4.ドラゴンが怒っていたのは
ドラゴンは僕を見ると、地面に降りてきてくれた。
少し怖いけど、一歩ドラゴンに近づいてみる。
「こんにちは、ドラゴンさん。急に石をぶつけてしまってごめんなさい。ドラゴンさんは何か言いたいことがあるんだよね?」
話しかけると、ドラゴンは声を上げてから村のみんなをぐるっと見回していく。
そして、首を自分の身体へ向けて僕に何かを訴えてくる。
少し怖いけどドラゴンに近づいてみると、ドラゴンの身体にはポツポツと色の違うところがあった。
これって……怪我してるのかな?
「怪我してるの? 石を投げたから、じゃなくって。ナイフで誰かに鱗を切り取られたから? だから怒っているんだね」
僕が振り返ると、村長さんの側で男の人がこそこそ内緒話をしているのが見えた。
村長さんなら、何か知っているかもしれない。
「やっぱり、巣に入ったから……落ちた鱗拾い集めるだけでも苦労したのに、やっぱりやりすぎたんだ」
「いいか、この村で暮らしていくには魔物の素材を売るしかないんだ。特にドラゴンの鱗は高く売れる」
「だからって、村の守り神と言われているのに……貢ぎ物で眠らせたことがもし、バレていたら?」
「言い伝えと今生きていくことと、どっちが大切か分からないのか? ただでさえ、最近天気が不安定なせいで作物もろくに取れてないんだぞ」
村長さんたちは難しい話をしているけど、悪いことをしてるんだからちゃんと謝らなくちゃいけない。
それなのに、村長さんは僕の話なんて無視するようにいきなりサッと手を挙げた。
何人かの狩りの上手な大人は、屋根にあがって弓を構えて矢を放っていく。
「ギャッ!」
矢がドラゴンに命中する。
何本かの矢は身体に刺さって痛そうだ。
鱗がないところを狙ってるだなんて、酷い!
ドラゴンは痛そうな声をあげると、バサバサと翼を動かしながらまた舞い上がって火を吐き出した。
周りのみんなは、慌てて逃げだしていく。
このままだとみんなの家にも炎が燃え移ってしまいそうだ。
「やめてください! 悪いのは……」
「うるさい! フィロ、あのドラゴンを止めるんじゃなかったのか?」
「だったら、なんで酷いことをするんですか?」
「じゃあ、さっさと何とかしてくれ! さあ!」
村長さんはまた僕の背中を押し出した。
ドラゴンが暴れているから、攻撃していた人たちも逃げ出してしまったみたいだ。
「ドラゴンさん、ごめんなさい! もう痛いことはしないから……僕があなたを手当てします。だから……」
僕が必死に叫ぶと、ドラゴンは僕の方を見てくれた。
炎を吐くのをやめて、ゆっくりと地面におりてくる。