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アコガれて魔法学校に入学したらそこは地獄だった(仮)  作者: 感想とかオホメノコトバとかいただけたら執筆スピード上がるタイプの奴。
入学
19/48

After5 だんだんと……

 

 

「……ん?」


 予想外の問いかけに、頭上にハテナマークが浮かぶ。

 そんなあたしの反応を無視して、弟は続けた。


「来月、アメリカに行く。テルミアって名前の、僕らと同じぐらいの年で、すごく強い魔法少女がいるらしいんだ。彼女と合流したら、僕と夢似とテルミアで“上の大陸”へ行く。そこで一ヶ月半、ひたすら魔物と戦って修行するんだ。その後、元からパーティーに入っている大人のメンバーが10人ぐらいいるらしいから、彼らと合流して今度はチームで戦う経験を」

「無為、ちょっと待って。あたし」

「いいから最後まで聞いて。チームプレイを学ぶんだけれど、その10人が凄くて、モブ・テイクとかラドワーナ・メイカーとかワノアババジルとかいった世界中のスターが勢ぞろいするんだ。彼らと一緒に戦えるって想像してみてよ。それだけでもうワクワクしてこない?」


「それは……すごいけど」


 確かにそれは否定しない。景子様と一緒に戦うだけでも宝くじ一等当たる以上のスーパーミラクルスペシャルレアラッキーな出来事なのに、それに加えて一度と言わず耳にしたことのある世界のスタープレイヤーたちのチームに入る。そんなの一生の思い出になること間違いなし我が人生に一片の悔いなし叶ったら死んでもいいと思う人手ぇ挙げて、はーい皆さん満場一致逝ってよし! な最高の経験だって、それは否定しない……けれど。

 あまりにも“夢のような”過ぎて、まるで「もし宝くじで三億円当たったら話」みたいな非現実的な妄想に過ぎないんじゃないかって、特に今の弟の表情を見ていたら、思ってしまう。


「でもそれって……本当なの?」

「本当だよ、羅野井さんが僕にそう言ったんだ」

「無為は行くの?」

「……うん、だってこんなチャンス。逃したら一生来ない」

「あたしを置いても……?」

「だから夢似も一緒に来てほしいんだよ」


 そうだ。それを聞いて、さっき少し思ったことを思い出した。


「っていうか、誘いがあったのは無為だよね? あたしも……なの?」


 あたしが尋ねると、その時、無為の目が泳いだ。


「……大丈夫だよ」


 弟はそう言ったが、明らかに動揺していた。


「ウソでしょ。それは無為が勝手に言ってることなんじゃない? だって二人が誘われるんなら、無為にだけ話すっておかしいもん」

「いや、それは夢似が気絶していたからだよ」

「第一あたし強くない」


 あたしは地面の裂け目を手で指し示した。


「悪いけどあたしの魔法じゃこんなヒビ作れないから。あんな竜だって100%勝てない。たぶん、これから三か月修行したって勝てるようになれないと思う。そんなあたしがチームに参加するなんて迷惑なだけでしょう」

「そんなことない。夢似は絶対に強くなる。僕には分かる。だから一緒に行こう?」

「……無為、どうしたの?」


 この時、あたしは弟に対して生まれて初めて“疎通できていない感じ”を持った。

 まー様子がおかしいのは、入学式の時からあったけれど。

 例えば、いつもなら即座に反応できる魔法に反応が遅れたり。

 一方で、勝てるはずのない竜相手にたった一人で勝ってしまったり。その過程で焦ったりムキになって叫んだり。

 保健室からここまでの様子だって、なんだかよそよそしかったり、怖かったり。

 でも、それらはまだ今感じているものに比べれば生易しいもんだ。


「今のあなた、ちょっとおかしいよ?」


 いつもの無為帰ってきて!! そんな願いも込めつつ、わざと少しきつめの言葉をかけた。だって、実家じゃあそれこそお風呂とか以外はずっと一緒だったあたしがそう感じているんだもん。ぜーったい、何か事情があるに違いないよ。

 でも弟はあたしの問いかけに対して真正面から応えようとはしてくれなかった。


「……おかしいのは夢似の方だよ。だって羅野井さんってお姉ちゃんの目標。それで羅野井さんのチームに入れるってことは、つまり羅野井さんに認めてもらえたってことでしょ。それはつまりずっと願っていた目標が達成できるってことじゃないか。それなのに躊躇するって……今までのお姉ちゃんと矛盾してるよ」


 何それ、矛盾してるのはあんたの方でしょ!! って腹が立ったあたしは、もうガマンなんてしてらんない思ってることを言ってやろうと決めた。


「してないよ矛盾なんて!! だからあたしはそのチームとやらに呼ばれてないでしょって!! あなたから聞いた話を鵜呑みにして『わぁ~そんな夢みたいな話が本当にあるのね、あまりにも非現実的な話だけれど無為が言うんだから信じるわありがとー!!』ってなると思う!?」


 答えが一つしかない問題をあたしがぶつけると、無為はあたしが怒っているのにショックを受けたのか、急に俯いて、しおらしくなった。


「……ごめん」

「いや、別に謝らなくていいから!!」

「ごめん」

「だからいいから!! それよりもちゃんと教えて欲しいの」

「……何を?」

「さあ? それが何か分からないからこう聞くわ。ねえ無為、あなたはあたしに何を隠しているの?」




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