第六話:『御三家』
翌朝の学校は、あまりに日常だった。
昨日の突入作戦で、匿名Kは身体中筋肉痛だった。
教室へ入り、席についた時だった。
「お前、昨日ちゃんと寝たのか?」
後ろから声がする。匿名A、いつも通りのロリコンだ。
「まあな。そっちは?」
「ロリ救出で喜び疲れた」
「オッケー、黙っとけ」
そんな軽口を交わしながら、匿名K達は椅子に座った。
ほんの数秒後、スマホが震える。
授業開始前の静かな教室に、振動音がやけに重く響いた。
匿名Aは画面を手で隠しながら確認する。
――それは、ダークナイツ上層部からの極秘通達だった。
《至急:御三家のラグナロク家の一人、ミハエル・ラグナロクの裏切りの可能性を確認。見つけ次第確保》
匿名Aは一瞬、呼吸を忘れた。
御三家——
昔からダークナイツを影で支えてきた御三家、天冥寺家、荒崎家、ラグナロク家。
内部のバランスを保つ柱のどれかが崩れたら、組織全体が揺れるのは確実だ。
「どうした? なんかあったか」
匿名Kが覗き込む。
「……御三家の一人が裏切った可能性がある」
匿名Kの表情が、その瞬間だけ微かに動いた。
「……は?」
空気が変わった。
教室はこんなに明るいのに、匿名Kたちの周囲だけが別世界。
「ミハエルは”第二騎士団ロリ制圧班第二部隊班長”そして総副班長、ロリ制圧班の中で俺の次にえらい。」
「そんな奴が裏切れば大問題になるぞ」
「だが、始末なんてめんどくさいね、ロリが関わってる訳でもないのに」
「え、いや、でも」
「ダークナイツを裏切ったんだ、国総出で捜索が始まる、そのうち捕まってるよ」
匿名Kは静かに頷いた。
外ではチャイムが鳴り、日常が始まる。




