入学式3 阿ノ田中神子
「改めまして、みなさん、入学おめでとうございます。私はこの学校の校長を務めています阿ノ田中神子と言います。ちなみにこのトマギガの第一回の卒業生です」
それを聞いて、頭の中で年齢を計算してしまう。実際はもっと若く見えるなー。高級ホテルのカーテンを纏ったような深紅のドレス。黄金に輝く髪飾りが天井のライトを浴びて輝いている。
「昨年度50周年という節目を迎えた本校は、今一度、50年前の基本理念である【友情・信頼・感謝】に立ち返るべく、大幅な教育体制の改善を行いました。そういう意味で、第51期生であるみなさんは幸運だと思います。一人でも多くの卒業生が、世界で活躍できる一流の魔法使いになれるよう、私たちも精一杯面倒を見ていきますので、どうかみなさん頑張ってください」
ここで阿ノ田中校長は一度咳払いをした。
「最後に、本当に偶然ですが現在世界中を飛び回っているあなた方の大先輩の一人が先ほど本校に顔を出してくれましたので、少しだけお話していただこうと思います」
そう言い残して、校長が幕の奥へと姿を消した。
胸がドキドキしはじめる。
ひょっとして……景子様? 胸が高鳴り、手に力が入る。が、美人さんに頭を軽く叩かれた。
「あるかい馬鹿チン」
あのう、心を読まないで下さい……
「そんなんじゃ絶対やっていけないって――――ん?」
その時、
「お姉ちゃん!」
突然、無為が叫んだ。
反射的に顔を向けると、弟は驚いたような顔で正面を指差している。
「あら、よく分かったわね」
その声を聞いた瞬間、一つの記憶が頭をよぎった。
子どもの頃車に轢かれそうになった時の――
――背後から叫ばれて、ふと横を向くと、四角い鉄の塊がこっちに向かっ
て来ていた。
(あ、轢かれる)
そう思った直後、急に耳が聞こえなくなったように、一切の音が消えた。
ゆっくりと向かってくるトラックの運転手が、何か叫んでいる。
(あ、何だか世界がスローモーションになってる)
横を見ると、弟があたしの方へ向ってくるのが分かる。
(ダメ、このままじゃ、弟も轢かれてしまう)
あたしは急いで弟の方へと向かっていった――
……あれ、その後どうなったっんだっけ?
「お姉ちゃん、見て!」
再び弟が叫んだ。
すでに前を向いている周囲から驚きの声が上がっている。
「あれってもしかして……」
あたしははっとして正面を向いた。
「……ウソ」