57.ポイの正体はまさか?
フェニックスは話を聞いてくれないし、このまま攻撃し続けたらフェニックスが死んじゃうかもしれない。
「ラグお姉さん、どうしよう?」
「フィロは分からずやのフェニックスに話し続けるんだ。全く、私以上に頑固なヤツだな。コイツもすぐに異世界とやらから仲間を呼んだりはできないだろう」
「仲間を呼ぶ暇を作らせなければいいだけでしょ? 何度でも水をかぶせてあげるわ!」
ルナちゃんはまた大きな水のかたまりを作ってから、ヒュッとフェニックスへ投げ飛ばす。
フェニックスもかわそうとするけど、ラグお姉さんとオルお兄さんも攻撃を続けているから段々弱ってきているみたいだ。
「僕たちもフェニックスさんに大切なものを壊されたくないんだ。だから、話を聞いてもらうまで僕たちも戦うことをやめられないから。ごめんね」
「キュゥ、ウゥゥゥ……」
フェニックスは少し大人しくなってくれたけど、どうせ自分も殺すつもりなのだろう? ってヤケになっているみたいだ。
「フェニックスさんが攻撃してこないなら、僕たちも攻撃しないよ。だから話を……」
僕が話しかけようとしたところで、暑さに耐えられなくなったポイがポケットから出てきた。
「ピィっ」
「ポイ! 今出てきたらあぶな……」
ポイが鳴き声を聞いたらしいフェニックスが、突然大きな声で鳴き始めた。
ど、どういうこと? さっきよりもずっと怒っているみたいだ。
「ピ、ピィ?」
「分かんないけど……え? 僕が犯人ってどういう……」
フェニックスはケガしているはずなのに、無理やり羽ばたいて空中に浮いていく。
大人しくなっていたと思っていたから、ラグお姉さんとオルお兄さんもビックリしているみたいだ。
「なんだ? 急に騒がしくなったぞ」
「分からないが、ポイが出てきた時にまた暴れ始めたようだ」
二人が顔を見合わせていると、僕のそばへルイーツさんが走り寄ってくる。
ポイに気が付くと、まさか……と言ったまま、ポイとフェニックスを順番に見て比べ始めた。
「フィロさん、その子こそフェニックスの子です! 以前ここで見たことがあるので間違いありません! 一体どこで?」
「え? えぇっ? ポイとは僕が元々住んでいたグラム村のそばの森で会ったんだけど……」
「そうでしたか。赤い鳥は確かフェニックス以外いないはずです。燃えるような赤色はフェニックス特有なのです」
ルイーツさんが言っているのだから、間違いない。
ポイは、このフェニックスの子どもだったんだ。
だから、ポイはいい子で僕の言うことも全部分かってくれていたのかもしれない。
フェニックスはさっきよりも怒ってしまって、口から炎を上へいっぱい吐き出した。
炎の波が洞窟のかべを伝って、僕たちのそばをこがしていく。
「きゃあ! あっついじゃないの! しっぽが焦げたらどうする気?」
「完全にフィロのことを犯人だと思い込んでいるようだ。おそらく盗んだ犯人が珍しい卵だと言って売り飛ばそうとでもしたんだろうが、なくしてしまったんだろう」
ラグお姉さんの言う通りかもしれないけど、このままじゃ僕のこと信じてもらえない!
ポイも鳴いて違うって言ってくれてるけど、やっぱり話が通じないみたいだ。




