10.助けたキツネさんは女の子?
ラグお姉さんが檻に近づいていく。
僕の目には茶色いもふもふがバタバタしてるようにしか見えないけど、開けて! と必死に伝えているのが聞こえる。
「なんだ、エサにでもつられたか? これは一度閉じると中からは開けられない罠のようだな」
「コココっ! こーんっ!」
「そう騒ぐな。開けてやるから」
ラグお姉さんは重たそうに見える檻を掴むと、罠とは思えないくらいあっさり外してぽいっと放り投げてしまった。
屈んでキツネさんをひょいっと抱きかかえると、僕たちのところへ戻ってきてくれる。
「大したことなかったな。この子ギツネも怪我はしていない。エサを食べると檻の中に閉じ込められる仕組みだったようだ」
「良かった! キツネさん、もう大丈夫だよ。お家に帰れる?」
僕がキツネさんをなでようとすると、ラグお姉さんの腕の中でパタパタと暴れる。
お姉さんが笑いながら腕の中から開放すると、キツネさんは地面にスタっと降り立ってピンと尻尾を立てて見せた。
「……なんでドラゴンが一緒にいるのよ」
「ラグお姉さんのこと? って……あれ?」
「やはりか。ただのキツネではなさそうだと思ったが。人語を操るキツネならば変身もできるだろう?」
「ピィー! ピピ?」
ポイもくるりと飛び回ってドキドキしているみたい。
今キツネさんの話し声が聞こえたということは、ラグお姉さんみたいにお話できるってことだ。
もしそうなら、たくさんお話してみたいな。
「う……ま、まあ。助けてくれた訳だし? あたしの可愛い姿を見せてあげてもいいけど」
狐さんはもふりと尻尾を揺らしながら、コンッと高く鳴く。
すると、キツネさんの身体がピカピカと光り出した。
「私も由緒正しきドラゴンであると自負しているが、このキツネもなかなか良い血筋のようだな」
ラグお姉さんが腕組みしているうちに、キツネさんがあっという間に女の子の姿になった。
ブロンドのツインテールの髪の毛はピンクのリボンで結ばれていて、頭に可愛らしい耳が二つある。
可愛いフリルの白いブラウスと赤いミニスカートのお洋服は、ラグお姉さんとは違って元気いっぱいな感じがする。
ふさふさの尻尾がゆらゆらしているのが気になって、触りたくなっちゃいそうだ。
「これでいいでしょ? 助けてくれてありがと。で、なんで人間の男の子とおっかないドラゴンが一緒にいるのか聞きたいんだけど」
「え、ええと……」
僕より少し背が高い、可愛らしい女の子のキツネさんは僕とラグお姉さんを交互に見ながら返事を待っているみたい。
僕がなんて言っていいのか考えていると、ラグお姉さんが笑ってから説明してやろうと言ってくれた。




