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アコガれて魔法学校に入学したらそこは地獄だった(仮)  作者: 感想とかオホメノコトバとかいただけたら執筆スピード上がるタイプの奴。
入学
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After5 もう……

 

 

「……ええと、ちょっと意味が分からないのですがっ」


 あたしが尋ねると、無為は頷いた。


「僕の知ってる範囲で説明するね。例えばロールプレイングゲームの魔法使いをイメージしてみて。魔法使いはマジックポイント略してMPを消費して魔法を使うよね? 僕たちも同様で、数値化はされていないけれど精神的なエネルギーを使用して魔法を使う。だけれど、夢似は事故が原因で自分のエネルギーを蓄えることができなくなってしまった」

「……そうなの?」

「うん。だから一言で言えば【MPゼロの魔法使い】。魔法を使う技術はあるけれどMPがないから使えない」

「……ごめん、正直な気持ち、1%も信じられないんだけど。だってあたし魔法使えてるし」

「それは夢似の力じゃなくて、僕の魔力を夢似に分けているから」

「アッ――」


 その時、頭の中で何かの点と何かの点が繋がった感じがした。


「……夢似の担当医から事情を聞いて、母さんは泣いてた。こんなに魔法使いに憧れて、それだけを目標に生きてきた娘が、まさかこんなことになるなんてって……それで実は、父さんもまだこのことは知らないんだ。夢似をずっと応援してきた父さんはきっと悩むだろうから。だから母さんと相談して、僕の魔力を夢似に、」

「ねえ無為」

「……ん?」

「ごめん、やっぱり止めようこの話」

 

 急に来た。

 何だろう、この震えは。


「夢似、最後まで聞いて。……大丈夫だから」

「うん、分かってる。大丈夫だって分かってるけど、ごめん今は無理」


 ほとばしる思いを吐き出さないように我慢しながら、あたしは最低限の言葉で自分の気持ちを伝えた。それは懇願と言ってもよかった。これ以上、無為の話を聞くことに、あたしは耐えられない。この感情は何だろう。怒り、悲しみ? そんな既知の言葉では片づけられそうもない、悶々とした気持ちが渦巻く。


「でもまだ全部話してない」

「いいからお願い」


 あたしは無為にそう言って会話を打ち切り、時限装置式の心を抱えて階段を上った。どうせ爆発するのなら一人がいい。誰も傷つけずに済むから。

 しかし、事はそうスムーズには進んではくれなかった。

 階段を登り切ると、あたしの行き先に二人の女性が立っていた。

 一人は美人さんのトーカさん。

 もう一人は景子様。

 今後は何があっても一生やらないって誓えるけれど、でもこの時だけは行く手に立ち塞がっている二人を見て、一瞬、イヤな目で睨みつけてしまう自分を抑えられなかった。


「夢似、」


 トーカさんに声をかけられたが返せる精神状態じゃない。あたしは無視して二人の間を通り抜けようとした。


「おい、夢似ってば」


 すれ違いざま、トーカさんがあたしの肩を掴もうとする。その手を、ちぎれて地面に転がればいいとぐらいの気持ちで払いのける。


「いてっ……このクソガキッ!!」

「はいはいF子興奮しない」


 背中からトーカさんが追いかけてくる気配を感じた。でもそれを景子様が止めたようだった。

 そのタイミングで、あたしは校舎内に向かって駆けだした。一刻も早く一人になるために。そしてしばらくの間、誰にも見つからないように。

 だがあたしが校舎の扉に差し掛かる前に、景子様が叫んだ。


「【ケイコノヘヤッ!!】」


 その叫び声に反応して、あたしは後方を見た。

 一瞬だったので、すぐに前を向いたのだけれど、すると目の前に、木製の大きな開き扉が現れたのだった。

 いつの間に!?


「わっ!!」


 足を止めるなんて間に合う距離じゃなかった。あたしは飛び込むように見知らぬ扉の奥に入っていった。


 キーッ……バンッ!!



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