それは、よくある日常で
超不定期更新。普段に思った事を書き溜めては吐き出す作業の物語。エッセイかも知れないけど。
話は二年前に遡る。
「なぁ、君、未来に興味はないかい?」
ある夏の暑い日の部活終わり、先輩に訪ねられた。
「未来、ですか」
「そう、未だ来ずと書いて未来」
「未来・・・僕はあんまり好きじゃないです」
「どうして?未来にはいくらでも可能性がある。もちろんそれに伴ったリスクだってある。故になかなかにハイランダーかつ不定形なものだ。だからこそのわくわくを感じないかい?」
そんな笑顔で言われても。
疲れてるしあまり良い受け答えも考えるのが面倒だったので素直に自分のありのままをぶっちゃける。
「学年最下位の成績なめないでください」
「ただの通過する関門の一つさ。長い人生に比べたら一瞬だよ」
「それでも、ですよ。漠然と未来なんて言われてもまずピンと来ません。それに」
「それに?」
「僕は死ぬのが何より一番怖い」
死。生まれたものに必ず訪れるもの。
生あるものは死ぬために生きる。
なんの意味がある。
そもそも死とはなんだ。
幼少期、祖父母家に半ば居候の身だった婆さんが亡くなってから今でもずっと疑問に思っている。ふと死を考えただけで、いや、連想しただけで身の毛がよだち、恐ろしく不安になる。今だって吐き気を催しそうなくらいだ。出ないけど。
考えて答えが出ないのが余計に質が悪い。
「あー、なるほど。それは確かにわかるな。でも、君は一人で生きていけるかい?」
「どういう意味です?」
「考えてもみてくれ。例えば不老不死だったとしよう。周りの人間は次々に死ぬ。親、兄弟、仲のよかった友達、愛した人、皆だ。そして人類が滅んだ時に君は一人だ。話しかけても誰も返さない。死にたくても死ねない。そんな張り合いの無い生活が楽しいかい?怖いものに怯えて、逃げて、それで良いのかい?」
先輩の言うことだって一度は考えた事はある。ただ漠然としすぎ、かつまったくわからない先の話だ。当然答えが見つかる筈もない。
「私は嫌だね」
先輩は断言した。
「死ぬのは怖いさ。でも怖さに怯えて手を出せなくなって縮こまって何もできずに死ぬのがもっと怖いね」
「結局、これ、何の話なんですか」
当たり前の常套句を聞くのも飽きて改めて尋ねる。本当にこれは何の話なんだ。
「だから最初にも言ったろ?」
先輩は一息置いてもう一度、はっきりと言った。
「君、未来に興味はないかい?」