表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下町宿場の占い師さん~異世界の占い師は、やがて世界を救う~  作者: もなかしょこら
アロマティア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/371

閑話「市場都市アルミエラ」


 石造りの天井に祈りの光が差し込む王都議会の円形堂。

 重々しい静寂のなかで、王妃イリスは立ち上がり、柔らかな声で告げた。


「本日の議題は、南東街道の整備計画について。

王都・聖都・ラセルナを結ぶ新たな中継地として、市場都市の建設案が提出されております」


 会場がざわめく。

 広げられた地図の上、赤い印が三角を描いていた──王都、聖都、そしてラセルナ。

 そのちょうど中央に、ひとつの小さな印が加えられている。


「“アルミエラ”──」

 行政官ミュリエルが冷静な口調で続ける。

「この案は、物流と人材、さらには外交的流れを円滑にするために必要と考えます。

祈りの都ラセルナに注目が集まる今、周囲の流れを整えずして何を成しましょう?」


「軍部としても異論はない」

 険しい眉を寄せた軍司令ライネルが言った。

「ラセルナへの道がふさがれた場合の予備経路は必須。

 また、新設地点は見張りに適しており、詰所設営の利も高い」


「交易路としても将来的な利益は大きい」

 続いて経済局長エルモンドが手を挙げる。

「商都ウォールナットからも期待の声が届いております。

“風の市”を設ければ、各国の行商人が集うでしょう。

ラセルナが祈りの場ならば、ここは動きと交わりの場です」


 すべての目が、招致出席していたヴァルターへと向けられた。


 吟遊詩人でありながら、今はリース家ラセルナ支部の責任者──

 彼の報告書が、この議題のきっかけであった。


「……ラセルナは、ただの街ではありません」

 少しだけ間を置いて、ヴァルターは言葉を紡ぐ。

「そこには、“祈り”が生きています。

苦しみを越えようとする人々の想いが、風となって吹いている」


 しかし、その言葉の先に、思いがけず喉が詰まった。

 言えば言うほど、彼自身の偏りが浮かび上がってくる。

 ラセルナを守りたい──

 その一心が、いつしか視野を狭めていたのかもしれない。


 王妃イリスが、そっと微笑んだ。


「ええ、だからこそ──」

「祈りを“交わす”場所が、必要なのです」


 風のようなその言葉が、会場の空気を優しく包んだ。


 議会の終わり、ヴァルターはひとり、石廊下を歩いていた。

 足音が響く中、行政官ミュリエルが背後から声をかける。


「……貴殿が“ラセルナだけ”を見ている間に、世界はもう、次へ進んでいますよ」


 その言葉に、ヴァルターは立ち止まる。


 そうだ。

 道は、どこへでも続いている。

 そしてラセルナは、もう“始まり”になったのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ