分部分に垂れ下がる白髪は簡単に抜け落ちそうで、全身の皮膚が病人のように黒ずんでいる。
その醜い姿はまるで、墓場から掘り起こした老婆の死体のようだった。
「半不死……ダダダヂダ、お前……それがお前の正体か」
「瀞井、貴様はまだこの子の本当の恐ろしさを理解できていないヨ」
上下の歯をカタカタと震わせて笑うダダダジダ先生。
しかし次の瞬間、その姿は霧のように空中から消失した。
かと思うと数秒も待たないうちにあたしのすぐ目の前に出現した。
見るだけで吐き気の醜悪な姿からはいつもの腐臭が漂っている。
「ダダダヂダ先生……」
「オオ、私の育てた大事な娘……」
ダダダヂダ先生が両手を前に差し出した。
手で囲った空間にエネルギーが込められ、黒い魔法球が発生する。
その魔法は過去に一度だけ見たことがあった。
球体の表面で明滅する骸骨や亡霊のような顔。
確か、弟が龍と戦った時の――
「さあ可愛い我が娘、目覚めたアンタにババアからのプレゼントだヨ――――“ガスタ”」




