せんばいゆうしゃとてんばいまおう
物流……物流を制する者が市場を制すといわれるほど大切なものである。
それは人間と魔族が争うこの世界においても例外ではない。
この世界の流通は魔王テンバイの転売スキルにより支配されていた。
ここは人間の王女が納めるコジツケ城。
人間界最強のスキルをもつ勇者が王女に謁見しているところである。
「――勇者よ、魔王テンバイを倒してきてください」
「……わかりました」
勇者はこの展開で魔王討伐を王女から依頼されると予想できていたので、王女の話を聞き流していた。
チートスキルを所持する勇者にとって魔王討伐は難しくはない。しかしめんどくさかったので断るつもりでいたのだが……王女からの頼みを何故か断らなかった。
勇者はチートスキルを使いこなし、あっさりと魔王の元までやってきた。
「クックックッ……おまえが勇者か?」
「そうだ!」
魔王の転売スキルにより、人間界の装備やアイテムの値段が十倍にされている。
いくら最強といわれた勇者も丸腰である。転売効果により装備やアイテムが高騰していて満足にそろえることができなければ恐れるほどではないと魔王は考えていた。
勇者は市販されている攻撃力を倍加させる薬を取り出す。
「クックックッ……その薬は攻撃力を二倍にする薬か?」
「その通りだ!」
「クックックッ……ならばみせてやろう! これが我のスキル転売により効果が十倍になった薬の力だ!」
魔王がそう言うと、勇者と同じ薬を飲み干し襲い掛かるが、勇者はまったく動じなかった。
「しょせんは転売、それが限界みたいだな!」
勇者が薬を飲み渾身の右ストレートをくりだすと、十倍にドーピングされた魔王を軽々と吹き飛ばした。
「俺は転売なんかには屈しない! 俺のスキル専売の力を使えば、俺だけは独占的にどんなものも好きなだけ売り買いすることができる! そしてその効果は全てのものを千倍にすることができるんだよ!」
「クソッ! そんなチートスキルに勝てるわけがない……」
こうして、センバイ勇者により魔王テンバイは倒された。
「勇者よ、よくぞ魔王を倒してくれました」
「俺のどんなものも専売にしてしまう力があれば楽勝でしたよ」
「あなたのそのスキルはとても危険なものですね……私のスキルの力でなかったことにしてしまいましょう」
「は? そんな簡単に消せるわけが……あ、あれ? 嘘だろ……スキルが使えなくなってる……」
「魔王討伐の件もそうですが、私の王族の力により、なんでも無理に押し付けることができるのです」
こうしてこの世界は転売や専売のない王女の気分次第で無理難題をおしつけられる平和な世界になりましたとさ




