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第二話 隠した異分子、揺れる平穏

2話目です。不定期で上げ続けると思います

涼介――今は「リョースケ」と名乗る彼は、朝の光に包まれた村の空気を深く吸い込んだ。

昨夜借りた空き家の粗末な木の床に腰を下ろし、目を閉じる。


この世界に転生してから、まだほんの数日。

だが、体はどこかぎこちなく、この村の暮らしに馴染むには時間が必要だと痛感していた。


「リョースケ」


背後から鋭い声がした。


振り向くと、赤髪の長身女性――リオナが立っていた。

彼女は傭兵として外の世界を渡り歩いてきたと言われ、背中に鋼の剣を背負い、引き締まった体躯を持つ。


「お前、また森へ行くつもりか?」

彼女の声は厳しく、命令口調に近かった。


「……ああ、少し様子を見に」


リョースケは頷いた。


リオナの瞳は、いつもどこか冷たく硬い。

しかしそれは、村を守るための緊張感の現れでもあった。


「気をつけろ。最近、魔獣の活動が活発化している」


村人は魔獣の恐怖に怯え、日々の生活に怯えながらも必死に生きている。


リョースケはそのことをよく理解していた。


「わかっている。俺も用心して行動する」


彼は「異分子」という自分の正体を隠しながら、村の一員として生きていく覚悟を固めていた。


村の生活は質素で自然と共生するものだった。


火を使うときは「火の精霊」に祈り、風を感じるときは「風の精霊」に感謝する。

科学や機械はなく、魔法と精霊が日常の中心だ。


リョースケはその中で、目立たずこっそりと《電子改変》の力を試していた。


例えば、壊れかけた農具を密かに直したり、井戸の水をわずかに清めたり。


それは精霊の奇跡とは明らかに違う、異質な操作だ。


「使いすぎたら、疑われる」


彼は常にそう自制しながら、できる範囲で村に役立とうと考えていた。


ある日の午後、村の広場に村長が集まった村人たちを前に現れた。


「皆、聞いてくれ」


村長は険しい顔で話し始める。


「最近、魔獣の被害が増えている。畑が荒らされ、家畜も襲われた」


村人の顔には不安が広がる。


「リオナ殿、今後の対策は?」


長老の一人が問いかける。


リオナは冷静に答えた。


「警戒を強め、巡回を増やす。だが魔獣は油断ならない」


リョースケもその場にいた。


彼は村人たちの不安な視線を感じ取りながら、内心で決意を新たにした。


「この村を守る力になりたい」


その夜、村の周囲で異変が起きた。


森の奥から獣の唸り声が響く。


リオナは仲間とともに剣を携えて出動した。


リョースケも同行を願い出る。


「お前も来るのか?」


リオナは鋭い目つきで彼を見た。


「力が必要だ」


二人は暗い森の中を進む。


木々の間からは月明かりが差し込み、影が揺れている。


突然、草むらから巨大な魔獣が飛び出してきた。


黒く禍々しい体躯に赤い瞳。


「来るぞ!」


リオナは剣を抜き、構える。


リョースケは集中し、手のひらに《電子改変》の力を呼び起こした。


「石の密度を上げる」


彼が地面の小石に手を触れると、それらは硬く重く変化し、魔獣の進路を遮った。


魔獣は一瞬怯み、その隙にリオナが剣を振るった。


攻撃は見事に命中し、魔獣は倒れた。


森から戻った二人は言葉少なに村に帰還した。


リオナはリョースケを見て言った。


「お前の力は役に立つ。だが隠し続けろ」


リョースケはうなずいた。


「異分子は、いつか村を滅ぼす恐れもある。気をつける」


その後、村での日常は続くが、少しずつリョースケの存在は村人の間で話題になっていく。


「彼は何者だ?」


「旅人か?それとも……」


疑念の目も向けられた。


リョースケは心の中で、自らの孤独を感じていた。

今回も見てくれてありがとうございます。引き続きよろしくお願いします

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