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第4話:完璧な偽造工作

深夜。

 使用人棟のエスターの部屋は、僅かなランプの灯りだけが揺れていた。


 エスターは机に向かい、何枚もの羊皮紙にひたすらペンを走らせている。

 それは、過去のループにおいて彼が執念で暗記した『アリスの筆跡』の完璧な再現だった。羽ペンの筆圧、インクの跳ね、アルファベットの独特の崩し方まで、本人が書いたとしか思えない精度で模写していく。


『——王太子殿下を暗殺し、その罪をセシリア公爵令嬢に被せる。これが成功すれば、平民の私が次期王妃となり、協力したあなた方も一族の栄達を約束しましょう——アリス・マーガレット』


「……よし。これで、言い逃れ不可能な『大逆罪の密命書』の完成だ」


 エスターは偽造手記を乾かしながら、冷たい目を細めた。

 次に彼が取り出したのは、鉛色の禍々しい小瓶だった。

 これは、マリアが使うはずの「ただの遅行性の毒」ではない。過去のループでセシリアを苦しませた、一滴で内臓が溶け出し、素手で触れただけでも皮膚から致死量が浸透する『幻の超猛毒(魔毒)』だ。


 エスターは音もなく部屋を出ると、熟睡しているマリアの自室へと忍び込んだ。

 そして、彼女の引き出しの奥に隠されていた毒の小瓶を取り出し、用意した『超猛毒』の小瓶とすり替えた。


(ご苦労だったな、実行犯。……明日の茶会で、その『証拠品』を懐から出そうとして素手で触れた瞬間、君は凄惨な死を遂げることになる)


 ただ未然に防ぐだけではない。

 敵が仕掛けた殺意を、数百倍・数千倍の威力にして、敵自身の手で起爆させる。

 それが、三千回のバッドエンドを越えた男の『完全犯罪返し』だった。

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