第8話:破滅の連鎖(デス・トリガー)
王太子レオンハルトが、憎悪の眼差しをセシリアに向けたその時。
「——殿下! 申し上げます!」
実行犯である男爵令嬢マリアが、震える声で進み出た。
彼女はアリスの計画通り、「セシリアに脅されて毒を入れた」と偽証するため、そしてその決定的な証拠を自分の懐から取り出そうとした。
「私が……見ました! セシリア様が、毒を——」
マリアが懐に手を入れた、その瞬間だった。
「あ……が、はっ!?」
マリアは証拠の小瓶を取り出すより早く、白目を剥いてその場にひっくり返った。
そして、アリスのそれよりもさらに凄惨な死に様を晒し始めた。
口の端から黄ばんだ泡を吹き、手足がおぞましい角度に痙攣し、瞬きする間に彼女の息は絶えた。顔面がどす黒く変色し、目からは血の涙が流れている。
「な、なんだこれは……っ!?」
あまりの惨劇に、王太子すら顔を青ざめて後ずさる。悲鳴が上がり、令嬢たちが次々と気絶していく。
ただ一人。
エスターだけが、主の斜め後ろからその光景を無表情で見下ろしていた。
(当然だ。俺が仕込んだ『幻の魔毒』は、素手で触れただけでも皮膚から致死量が浸透する。……ご苦労だったな、マリア)
これが、敵の殺意を逆利用し、自分たちの手を一切汚さずに敵を自滅させる『完全犯罪返し』だった。




