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アコガれて魔法学校に入学したらそこは地獄だった(仮)  作者: 感想とかオホメノコトバとかいただけたら執筆スピード上がるタイプの奴。
入学
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入学式 となりの美人さん

 

 

「それでは残った人たちは前の席に移動して下さい」

 

 校長の指示に従って、席を移動する。

 半分ぐらいは帰っただろうか。

 先生たちが余ったパイプ椅子を片付けていく。

 その間、校長は何かの資料をペラペラとめくっている。

 ガチャガチャと金属のぶつかり合う音が鳴りやまなくなるまで待つみたいだった。


 何もない時間。

 無為はどこにいるんだろう。

 最前列にいるあたしは後ろを振り向いて、弟の顔を探した。

 弟はすぐに見つかった。隣の知らない男の子と何か話している。険しい表情をしているのは、今の状況について話しているからだろうか。 

 とその時、隣の女の人があたしの肩を叩いた。


「知らなかったんでしょ?」


 指をクルクルと回しながら尋ねたその人は大人っぽい顔立ちの美人さんだ。ちょっとサバサバしているけれど、友達は多そうだな……


「もしかして、みんな知ってるの?」

「地元だからね。“推薦書受験”は多いよ。普通に受験するより就職に有利だし、何ってゆーか資格感覚? で取る人が多いから」

「でもせっかく受かったのに続けないの?」

「相当しんどいからね。ほとんどの人が精神的に耐えられなくて辞めてくし。その割に就職先ないし」

「え、そうなの‼?」

「だって50年もやってて毎年卒業生10人もいないんだよ? その大半は就職せずにフリーで稼いでるって聞くし、って考えたらメリットないよねって話」

「……そうなんだ」

「それで……ムニさんはどうしてトマギガに来たの?」


 あたしの鞄に目線を向けた状態で彼女は尋ねた。名前が書いてあるから。


「羅野井景子さんが好きで、だからここにしようかなって」

「……なるほどね、夢見ちゃんってことか」


 なんだか馬鹿にされた‼? 


「その紙貸して」


 美人さんに言われて、推薦書を渡す。

 すると紙の端に何か書き始めた。


「どこから来たの?」

「九州から」

「何だ、じゃあキューマがあるじゃん」


 キューマとは【九州魔法学園】の略称で、地元で最も名門と言われている魔法学校だ。


「私、一浪してるから、どこがいい学校とかここがクソとか結構詳しんだよね」


 そう言って返された紙には複数の学校名が書かれていた。


「もしこっちで魔法使い目指すんだったら、ここに書いた所だったら大丈夫だから。推薦書持って受験したら100%受かる間違いなく」

「……ありがとう。でもここじゃダメなの?」

「ダメだね」


 即答された!!


「何で、日本で一番有名な学校なのに?」

「日本で一番クソ学校だよここは。まともな入学者なんて一人もいない。あんた、いい子だろ。勉強頑張っていい点取って合格したんだろう? そんな奴が来るような所じゃない。人生ダメになる」


 この人、何言っているんだろう? あたしは訝しく思った。だって推薦受験は別としても、定員の8割はあたしと同じように一般入試の筆記試験で合格した人たちのはずだ。きっと、この人だって。

 にも関わらず、彼女の口ぶりは、まるで一般入試で合格する人間は向いていないとでも言いたげだ。


「じゃあ、あなたは? どうやって合格したの?」

「カンニングだよ。普通そうだろう」

「普通って……でもカンニングしたって試験官の魔法ですぐにバレるでしょう?」

「だからバレないようにこっちも魔法使ったんだよ」

「それを防ぐために魔法が使えないような結界が張ってあったじゃない」

「だからその結界の中でも魔法が使えるような魔法を使ったんだよ」

「……そんなこと、できるの?」

「だから合格したんだろ」

「じゃあバレてないの?」

「まーバレたらバレたで、それぐらいの魔法使ってる奴なら合格させるだろーし」

「そんな……」

「少なくともあたしの知ってるトマギガはそれぐらいクソだってことさ。そんであたしは今ここにいる」


 何だろう。この感じ。

 昨日までのイメージにあったキラキラした学校生活が音も立てずに歪んでいく。

 ……いや、そんなわけない!

 あたしは否定した。きっとこの人がちょっと特殊なんだ。最初に話したのが運悪くこの人だったから、そのイメージを信じてしまいそうになっただけだ。

 騙されちゃいけない。

 彼女に反論しようとすると、それを見越していたかのように彼女が先に言葉を発した。


「まともな人間ってのは、要は多数派ってことだろ。じゃあその多数派はどうなった? 推薦書を持ってここから消えたじゃねーか」



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