5.僕が変だから?
ドラゴンはジロっと僕を見てくる。
村のみんなは僕を遠巻きに見たり、燃えてしまった畑の火を必死に消したりしながら近づいてこないみたいだ。
「あの……酷いことをしてしまってごめんなさい」
僕が謝ると、ドラゴンは僕じゃないと言うように村長さんのいる方をギロリと睨みつける。
村長さんはビクッとして身体を震わせたあと、少し待てと僕へ向かって叫ぶ。
「フィロめ。余計なことをドラゴンに吹き込みおって。マーヤ!」
村長さんの隣で震えていたマーヤさんに、村長さんは内緒話をする。
マーヤさんは走って家の方に行くと、すぐにかごを持って戻ってきた。
村長さんはかごを受け取ってから、僕の名前を呼びながら手招きしている。
ドラゴンに待っていてと言うと、ドラゴンは首を揺らして行ってこいと言ってくれた。
「フィロ、今までお前を育ててやったのだからお前も村の役に立ってくれ。お前は変な力を持っているし、村人たちもフィロは魔物の子だと怖がっている」
村長さんが言い切ると、みんなが一斉に僕を見てくる。
ひそひそと僕を見ながら、やっぱりねとかやっぱり変な子だと思ったとか。
僕が変な力を持っているからドラゴンを呼び寄せたんだと、僕のことを色々言っているのが聞こえてきた。
僕、やっぱり変な子なのかな。
だから、友達もできなかったのかな?
僕は……みんなと仲良く暮らしたかっただけなのに。
ポケットに隠れていたポイが、ピィと悲しげな声で鳴いて僕を慰めてくれた。
「フィロも大きくなったんだ。一人でも生きていけるだろう? 私たちも毎日生きていくのに精いっぱいなんだ。悪いけど、分かっておくれ」
「そうだ! フィロが変なヤツだからドラゴンが暴れたりするんだ!」
マーサさんも、アンカくんも僕がグラム村から出て行って欲しいって思ってるんだよね。
すごく悲しいけど、村長さんがいなかったら僕は今ここにいなかったかもしれないんだ。
だから、僕が出ていけばきっと大丈夫。
悲しい気持ちでいっぱいだけど、頑張って顔をあげてマーサさんからかごを受け取る。
ドラゴンは怒っているはずなのに、ちゃんと待っててくれてるんだから。
早くドラゴンのところに戻らなきゃ。
「……分かりました。村長さん、マーヤさん。今まで僕のことを育ててくれてありがとうございました」
僕はかごをギュッと握りしめる。
涙が出そうだったけど、我慢して笑う。
おじぎをして、ドラゴンの側に駆け寄った。
「ドラゴンさん、お待たせしました。ここだとみんな怖がっちゃうから……一緒に村の外へ行きましょう。僕、薬草のある場所を知ってるんですよ。だから、大丈夫」
僕が戻って話しかけると、ドラゴンはバサリと羽を広げて浮き上がっていく。
傷は痛そうだけど、おとなしく村から離れてくれるみたいだ。
僕も慌てて後を追いかけた。




