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アコガれて魔法学校に入学したらそこは地獄だった(仮)  作者: 感想とかオホメノコトバとかいただけたら執筆スピード上がるタイプの奴。
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After5 あたしの真実

 

 無為は口を大きく開け、何かを言おうとして息を吸った。

 でも説明の仕方が難しいと感じたのか、もしくは嘘を重ねようとしているのか、実際に言葉は出てこない。


「無為、あたしに言ってないことあるよね?」

「……まあ言ってないことなんて、誰にだってあるよ。お姉ちゃんにだってあるだろ? 考えていることや気持ち全部を素直に伝えている人なんていないからさ」

「何言ってんの? こんなキャッチボールできない人だったっけ、あなた。あたしが聞いてるのは、無為がわざとあたしに隠していることがあるんじゃないの? って言ってるの。それで、あるの、ないの? ハイかイイエで答えて」

「……それは」

「あるでしょ? なかったらこんな話にならないもんね」


 あーイヤなこと言ってるなーと我ながら客観視して思った。

 感情的に怒り狂うとか、そんな感じじゃない。冷静な状態で感情的なことを言っていた。

 別にイジメたいわけじゃない。

 弟に変わってほしくて言ってるのだ。

 足元の無為が作った裂け目を眺めた。あたしと無為を分かつその溝の深さは正確には分からない。

 でも埋めるなら今しかないし、埋めるなら埋まるまでやらないといけない。


「はっきりと答えて。ハイなの? 違うの?」

「僕、」

「……うんうん、“僕”がなあに?」

「自分の力を、夢似に隠してた」

「うんうん。どうして隠していたの?」

「……子どもの頃に、夢似がトラックに轢かれたでしょ?」

「えっ!? あたし、轢かれた……んだっけ?」

「覚えてないの?」

「轢かれる直前までは覚えてるけど、こうやって生きてるから、轢かれてないと思ってた」

「じゃあ魔法については覚えてる? あの時の事故の関係で」

「魔法について? ううん、分かんない。何?」

「だよね」


 無為が右手に魔力を込める。手の平に、白い光の三角形が複数重なった象徴的な形が生まれたかと思うと、その形が展開し、無為を包む銀色の膜と化した。

 魔法防御と同種の上級魔法で、この銀色は物理防御効果がある。ライオンに襲いかかられたり、銃弾を発射されるぐらいなら、この膜が守ってくれる。

 本当に、無為ってすごい魔法使いなんだなーって思っていると、無為が膜越しにあたしを見た。


「あの時、7才の夢似がこの魔法を使ったんだよ?」


 無為はあたしに近付き、自分を包んでいた膜をあたしに移動させた。


「こうやって僕は助けられたんだ。夢似の方が危ないのに、助けに行った僕が助けられたんだよ」

「……覚えてないよ。それにこの魔法、あたし使えないけれど、7才の時使えたの?」

「ほら、おそらくそうだと思ったんだ。使えたんだよ。それどころか、当時は僕よりも凄かった」

「嘘、だって覚えてないもん」

「なんで覚えてないんだよ」

「そんなこと言われたって……」


 困った顔の無為。

 ああ、少しいつもの無為に戻ってきたと感じた。


 ……けれど新たな疑問も出てきた。


「ってことはその話で言うと、あたしって事故のせいで、まあ記憶が飛ぶのはよくある話だけれど、つまり魔法の力が弱くなっちゃったってこと?」

「……隠していて本当にごめんね」

「いや別にいいの。いいんだけど、何で隠す必要があるの?」

「ええとね」


 無為は後頭部をかきむしった。


「分かった、ちゃんと話すから、その替わりちょっと前置きさせて。最初に覚えておいて欲しいのは“大丈夫だ”ってこと。本当に“大丈夫”だから。そんでもう一つは“これからも魔法使いを目指して欲しい”ってこと。羅野井さんを目標にしてさ、これからも頑張っていこう。そんで最後、これは本当に本気だから絶対に忘れないで。僕はどんなことがあってもお姉ちゃんの味方だし、これからもずっと二人で双子魔法使いとして活躍していきたい。夢似の夢を叶えるために一緒に生きていきたい。だってそれが僕の夢だから」


 なんだか、すんごくじいんと来る話をされたな。うれしいけれど、自分の何を言われるのかの方が気になってしまっているので、心はそんなに揺れ動かなかった。


「……ありがとう。でも無為には無為の人生があるから、本当にしたいことがあったら我慢せずにお姉ちゃんとは別の人生を歩んでね」

「……まあ、うん」

「……で、何?」

「後で細かい所は説明するから、最初にはっきり言うよ。交通事故に遭うまで夢似はすごかったって話をしたよね? 今よりも色んな魔法を使えたとか。でも事故のせいで今の状態に、つまり昔使えた魔法を使えない状態になってしまった。そう言ったんだけれど、ただそれは正確な表現ではなくて、本当は夢似が……今の夢似が実は、もう自分ではまったく魔法を使えなくなってるってことなんだ」




 

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