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アコガれて魔法学校に入学したらそこは地獄だった(仮)  作者: 感想とかオホメノコトバとかいただけたら執筆スピード上がるタイプの奴。
入学
17/48

After5 オレンジ色の世界

 

 

 ……ドクン。

 ――――ほえっ?


「ムニ、起きた?」

「……うん」


 天井がオレンジ色に染まっている。

 横を向くと無為がいる。

 

「むい……おはよ」

「うん、おはよう」


 布団の中に熱がこもっている。

 背中全体が汗ばんでいる


(あつい……)



 あたしは目を、覚ました。





「……ここはどこ?」

「学校の保健室」


 確かに部屋の殺風景さとか光沢のあるこの床とか保健室っぽい。


「あたし、さっきどうしちゃった?」

「……気を失ったんだよ」


 ベッドから出ようと思い、布団をはがす。脚が長いベッドだったので、放り出した足がぶらんとした。

 

 頭はまだうまく働いていない。


「ぼ、僕保健室の先生呼んでくるね」

「ねえ」


 場を離れようとした弟のそでを引っ張る。


「りゅうは?」


 弟のつま先が少しこちらに向く。

 答えるまでにちょっと間があった。


「……倒した」



 無為が部屋から出て行った後、うーんと座ったまま背筋を伸ばした。自然とあくびが出た。まだなんだかフワフワしている。

 それにしてもだいぶ長い間眠ったみたいだ。お風呂に入った後のように、すんごく身体がラク〜になってる。


 時間が経つにつれ、意識がはっきりしてきて元気も戻ってきた。


「あー気持ちいーわー♪」


 間もなく保健室の先生がやってきた。あたしは廊下の角で先生が見えなくなるギリギリまで「サービス残業すんません!!」と頭を下げた。

「あーあ、しっかり顔と名前を覚えられたなあしかも弟とセットで」とぼやくと、無為が「別に問題なくない?」とシゴク正しいことを言ったので指先で脇腹を刺した。


 校舎を出ると、夕焼けに染まるレンガ道の脇に小さな人だかりが見えた。

 集まっているのは新入生たちだ。


「……この右手を喉に当てた状態で、家に電話してママにこう言うの。“私は景子の友人です。今晩、景子はウチに泊まります。明日提出の課題があるんです”ってね。ママは完全に信じた。ボーイフレンドの家に泊まる時の常套手段よ」


 その時、人だかりの中心にいた景子様がこちらに気付いた。指で(先に行ってて)と合図する。

その中に、トーカさんもいた。こっちに気付いていない……はずはないと思うのだけれど、こっちを見てくれない。


「夢似、こっち」

「あ、うん」


 無為の手に惹かれて、人だかりの横を通り抜ける。


「クラスメイト達が毎日手から火を出してる時間に、私はそんなことばかり考えてた。今度会った時には、当時私が発明した“ヒニンの魔法”を女の子たちに教えてあげるわ」


 景子様……十五歳相手にオトナ過ぎです。

 それにしても“先に行く”って、どこに行くんだろう。疑問に思って、無為の横顔を見る。

 その時、あることに気付いた。


「無為、ほっぺたどうしたの?」

「え? あーいや別に」

「赤いよ。ちょっと腫れてない?」

「あっ、ここだよ」


 あたしの言葉をスルーして、道の脇の途中で立ち止まる。もう一度問い直そうと思ったけれど、それよりも早く目の前の風景に注意が向いた。

 目下に広がっているのは、ファンタジーホールが出現した第三グラウンド場。


「降りよう」


 無為はあたしの手を離して、石階段を先に降りはじめた。何も考えずに付いていこうとしたが、その時ひんやりとしたものを胸の奥に感じた。

 イヤな感じだったので「ちょっと待って、」と呼び止める。

 うまく言葉にできないけれど、あたしの中の何かが、下に行きたくないと訴えていた。

 

「ムニッ、ほらっ」


 あたしに向かって無為が手を差し出す。

 その時、見上げたあたしの目に、あるものが映った――――

 

 ――それは最後に見た時は絶対になかった、グラウンドを二つに割る巨大な裂け目。




 


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