泉 もがいてもがいてもがいて
「先生、透花さんはもう、ここであたしと戦えないんですよね?」
「……だから何?」
「だったら、あたしに魔法のヒントを一つ下さい」
「……何故?」
「“敵チームを一人、戦闘不能にするか降参させる”が条件だったはずです。彼女がこんな目に遭っているのは元はと言えばあたしのせい。つまり、あたしが彼女を戦闘不能にしたことになる。これは条件を満たしていると思うんですが」
「……クックックッ」
ダダダヂダ先生が巨大な腹を痙攣させて笑いはじめる。その笑い声は、姿を変えている訳ではないのに、女性とは思えない程低かった。
先生相手に強気過ぎる発言だったかな……いや、そんなことはない。ここでヒントを貰えなければ、今の力だけで七人を相手にしないといけなくなる。その場合、勝ち目は非常に薄い。
ダダダヂダ先生から笑みが消えた。あたしを無言で見下ろし数秒後、ぼそりと言った。
「魔力が蓄積できないのならば奪えばいい。以上だ」
「待って下さい!! 奪う魔法はそれ自体に多くの魔力がいります。あたしにはその魔力すらないんです」
「それは“奪われまいとする者”から奪おうとするからだ。“進んで与えようとする者”からであれば問題ない」
ダダダヂダ先生はあたしの元を去ろうとした。でもあたしはまだ先生の言っていることの意味が掴め切れていなかった。このままでは戦えない。もう少し情報が欲しい。
あたしは先生のスカートの裾を掴んでなおも食い下がった。
「待って下さい!! “与えようとする者”って何ですか? どうしたら会えるんですか?」
「うるさい!! もう十分にヒントはやったはずだ!!」
「ダメです!! あたしこのままじゃ何も分かりません。もし今戦っても一方的に攻撃されるだけになります」
「それでいい」
「よくありません!!」
「フンッ!!」
ダダダヂダ先生が手を上げた。攻撃の予感。すぐに身を引く。
すると、そばに生えていた木の葉が急に舞い上がり、一列になって散弾銃のように飛んできた。
後ろ向きに転がって、それを避ける。
「……苦しめっ!!」
ダダダヂダ先生はあたしにそう言い放つと、透花先生を連れその場から離れていってしまった。




