22.楽しかったのにどうして
街をぶらぶらと歩いて、飲み物や焼き串を買う。
僕も欲しいものはないかと聞かれたから、クッキーを買ってもらった。
その他にも持ちきれないくらい食べ物を買ったんだけど、お金は大丈夫なのかな?
ラグお姉さんは大丈夫だって言ってたけど、ラグお姉さんも歩きながらいっぱい食べてるしルナちゃんも負けないくらい食べてる気がする。
「あたし、果物も気になったから買いに行ってくるわ。ラグとフィロはその辺の椅子にでも座って寛いでなさい」
「そうか。私ももう少し焼き串を買い足してこよう。フィロ、そこのベンチに座って待っていてくれ」
「うん、分かった」
広場で二人を見送ってから、僕は近くのベンチに座る。
腰のポケットからクッキーの入った透明の小さい袋を出して、クッキーを一枚出す。
「ポイ、クッキー食べる?」
「ピ!」
クッキーを小さく割って、胸ポケットにいるポイの口に持っていく。
ポイは器用にくちばしを開いて、クッキーを食べ始めた。
下を向いてポイと話していたから、急に暗くなったことに気づかなかった。
「やっとガキ一人になったか」
「だな。ガキには何もできやしねぇよ」
僕がぱっと上を向くと、ギルドで見たゴロツキの男の人たちに囲まれていた。
五人に囲まれてるから、街の人たちも僕が座っていることは分からないかもしれない。
どうしよう? 考えているうちに口をふさがれてしまう。
「うーっ!」
「騒がれる前に気絶させとけ。袋につめちまえばどうにかなるだろ」
僕が必死に暴れていると、ポケットからポイが飛び出して目の前の男の人の手を突き始めた。
「ピピピっ!」
「いでっ! なんだこの赤い鳥は」
「赤い鳥? コイツは珍しいじゃねぇか。高く売れるかもしれねぇ。そいつも捕まえておけ」
ポイまで捕まえられちゃう! 僕はじたばたしながら口をふさがれた手に思いっきりかみついた。
「いてっ! コイツ暴れやがって!」
「何もたもたしてんだよ!」
後ろの人から頭をガンッと殴られた。
目の前がぐわんぐわんして、目を開けていられなくなっちゃう。
ポイも男の人につかまれちゃって、袋に入れられているのがぼんやり見える。
「お、おいバカ! ここでやっちまうのはマズイだろ」
「大丈夫だって。急所は外した」
「大きな声出すな! 袋につめたらずらかるぞ」
ラグお姉さん、ルナちゃん……ごめん。
僕は何もできなかった。
起きてなくちゃいけないのに、勝手に目が閉じていく。
+++
僕が目を開けると、ほこりっぽいところに寝転んでいた。
薄暗いけど、たぶん建物の中なんだと思う。
椅子と机っぽいものが置いてあるのが見えた。
頭はズキズキするけど、僕は生きてるみたいだ。
身体はロープで縛られているから動けないし、口も布で縛られているからうまくしゃべれない。
ポイもつかまっちゃってたし、僕はこれからどうなるんだろう。
何もできなかったのがくやしいな。
僕は魔法も使えないし、力も強くない。
だから、悪い人をやっつけるなんてできない。
悲しくなって泣きそうになるけど、今は泣いちゃだめだ。
ここから頑張って逃げて、ポイを探さなくちゃ。




