風が、冷たい
忘れた頃に思い出して書く
かくして時間旅行に旅立った訳だが、なんとなく時計の乱雑する空間を抜けたりとかそんなのを想像していたが、瞬きを二回すれば既に未来についていた。周りのスタッフの方が別人である事からの推測だが、ただそれ以外は全く変わらない、無機物だらけの部屋だった。
「外に出てみようか」
先輩に促されるまま外に出る。
そして、事と次第をはっきりと認知する事になった。
周りに建物がない。あるにはあるが草木が伸びきり弦が這い、ちょっとしたファンタジーな世界、はたまた身近に化け物でも居そうな世界になっていた。
飛ぶ前はちょっとした田舎の光景が一瞬で・・・。
「驚いたかね」
「驚かない方が無理でしょう」
当然だな、と先輩は続けた。
「少子化問題は知っているかね」
「連日テレビ付ければやってますよ」
「あれと過疎化の問題を拗らせた結果だ。今現在、君たちが居た時代で言う政令指定都市に人口が集中しているが、それでも君の時代のこの辺に住んでいた人口と変わりはない。ここの周辺には誰も居ないが市街地にはまだ人はいる。」
あれだけの人がこの場所にも居たのに。
時折吹く風がとても涼しく、どこか寂しげな感じがした。
冷たさは変わらない気がした。
「そこで、君には高校に編入してもらう。本当は2年生が良かったのだが、君が思ったより老けた顔になってしまってね」
「悪くないですよ自分。と言うか大学生なんですが」
「童顔のくせに老けた顔になるのが悪いんだ」
話を続けよう、と先輩は言った。理不尽だなと思いつつ耳を傾ける。
「今のご時世、大学は完全に専門分野を勉強する変わりに、高校4年間の必須になったんだ。そう、四年。君はまだ高校4年生で通じるんだ」
「なぜ高校なんです」
至極普通の疑問だった。
「青年期ほど、世の中に敏感で振り回される時期は無い。大人の小汚い世界を見るより色々学ぶには良いと思ってね。」
「高校でも十二分に汚いと思いますが」
「汚さの部類がちがうよ」
同じような気がする。偏見だろうか。
「衣食住とお金は気にしないでくれ。要求があればこちらから用意する。もちろん、身分相応のな」
「はあ」
「編入手続きは済ませてある。月曜日から学校へ行き高校ライフを満喫してくれ」
「高校ライフて・・・」
「二度目の青春、悔いが残らないようにな」
かくして、本来の目的がなんなのか忘れそうな説明から、俺の未来ライフは始まった。