6.ドラゴンさんを手当てします
グラム村を出てから、森の中を進む。
ドラゴンは高いところを飛びながら、僕のことを気にしてくれてるみたい。
着地できるところを探さないと、手当てできないんだけど……。
確かこの先に森の合間のぽっかり空いたところがあった気がする。
信じて歩き続けると、森の中だけど広い場所に着いた。
「ドラゴンさん、僕は薬草を取ってくるのでここにいてくださいね」
ドラゴンに呼びかけると、返事のように吼えられた。
ゆっくりと降りてきてくれるのを見ながら、木の根元に生えていた傷に効く薬草を摘んでいく。
「かごの中の食べ物と一緒に薬草も入れておけばいいよね」
「ピピっ!」
「ポイのご飯も少し入ってるから、後で一緒に食べよう。もう村に戻れないから、全部食べちゃったら森で食べ物探さないとね」
渡されたかごの中にはミルクの入った瓶が一つと豆が入った袋が一つ、固いパンが三つだけ入ってる。
これからは自分で食べ物も探さなくっちゃいけないな。
でも、今はドラゴンの手当てが先だ。
さっきのひらけた場所に戻ると、ドラゴンは下に降りて傷口をペロリと舐めていた。
「ドラゴンさん、お待たせしました。この葉っぱを石ですり潰して塗りますね。こっちの薬草は美味しくないかもしれないけど食べてください」
僕が薬草を差し出すと、ドラゴンは嫌そうな顔をしたあとにそっと食べてくれた。
食べてくれてる間に石で葉っぱを潰して、ドラゴンの身体にある傷へ塗っていく。
「……美味しくない」
「うん、苦いんだよねこの薬草。ごめんね……って。え?」
今、声が聞こえた?
僕がキョロキョロしていると、ドラゴンがこっちを見て笑ってるように見えた。
「フィロと言ったか? お前はお人よしなのだな。村の者はお前に冷たくしたというのに」
「それは……しかたないよ。僕の変わった力のせいだし。それに、村長さんがいなかったら僕は生きてこれなかったから」
ドラゴンは普通におしゃべりを始めた。
ビックリしてるけど、嬉しい気持ちの方が大きい。
ポイも僕の肩に乗って、ドラゴンを見ながらピィと鳴いて挨拶してるみたい。
傷に薬も塗れたし、これで少しでも良くなってくれたらいいなぁ。
「ふむ。私が暴れたからフィロは追い出されてしまったのだな。だとしたら私にも責任はあるか」
「でもドラゴンさんの鱗を取ったのは村の人たちだし。本当にごめんなさい」
「お前は悪くないだろう。折角手当てもしてもらったのだし、私もお礼をせねばいけないな」
ドラゴンは僕たちに少し離れろと言うので、一歩離れる。
すると、ドラゴンの身体がピカピカと光り始めた。