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アコガれて魔法学校に入学したらそこは地獄だった(仮)  作者: 感想とかオホメノコトバとかいただけたら執筆スピード上がるタイプの奴。
春期
41/48

泉 瀞井という名の少年

 

  

「邪魔しないでよ」

 

 たった一撃だった。魔法を使わずに素手だけでトラオは気を失い、地面に伏す。 


(性格は最低……でも、強い)


 もはや一対一でも勝てる見込みを持てず、絶望感が押し寄せる。

 

 その時、何の前触れもなく、あたしは身体の並行感覚が失われて、木から落っこちた。

 乗っていた枝が音もなく折られたのだ。

 

「ひゃっ!!」

「よっと」

 

 重力に引きつけられるあたしを、ツンツン頭が受け止めた。彼の黄色い目が至近距離でニッと笑った。


「ちょっと放して……」

「ねえトトロムニ、俺の嫁にならないか?」


 場にそぐわない、とても爽やかな笑顔でツンツン頭が言った。あまりにも爽やか過ぎて、むしろ不気味だった。


「……はい?」 

「俺と付き合ってよ」

「いいから降ろして」

「抵抗する顔もかわいーじゃん♪」

 

 あたしは彼の腕から離れようともがいた。

 しかし、不思議なことに、身体がうまく動かない。

  

「んっ!! 何で……」

「さーね、何でだろうね?」

「魔法?」

「そりゃそうでしょ」

 

 身体を動かせなくする魔法としては麻痺パラライズがあるが、それとは少し違う。

 痺れはなく、その替わり強い力に全身を押しつけられている感覚。

 これもあたしも知らない魔法――

 

(何でこんな奴らに……)

 

 魔法の使い方も不明な上に、身体の自由まで奪われてしまった。それでも意地になって抵抗しようと必死に首や腰を動かすが、電池切れのボタンを押し続けるような徒労でしかなかった。何か他に手はないのか、諦めかけたその時、一人の叫び声が上がった。

 

「おいっ、ちょっと何で? 僕の身体も動かないんだけどっ!?」

「私もだよっ!! おいこのバカ。魔法ミスんなよ、みんな動けねーじゃねーか」


 声を上げている彼らを横眼で見ると、確かに五人ともその場から動かない、いや動けないでいるようだった。どうやらツンツン頭の魔法の誤発動があり、あたし以外にも効果が及んでしまったようだ。


瀞井とろい、早く何とかしろよっ!!」

「……何とかしろだって?」 


 瀞井と呼ばれたツンツン頭の、仲間に対して見せた反応。

 それは奇妙なものだった。

 瀞井はあたしをお姫様だっこしたまま、仲間達に言った。


「バカ言わないでよ。せっかく作戦通りにいったのに」

「何だと?」

「まさか……裏切ったの?」

「裏切るも何も、俺あんたらみたいなダダダヂダの手下じゃないもん」


 瀞井は、身動きのできないあたしの背中を木の幹に預けるように座らせた。得体のしれない彼の笑顔。目も含めて、とても自然な笑顔だったけれど、心は笑っていないように見えた。


「ねえトトロムニ、」

「何よ」


 彼は動けなくなった仲間の腰にぶら下げていたロープを奪った。


「俺はとてもわがままな人間でさぁ、欲しいモノは何でも手に入れてきたんだよね。それも自分の力で。何でそんなことができるかって言うと答えは簡単で、欲しいモノを持っている奴が何を欲しているかを知ってるからなんだよね。例えば魚はエサ、この倒れているバカは女、そんでこいつらは権力・金・そして保障された未来」

「はっ、何言ってんだよ? 権力も金も私たちだけじゃねーし。普通誰もが欲しがるもんだろーがよ」

「アンタ女のくせに口が悪いね。ちょっと黙ってて」


 瀞井が更なる魔法を使った。動けなくなった五人が急に静かになる。気絶したわけじゃない。口を動かしても声が出なくなってしまったようだった。


「トトロムニ」その後、瀞井はあたしを座らせたまま、ロープで木に縛ろうとはじめた。「この世界はお互いの欲望を満たすことで成り立っている。高級ブランドのバッグが欲しい人間とバッグを売りたい人間、殺したい相手がいる人間と残虐を好む人間、命令したい人間と誰かに指示を受けて生きていきたい人間。そんな世界で生きていく上で大切なのは相手よりも優位に立つこと。そのためには相手の欲望がどこに向いているのかを知る必要がある」

「……それでアナタは何を求めているの?」

「いい質問だ。俺が求めているのは一つ、持ってきた交換条件を呑んで欲しいってだけ。俺はキミが今一番欲しがっているモノをあげる」

「あたしが欲しがってるモノ? 何よ」

「簡単じゃないか、【魔法】だよ」


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