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第7話:猛毒のアリス

歓談がピークに達した頃。

 セシリアのポットから注がれた紅茶が、王太子レオンハルトの前に置かれた。

 アリスとマリアが、目配せをする。計画通りだ。


 その時だった。


「ひゃっ! あ、危ない!」


 突如として、甲高い叫び声が庭園に響き渡った。

 アリスが、王太子のティーカップに向かって不自然に身を乗り出したのだ。

 彼女は、まるで王太子を何かの危険から「庇う」ようにして、あろうことか王太子のカップの紅茶を、自らぐいっと呷ってみせた。

 ——これが『光のヒロイン』による、完璧な自作自演の第一幕。


「なっ……何をしている、アリス! 無礼だぞ!」


 不敬な振る舞いに激怒する王太子。

 アリスは心の中でほくそ笑んだ。(さあ、ここで少し血を吐いて、可憐に倒れれば私の勝ちよ——)


 しかし、その目論見は次の瞬間に凍りついた。


「う、あ……ごほっ!」


 アリスが首を掻きむしり、信じられない凄まじい勢いで赤い絨毯の上に崩れ落ちたのだ。

 そして、その白く可憐な口から、どす黒い吐瀉物と血の塊が、嘔吐物とともにぶちまけられた。


「あ……が、ああああ……っ!? 痛、い、いたいぃっ!!」


 アリス自身、何が起きているのか全く理解できていない。

 彼女の計算では、これは「耐性薬で耐えきれる程度の毒」のはずだった。毎日欠かさず薬師から買った薬を飲んでいたのだ。

 「殿下……ご無事で……」と美しく微笑む聖女の芝居を打つつもりが、内臓全体が溶解し、焼け焦げるような本物の死の激痛にのたうち回っている。喉が完全に焼けただれ声も出ない。


「毒だ! 誰か、誰か早く医務官を呼べ!!」


 大混乱に陥る会場。王太子の近衛騎士たちが剣を抜き、周囲を警戒する。


「まさか、殿下のカップに毒が……!?」

「そんな……お茶を用意したのは、セシリア様では……!?」


 アリスが用意していたシナリオ通り、同調者たち(買収された貴族たち)の声が上がり、すべての疑いの視線がセシリアへと突き刺さる。

 セシリアは血の気が引いた。悪夢で見た光景と全く同じだ。このままでは私は「王族暗殺未遂」という取り返しのつかない大罪人として処刑される——!

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